ローマの詩人は彼らを反対側に置く。ウェルギリウス『アエネイス』では、アイガイオンは百の腕と五十の口から火を吐き、五十の盾を打ち鳴らしてユピテルの雷に立ち向かった者のたとえに使われる。ホラティウスも「百の手のギュアス」を、知恵のない力が自滅する例として、神に逆らった巨人たちと並べる。
ホラティウス『歌集(カルミナ)』 前23年・前13年、ウェルギリウス『アエネイス』 前19年頃
Ἑκατόγχειρες怪物
腕が百本、頭が五十。そんな姿の巨人が三人いた。ヘカトンケイル、「百の手を持つ者たち」と呼ばれる兄弟である。
この巨人たちは、神々の王ゼウスの天下を決めた戦いで、勝敗を分ける役を果たした。どんな兄弟だったのか、見ていこう。
『神統記』によれば、三人は大地の女神ガイアと天空の神ウラノスのあいだに生まれた。一つ目の巨人キュクロプスたちのあとに生まれた、強大な三兄弟である。それぞれの肩からは、近寄りがたい百本の腕が伸び、五十の頭が生えていた。
父ウラノスは、息子たちの力と姿を妬み、地の底に縛りつけて閉じ込めてしまう。三兄弟は、大地の果ての闇の中で、長いあいだ苦しみ続けた。
時が流れ、ゼウスたちの世代が、父の世代の巨神族ティタンと戦うことになった。戦いは10年続いても決着がつかない。そこで大地の女神の助言に従い、ゼウスたちは三兄弟を地上へ連れ戻し、神々の食べ物と飲み物を与えて力を取り戻させた。ゼウスは呼びかける。私たちの手で、つらい縛めから光のもとへ戻れたことを忘れず、その力を見せてくれ、と。兄弟の一人が答えた。その恩はよく分かっている。ティタンとの戦いで、あなたの力を助けよう、と。
三兄弟は戦いの先頭に立つ。力強い手から、三百もの岩を次々に投げつけ、ティタンたちを岩の影で覆い、地の底深く、天と地が離れているのと同じだけ下にある奈落タルタロスへと追い落とし、鎖で縛り上げた。
戦いのあと、三兄弟はタルタロスの青銅の門のそばに住み、ゼウスの忠実な番人となった。兄弟の一人ブリアレオスは、海の神ポセイドンの娘を妻に迎えている。
『イリアス』にも、このブリアレオスが登場する。かつてヘラとポセイドンとアテナが、ゼウスを縛り上げようと企てたことがあった。そのとき海の女神テティスが、百の手を持つ者をオリュンポスに呼び寄せた。父よりも力の強いこの巨人が、誇らしげにゼウスの隣に座ると、神々は恐れをなして、企てを諦めたという。
ところがローマの詩人たちは、この巨人たちを反対の側に置いた。ウェルギリウスの『アエネイス』では、百の腕と五十の口から火を吐き、五十の盾を打ち鳴らしてゼウスの雷に立ち向かった者として、たとえに使われている。
ギリシャのコリントスの人々は、別の話を伝えていた。海の神と太陽神がこの土地を取り合ったとき、ブリアレオスが仲裁に入り、地峡を海の神に、町の上にそびえる岬を太陽神に与えた、という。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ヘシオドス『神統記』、ホラティウス『歌集(カルミナ)』、ウェルギリウス『アエネイス』、パウサニアス『ギリシア案内記』
ローマの詩人は彼らを反対側に置く。ウェルギリウス『アエネイス』では、アイガイオンは百の腕と五十の口から火を吐き、五十の盾を打ち鳴らしてユピテルの雷に立ち向かった者のたとえに使われる。ホラティウスも「百の手のギュアス」を、知恵のない力が自滅する例として、神に逆らった巨人たちと並べる。
ホラティウス『歌集(カルミナ)』 前23年・前13年、ウェルギリウス『アエネイス』 前19年頃
ヘシオドスとホメロスでは、百手の巨人はゼウスを助ける側。ティタンとの戦いを決着させ(ヘシオドス)、神々の反乱からゼウスを救う(ホメロス)。ローマの詩で「ユピテルに逆らった者」とされるのとは正反対。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ヘシオドス『神統記』 前700年頃
パウサニアスによれば、コリントスの人々は、ポセイドンと太陽神ヘリオスがこの土地を争ったとき、ブリアレオスが仲裁に入り、地峡をポセイドンに、町の上にそびえる岬(アクロコリントス)をヘリオスに与えたと語る。
パウサニアス『ギリシア案内記』 2世紀
『神統記』では、ガイアとウラノスからキュクロプスに続いて生まれた三人の強大な子、コットス、ブリアレオス、ギュエス。それぞれの肩から近寄りがたい百本の腕が伸び、五十の頭が生えていた。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
父ウラノスは彼らの力と姿を妬んで地下に縛りつけた。ゼウスたちはガイアの助言で三人を地上に連れ戻し、神々の食べ物を与えて味方にする。三人は戦いの先頭に立ち、三百の岩を次々に投げてティタンを覆い、地下深くタルタロスへ追い落として縛った。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
戦いのあと、ポセイドンが青銅の門を据えたタルタロスのそばにギュエス、コットス、ブリアレオスが住み、ゼウスの忠実な番人となる。ブリアレオスはポセイドンの娘キュモポレイアを妻に迎え、ポセイドンの婿になる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
ホメロスに出てくるのはブリアレオス一人だけ。『イリアス』でアキレウスが母テティスに思い出させる話では、ヘラとポセイドンとアテナがゼウスを縛ろうとしたとき、テティスが百の手を持つ者をオリュンポスに呼び寄せた。神々は彼を「ブリアレオス」、人間は「アイガイオン」と呼ぶ。父よりも力が強い彼がゼウスの隣に座ると、神々は恐れて縛るのをやめた。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
ゼウスたちとティタンの戦いは10年続いても決着がつかなかった。ゼウスは百手の三兄弟に神々の食べ物を与え、縛めから光のもとへ戻れた恩を忘れず力を示してほしいと求め、コットスは、あなたの知恵のおかげで戻れた、ティタンとの戦いであなたの力を助けようと答えた。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃