ギリシャ神話の地図
ゼウス孫アプロディテ娘クロノス息子ガイア母で妻レア娘キュクロプス族息子たちエリニュス血の子ヘカトンケイル息子たち
星々の舞を見守る天空の神ウラノス。シンケルの絵。

ウラノス

Οὐρανός神

星々の舞を見守る天空の神ウラノス。シンケルの絵。 『ウラノスと星々の舞』 カール・フリードリヒ・シンケル 1834年Public domain

惑星の天王星は、英語でウラヌス。ほかの惑星がローマの神の名で呼ばれるなか、この星だけはギリシャの神の名がそのまま付けられた。元素のウランも、この星の名から取られている。もとになったのは、ギリシャ神話で最初に世界を治めた天の神、ウラノスである。

『神統記』によれば、ウラノスを産んだのは大地の女神ガイアだった。伴侶もなしに、自分と同じ大きさの、星をちりばめた天を産み、自分をすっぽり覆わせた。そしてこの天が、大地の夫になった。

天と大地のあいだには、次々に子が生まれた。のちにティタンと呼ばれる12柱の神々。一つ目の巨人たち。50の頭と100の腕を持つ巨人たち。ところがウラノスは、生まれたばかりの子を憎み、光のもとに出さず、大地の奥深くへ押し込めた。そうして悪事を楽しんだ。

子を体の中に押し込められた大地は、苦しんでうめいた。そして灰色の石で大きな鎌をこしらえ、子どもたちに、父に報いを受けさせようと持ちかけた。応じたのは、末っ子のクロノスだけだった。

夜とともに、ウラノスは大地を求めてやって来て、すっぽりと覆いかぶさった。物陰に潜んでいたクロノスは、左手で父をつかみ、右手の大鎌で父の体の一部を切り落とし、後ろへ投げ捨てた。天の神の支配は、こうして終わった。

大鎌を振り上げるクロノスと、倒れた父ウラノス。
大鎌を振り上げるクロノスと、倒れた父ウラノス。『サトゥルヌスによるウラノスの去勢』 ジョルジョ・ヴァザーリ、クリストーファノ・ゲラルディ 16世紀Public domain

切り落とされた体から飛び散った血は大地に落ち、やがて復讐の女神たちと、鎧をまとった巨人族と、トネリコの精たちが生まれた。海に落ちた体の一部のまわりには白い泡が立ち、その中から愛の女神アプロディテが現れた。ウラノスの敗北から、新しい神々が生まれた。

海の泡から現れた愛の女神。ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』(1485年ごろ)。
海の泡から現れた愛の女神。ボッティチェッリ『ヴィーナスの誕生』(1485年ごろ)。『ヴィーナスの誕生』 サンドロ・ボッティチェッリ 1485年ごろ ウフィツィ美術館Public domain

倒された父は、子どもたちを「ティタン」と呼んでなじった。手を伸ばして大それたことをした者ども、という意味の呼び名で、いつか必ず報いが来ると言い残したという。

その言葉どおり、今度はクロノスが、自分の息子ゼウスに王座を追われる。

それから長い時がたった1781年、イギリスの天文学者ハーシェルが、望遠鏡で新しい惑星を見つけた。NASAによれば、ハーシェルは国王ジョージ3世にちなむ名を付けようとしたが受け入れられず、ドイツの天文学者ボーデが出したウラヌスの名が定着した。そのすぐ内側を回る土星の英語名サターンは、クロノスにあたるローマの神の名である。息子に王座を追われた天の神は、その息子の星のさらに外側に、自分の星を持つことになった。

1986年に探査機ボイジャー2号が撮影した天王星。
1986年に探査機ボイジャー2号が撮影した天王星。『探査機ボイジャー2号が撮影した天王星』 NASA/JPL-Caltech 1986年撮影 NASAPublic domain

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ヘシオドス『神統記』、アメリカ航空宇宙局『NASA公式サイト』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』

この物語の人々

ローマ以後の語り

天王星 Uranus の名はこの神に由来し、ギリシャ神名がそのまま採用された唯一の惑星名(他はローマ名)。1781年にハーシェルが望遠鏡で発見し、国王ジョージ3世にちなむ命名を提案したが受け入れられず、ヨハン・ボーデの提案した Uranus が定着した。土星(サトゥルヌス=クロノス)の外側を回る星に、クロノスの父である天空神の名を充てた形になる。語源の節も参照。

アメリカ航空宇宙局『NASA公式サイト』 1958年〜(2026年9月閲覧)、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)

もっと詳しく

ガイアが伴侶なしに産んだ。自分と等しい大きさで、あらゆる方向からガイアを覆う「星をちりばめた天」。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

生まれた子を光のもとに出さず、大地の内なる隠れ場所に押し込めては、それを悪事として楽しんだ。ガイアは内側から圧迫されて呻いた。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

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待ち伏せしていたクロノスが左手で父を掴み、右手の大鎌で性器を切り落として背後の海へ投げた。これによって天と地が分かれ、ウラノスの支配は終わる。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

飛び散った血からエリニュエス・ギガンテス・メリアイが生まれ、海に落ちた性器の周りに立った白い泡からアプロディテが生まれた。ウラノスの敗北そのものが新しい神々を生む。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

子らを「ティタン(Τιτῆνες)」と名づけたのはウラノスで、「手を伸ばして(τιταίνοντας)大それたことをした者たち」という呼び名であり、その報いが来ると予言した、と語られる。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

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家族・恋愛

今の言葉に残る

ウラン / uranium元素ウラン。1789年にドイツの化学者クラプロートが、その8年前(1781年)に発見されたばかりの惑星ウラヌスにちなんで命名した。のちのネプツニウム(1941年)・プルトニウム(1942年)も、周期表でウランの次に来る順序が海王星・冥王星の順序と重なることから命名されている。

天王星 / Uranus1781年にハーシェルが発見した惑星。ハーシェル自身は国王ジョージ3世にちなむ「ジョージの星」を提案したが、ドイツの天文学者ボーデが、ほかの惑星の名とそろう Uranus を提案し、イギリスでも1809年までにこちらが好まれるようになった。Uranus はギリシャ語 Ouranos(「天」)のラテン語形で、天空を神にしたウラノスは大地ガイアの夫、ティタンたちの父にあたる。土星の名になったサトゥルヌス(クロノス)もティタンの一人である。

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このページの出典(4件)
  1. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  2. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  3. 1958年〜(2026年9月閲覧)アメリカ航空宇宙局『NASA公式サイト』
  4. 2001年〜(2026年9月閲覧)ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』