惑星と衛星の神話地図 太陽系に並ぶ、神々の家族
火星のまわりを回るのは軍神の息子たち、木星のまわりにはゼウスの恋人たち、土星のまわりには子を呑んだ父の兄弟姉妹。天文学者たちが名前を選ぶとき、神話の家族関係をそのまま夜空に写した。惑星ごとに、誰がそのまわりを回っているかをたどる。
惑星はローマの名、そのもとはギリシャの神
太陽系の惑星の名は、ほとんどがローマの神の名である。けれど、そのローマの神々は、それぞれギリシャの神と同じものとみなされてきた。天を速く駆ける使者メルクリウス(ヘルメス)は、太陽のいちばん近くを速く回る水星に。愛と美の女神ウェヌス(アフロディーテ)は金星に。軍神マルス(アレス)は、血のような色をした火星に。
近現代オンライン語源辞典近現代改訂新版 世界大百科事典
火星 軍神のお供をする二人

火星には、フォボスとダイモスという小さな衛星が二つある。1877年8月にアメリカの天文学者アサフ・ホールが見つけ、軍神アレスの息子たちの名を付けた。フォボスは「恐れ」、ダイモスは「おののき」。英語の phobia(恐怖症)も、この phobos から来ている。
二人は、ヘシオドスの『神統記』ではアレスとアフロディーテの子で、戦場で兵の隊列を乱して追い散らす神々だ。『イリアス』では、息子を討たれたと聞いたアレスが、この二人に命じて自分の戦車に馬をつながせる。軍神の供をする兄弟が、そのまま火星のまわりを回っている。
フォボスのいちばん大きなクレーターには、ホールの妻で数学者のクロエ・アンジェリーン・スティックニー・ホールの名が付いている。JAXA の火星衛星探査計画 MMX は、このフォボスに降りて砂を採り、地球へ持ち帰ることを目指している。
木星 ゼウスの恋人たちの星

木星の大きな衛星四つは、1610年にガリレオが見つけた。ガリレオ自身は番号とメディチ家の名で呼んでいて、イオ、エウロパ、ガニメデ、カリストという神話の名は17世紀に提案されたものの、広く使われるようになったのは19世紀の半ばからだった。牝牛に変えられたイオ、牡牛にさらわれたエウロペ、ゼウスにさらわれたトロイアの若者ガニュメデス、熊に変えられたカリスト。どれもゼウスに愛された者たちである。
いまでは、木星の衛星にはゼウスの恋の相手や子孫の名を付ける決まりになっている。白鳥の姿のゼウスと結ばれたレダ。身ごもったままゼウスに呑み込まれた最初の妻、知恵の女神メティス。赤ん坊のゼウスを育てた乳母アマルテイアの名の衛星アマルテアは、木星のすぐ近くを回っている。
土星 子を呑んだ父のまわりに

土星でいちばん大きな衛星タイタンは1655年に見つかり、はじめはラテン語で「土星の月」とだけ呼ばれていた。いまの名を付けたのは天文学者ジョン・ハーシェルである。土星の衛星の名について、彼はこう書いた。サトゥルヌスは自分の子を呑み込んでしまったので、家族をまわりに集められない。だから兄弟姉妹のティタンたちから選んだ、と。
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こうして土星のまわりには、ティタンの一族が並んだ。クロノスの妻でゼウスの母のレア。太陽ヘリオス、月セレネ、曙エオスの父ヒュペリオン。そしてイアペトスと、その息子たちアトラス、プロメテウス、エピメテウス。兄弟の忠告を聞かずにエピメテウスが受け入れた女性パンドラの名の衛星もあって、神話の一家がそろっている。
プロメテウスとパンドラは、土星の細い環をはさんで内と外を回る。NASA によれば、プロメテウスは環の粒が広がらないよう押さえる役目をするのに、パンドラは環をかき乱しがちだという。神々が災いの贈り物として人間に送りこんだ女性の名に、ふさわしい働きである。
衛星の上には、物語がもう一段書きこまれている。テティス(テテュス)の地形には『オデュッセイア』の人物や場所の名が付けられ、同じ軌道の後ろを、オデュッセウスを七年引き留めた女神カリュプソの名の小さな衛星が追いかけている。アフロディーテの母の名を持つディオネの地形には、アフロディーテの息子アイネイアスの旅を語る『アエネイス』の名が付いている。
巨人たちの名もある。巨大なクレーターのせいで映画『スター・ウォーズ』のデス・スターに似ていると言われるミマス。神々との戦いで、逃げるところへ女神アテナにシチリア島を丸ごと投げつけられた巨人の名を持つエンケラドゥスは、表面から氷の粒とガスを噴き上げている。
近現代NASA公式サイトローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
海王星と冥王星 海の神の息子、冥界の渡し守
海王星の衛星トリトンは、海王星そのものが見つかってわずか17日後に見つかった。NASA の説明では、ポセイドンの息子の名である。1949年に見つかった衛星ネレイドの名は、海の老神ネレウスの娘たち、海のニンフから来ている。
冥王星のいちばん大きな衛星は、死者を冥界へ渡す渡し守カロン。1978年に見つけたジェームズ・クリスティーがこの名を選んだのは、冥王の星にふさわしいうえ、最初の4文字が妻シャーリーン(Charlene)と同じだったからだ、と NASA は紹介している。
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月と曙

地球の月そのものには、新しい名は付かなかった。けれど NASA によれば、月の成り立ちを説明する考えのほとんどに共通して、太陽系ができたころ、火星ほどの大きさの天体が若い地球にぶつかり、飛び散った物質から月ができたとされる。その天体は、月の女神セレネの母にあたるティタンの女神の名をとって「テイア」と呼ばれている。
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セレネの名は、元素にも残った。1818年にスウェーデンの化学者ベルセリウスは、新しい元素をギリシャ語の selēnē(月)からセレンと名づけた。先に見つかっていたテルルが地球にちなむ名だったので、対になる月の名を選んだのである。
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セレネの姉妹、曙の女神エオスは、ローマではアウロラと呼ばれた。北極光を指す aurora borealis は「北の曙」という意味のラテン語で、17世紀のフランスの哲学者ガッサンディが名づけたと言われる。borealis は北風の神ボレアスの名から来ている。ヘシオドスによれば、そのボレアスもエオスの子である。
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星座になった話
この話の項目
- ゼウスオリュンポスの神々の王。クロノスとレアの末子で、父を倒して天を得た。多くの女神・人間の女性との間に子をもうけ、神々と英雄の多くの父になった。トロイア戦争では人間の側に肩入れしつつ、最後は運命の側に立つ。
- ヘラゼウスの正妻にして姉。結婚の守護者でありながら、夫の浮気相手とその子を執拗に苦しめる。トロイア戦争では一貫してギリシャ側に立ち、その動機は『イリアス』末尾で一度だけパリスの審判に結び付けられる。
- イオアルゴスのヘラの女神官。ゼウスに愛され、ヘラの目を逃れるため白い牝牛に変えられた。百眼の番人アルゴスに見張られ、ヘルメスがアルゴスを討った後もアブに追われて世界をさまよい、エジプトで人の姿に戻って子エパポスを生む。イオニア海やボスポロス海峡の名の由来譚になり、木星の衛星イオの名にもなった。
- エウロペフェニキアの王女。白い牡牛に化けたゼウスに背に乗せられ、海を渡ってクレタ島へ連れ去られ、ミノスらの母になった。兄カドモスは彼女を探す旅の果てにテーバイを建てる。大陸名ヨーロッパと同じ名だが、その結びつきは古代から疑われていた。
- ガニュメデストロイア王家の若者で、人間の中で最も美しいとされた。神々に連れ去られ、ゼウスの酌をする者として不死を与えられる。トロイア戦争の主要人物ではないが、トロイア王家の系譜と、ラオメドンの名馬の由来に関わる。
- カリストアルテミスに従って処女の誓いを立てた狩りの娘。ゼウスに身ごもらされ、熊に変えられた末、息子アルカスとともに星座(大熊座・小熊座)にされた。ホメロスは「海に沈まない熊座」を歌うだけで、その理由をカリストの物語で説明するのは後代の詩人たち。北極 arctic の「熊」ともつながる。
- レダスパルタ王テュンダレオスの妻。白鳥の姿のゼウスと交わり、ヘレネやカストル・ポリュデウケスの母になったと語られる。「レダと白鳥」として絵画の題材にもなった。
- メティス知恵と策略の女神で、オケアノスとテテュスの娘。ゼウスの最初の妻となるが、父より強い息子を産むと予言されたため、身ごもったままゼウスに呑み込まれる。その腹の中の子が、のちにゼウスの頭から生まれるアテナである。
- アマルテイアクレタ島で赤子のゼウスに乳を与えた山羊、またはその山羊を飼うニンフ。オウィディウスでは、山羊が木で折った角をニンフが果物で満たしてゼウスに運び、ゼウスは山羊と角を星にした。この角が、実りのしるし「豊穣の角(コルヌコピア)」の由来とされる。ヘラクレスが折った川の神の角を豊穣の角とする話もある。
- アナンケ逃れられない力「必然」を女神としたもの。ヘシオドスの神々の系譜には出てこないが、悲劇や哲学で、神々でさえ逆らえない力として語られる。アイスキュロスでは運命の女神たちと復讐の女神たちがその舵を取り、エウリピデスでは祭壇も像もない唯一の女神とされる。プラトン『国家』の死後の世界の物語では、宇宙の回転の軸となる紡錘を膝の上で回し、運命の女神たちの母とされる。ユゴー『ノートルダム・ド・パリ』は、大聖堂の壁に刻まれたこの一語から生まれた。
- アレス戦いの神。ただしホメロスでは戦術の神アテナに何度も打ち負かされ、父ゼウスから「オリュンポスの神の中で最も憎い」と言い渡される。破壊的な暴力そのものであり、ギリシャ人に愛された神ではない。
- アフロディーテ愛と欲望の女神。出自には二つのまったく異なる伝えがあり、ヘシオドスではウラノスの切り取られた性器の泡から生まれた原初的な存在、ホメロスではゼウスとディオネの娘である。トロイア戦争の原因を作り、戦場ではパリスとアイネイアスを守る。
- ヘルメス神々の伝令であり、境界と旅人と盗人と商人の神。生まれたその日に竪琴を発明し、アポロンの牛を盗んだ。魂を冥界へ導く役目も担い、生と死、神と人の境を行き来する神として描かれる。
- ポボスとデイモス軍神アレスとアフロディーテの息子たちで、戦場で兵の隊列を崩す「敗走(ポボス)」と「恐怖(デイモス)」の神。ヘシオドスが系譜を記し、『イリアス』ではアレスに付き従って戦車に馬をつなぎ、アガメムノンの盾にも描かれる。1877年に見つかった火星の二つの衛星は、この兄弟の名をもらった。英語の phobia(〜フォビア、恐怖症)も同じ言葉から来ている。
- クロノスティタン神族の末子で、父ウラノスを倒して世界を支配した神。自分も子に倒されると知って生まれる子を呑み込み続けたが、末子ゼウスに同じ運命をたどらされる。一方で彼が治めた時代は「黄金の種族」の時代として理想化される。
- ティタン族天空の神ウラノスと大地の女神ガイアから生まれた12柱の神々。末子クロノスが父の王座を奪って世界を治めたが、クロノスの子ゼウスとの10年の戦いに敗れてタルタロスに閉じ込められた。太陽・月・曙、川と海の娘たち、アトラスやプロメテウス、そしてオリュンポスの神々は、みなティタンの子孫にあたる。
- レアティタン神族の女神で、クロノスの妻。オリュンポスの主要六神の母。夫が子を呑み込み続けるのに耐えかね、末子ゼウスを石とすり替えて隠し、神々の世代交代を実現させた。
- ヒュペリオンティタン神族の一柱で、太陽ヘリオス・月セレネ・曙エオスの父。『神統記』には系譜以外の活躍がほとんどない。ホメロスでは「ヒュペリオン」が太陽神ヘリオス自身の呼び名としても使われ、父と子の名前が重なっている。
- イアペトスティタン神族の一柱で、アトラス・プロメテウス・エピメテウス・メノイティオスの父。本人の逸話はほとんど残っていないが、「イアペトスの子」はプロメテウスの定番の呼び名になっている。『イリアス』ではクロノスとともに大地の最下層に閉じ込められた存在として名が出る。
- アトラス世界の西の果てで天を支え続けるティタン神族の一柱。イアペトスの子でプロメテウスの兄弟にあたる。ホメロスでは海の深みを知り、天と地を隔てる柱を保つ者とされ、カリュプソの父。地名のアトラス山脈、大西洋(Atlantic)、そして地図帳の atlas へと名前が広がった。
- プロメテウスティタン族イアペトスの子で、人間の側に立ってゼウスを欺いた神。供犠の分け前をごまかし、火を盗んで人間に与えた。その報いに岩に縛られて鷲に肝臓を啄まれ、人間にはパンドラが送られる。
- エピメテウスプロメテウスの弟で、イアペトスの子。兄の忠告に反してゼウスからの贈り物である最初の女パンドラを受け取り、人間に災いを招き入れた。名前は「あとから考える者」と解され、「先に考える者」プロメテウスと対の兄弟として語られる。
- パンドラ神々が造った最初の女。ゼウスが火を盗まれた代償として人間に送った「災いと引き換えの良きもの」であり、壺の蓋を開けてあらゆる災いを世に放った。ただし『神統記』では同じ女に名前が与えられていない。
- テテュスティタン神族の女神で、オケアノスの妻。夫とのあいだに世界中の川と三千人のオケアニスを産んだ「水の母」。『イリアス』では幼いヘラを育てた養母として登場する。日本語では海の女神テティス(アキレスの母)と表記が似ていて混同されやすいが、系譜上はテティスの祖母にあたる。
- カリュプソオギュギア島に住む女神(ニンフ)。難破したオデュッセウスを7年引き留め、不死と不老を与えると申し出るが、彼は故郷と妻を選ぶ。ゼウスの命でヘルメスが遣わされ、ようやく彼を送り出す。
- ディオネホメロスでアフロディーテの母とされる女神。戦場で傷ついた娘を膝に迎えて慰める場面で知られる。出自の伝えは割れており、ヘシオドスではオケアノスの娘の一人、アポロドロスではティタンの女神の一柱。アフロディーテを「泡から生まれた」とするヘシオドスの系譜では、ディオネは母の座から外れる。
- アイネイアスアンキセスとアフロディーテの子で、トロイア側でヘクトルに次ぐ武将。『イリアス』では二度も神に救い出され、「その子孫がトロイア人を治める」と予言される。この一節が、後にローマ建国の祖とする『アエネイス』へと接続された。
- ギガース大地ガイアの子である巨人族。ヘシオドスでは切り落とされたウラノスの血から、輝く鎧と長い槍を持って生まれる。後代にはオリュンポスの神々に戦いを挑み、人間の英雄ヘラクレスの助けで滅ぼされる「ギガントマキア」の敵役になる。ホメロスでは、神々と戦う話はなく、滅びた荒々しい一族として名が出るだけ。
- ウラノスガイアが単独で産んだ天空の神で、同時にその夫。生まれる子を次々に大地の内へ押し込めたため、ガイアと末子クロノスの計略によって去勢され、世界の支配権を失った。その切り落とされた肉からアフロディーテが生まれる。
- ポセイドン海を支配する神で、ゼウス・ハデスの兄弟。地震と馬をも司る。『イリアス』ではギリシャ側に立つが、『オデュッセイア』では息子ポリュペモスを潰されたことを恨んでオデュッセウスの帰還を十年阻み続ける、物語の主たる敵対者。
- トリトンポセイドンとアンピトリテの息子で、海の底の黄金の館に住む海の神。上半身は神の姿、腰から下は海の怪物の尾という姿で描かれ、ほら貝を吹いて波を鎮める。リビュアで迷ったアルゴー船を海へ導いたのもこの神。
- ネレイス「海の老人」ネレウスとオケアノスの娘ドリスのあいだに生まれた海の女神たち。ヘシオドスでは五十人で、全員の名が並べられる。アキレスの母テティスと、ポセイドンの妻アンピトリテもこの姉妹の一人。
- ハデス冥界を支配する神で、ゼウス・ポセイドンの兄弟。オリュンポスには住まず、十二神に数えられないのが通例。ペルセポネを攫って妻とし、その和解から季節の循環が生まれる。
- カロン死者の魂を舟に乗せて冥界の川(または湖)を渡す老いた渡し守。ホメロスにもヘシオドスにも登場せず、散逸した叙事詩の断片や前5世紀の悲劇・喜劇から姿を現す。死者に持たせる硬貨の「渡し賃」と結びつけて語られ、冥王星の最大の衛星にも名を残す。
- ニュクス夜の女神。カオスから生まれた原初の存在で、死(タナトス)・眠り(ヒュプノス)・応報(ネメシス)・争い(エリス)など、人間を悩ます多くの力の母とされる。『イリアス』では、ゼウスでさえ怒らせるのを恐れた相手として一度だけ顔を出す。
- ケルベロス冥界の入口を守る番犬。入ってくる者には尾を振るが、出ようとする者は食う。ヘラクレスの最後の功業で地上に引き出された。頭の数は、ヘシオドスの50から、のちの3つへと変わっている。
- エリス争いの女神。ヘシオドスは「争いは一柱ではなく二柱いる」と言い、破壊的な不和と、人を働かせる健全な競争心とを分ける。トロイア戦争の発端となった婚礼の騒ぎを起こした神としても知られるが、その話はホメロスにもヘシオドスにも無い。
- テイアティタンの女神の一柱で、太陽ヘリオス・月セレネ・曙エオスの母。自分の物語はほとんど残っていないが、「光の母」という位置づけが後の詩人や現代の天文学にまで引き継がれた。
- セレネ月の女神。ヒュペリオンとテイアの娘で、太陽神ヘリオスと曙の女神エオスの姉妹。夜ごと馬車を駆って空を渡る姿で讃えられ、永遠の眠りについた美青年エンデュミオンとの恋で知られる。ホメロスでは「月」は天体として出てくるだけで、女神としての活躍はない。
- エオス曙の女神。ヒュペリオンとテイアの娘で、太陽ヘリオス・月セレネの姉妹。毎朝「薔薇色の指」で空を染めて現れる姿はホメロスの定型句になっている。人間の美青年を次々にさらう恋多き女神で、トロイア王子ティトノスとのあいだに英雄メムノンをもうけた。
- ボレアス北風の神。ヘシオドスでは曙の女神エオスとアストライオスの子で、西風ゼピュロス、南風ノトスの兄弟。アテナイ王エレクテウスの娘オレイテュイアをさらって妻にしたため、アテナイ人は彼を「婿」と呼んで祀った。英語の boreal(北の)やオーロラ・ボレアリス(北極光)にその名が残る。
- トロイア戦争ギリシャ連合軍がトロイアを10年にわたって攻めた戦争。『イリアス』はその10年目の50日ほどしか描かない。発端も木馬も落城も、別の詩や後代の作品が埋めたものである。
ほかの特集
- 地図で見るトロイア戦争 どこから誰が来たのかギリシャ中の王たちが船を出し、アナトリアの国々がトロイアに味方した。『イリアス』の「船の目録」をもとに、両軍がどこから来たのかを地図で見る。
- 冥界の地図 五つの川と、地上にあった入口死者の国には、どんな川が流れ、どこへ分かれ道が続くのか。ステュクス、アケロン、レテ、コキュトス、ピュリプレゲトン。ホメロスから少しずつ書き足されていった冥界の地図と、地上で「冥界の入口」とされた場所をたどる。
- オデュッセイアの寄港地めぐり 古代の人も地図に探した、二十年の帰り道ロートスを食べる人々の岸、一つ目の巨人の洞窟、魔女キルケの島、歌う島と海峡の怪物。オデュッセウスが立ち寄った場所を順にたどり、古代の人がそれを地図のどこに置いたか、イタケはどこなのか、帰ったあと何が待っていたのかまで読む。