イアペトスはオケアノスの娘クリュメネを妻とし、剛胆なアトラス、傲慢さゆえにゼウスに雷で打たれて冥界の闇へ落とされたメノイティオス、策に富むプロメテウス、うかつなエピメテウスが生まれる。アトラス・メノイティオス・プロメテウスの三人はゼウスから罰を受け、エピメテウスは「初めから人間に災いをもたらした者」とされる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
Ἰαπετός神
大西洋を英語でアトランティックという。「アトラスの海」という意味だ。天を支える巨人アトラス、そして人間に火を与えたプロメテウス。名の知れたこの二人の父が、イアペトスである。ところが父親本人の話は、ほとんど何も残っていない。
分かっていることは、多くない。
イアペトスは、天ウラノスと大地ガイアのあいだに生まれた、古い世代の神々ティタンの一人だった。ゼウスの父クロノスとは兄弟にあたる。
『神統記』によれば、イアペトスは大洋の神オケアノスの娘を妻に迎え、四人の息子をもうけた。四人とも、神々の王ゼウスと関わって名を残した。
長男は、剛胆なアトラス。ゼウスに命じられ、世界の果てで、疲れを知らない頭と腕で広い天を支え続けている。
二人目は、傲慢な息子。度を越した思い上がりのために、ゼウスの雷に打たれて地の底の闇へ落とされた。
三人目が、知恵者プロメテウス。ゼウスを出し抜いて人間の味方をしたため、ほどけない鎖で縛られ、毎日鷲に肝臓をついばまれる罰を受けた。

四人目は、うかつなエピメテウス。ゼウスが作らせた最初の女パンドラを受け取ってしまい、人間に災いを招いた。
『神統記』などでゼウスがプロメテウスに呼びかけるとき、決まって口にするのは「イアペトスの子よ」という言葉である。父の名は、こうして息子の呼び名の中に残った。
『イリアス』でイアペトスの名が出るのは、ただ一度。ゼウスが妻ヘラを突き放す場面だ。お前がたとえ大地と海の果てまで行こうと構わない。イアペトスとクロノスが座り、太陽の光も風も届かない深い奈落までも。倒された古い神々の行き着いた先として、その名が挙げられている。
後の時代に神話をまとめたアポロドーロスでは、妻はオケアノスの別の娘、アシアになっている。息子たちの顔ぶれは変わらない。このアシアという名には、もう一つの伝えがある。ヘロドトスによれば、ギリシャ人の多くは、アジアという地名はプロメテウスの妻アシアから来たと言っていた。同じアシアという名が、ある語り手ではプロメテウスの母、別の語り手では妻として出てくる。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ヘシオドス『神統記』、ヘシオドス『仕事と日』、ヘロドトス『歴史』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』
イアペトスはオケアノスの娘クリュメネを妻とし、剛胆なアトラス、傲慢さゆえにゼウスに雷で打たれて冥界の闇へ落とされたメノイティオス、策に富むプロメテウス、うかつなエピメテウスが生まれる。アトラス・メノイティオス・プロメテウスの三人はゼウスから罰を受け、エピメテウスは「初めから人間に災いをもたらした者」とされる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
アポロドロスでは妻はオケアノスの娘アシアで、メノイティオスはティタン戦争でゼウスに雷で打たれてタルタロスへ落とされたとされる。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『神統記』でイアペトスはウラノスとガイアの子、ティタンの一人として、コイオス・クレイオス・ヒュペリオンと並んで挙がる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
『イリアス』でゼウスはヘラに、たとえお前がイアペトスとクロノスの座す大地と海の最果て、太陽の光も風も届かない深いタルタロスまで行こうと構わない、と突き放す。ホメロスでイアペトスの名が出るのはこの一箇所だけ。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
ヘシオドスでは、ゼウスがプロメテウスに呼びかけるとき「イアペトスの子よ」と言う。父イアペトス本人より、プロメテウスを指す父称として名前が残っている。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃、ヘシオドス『仕事と日』 前700年頃
イアペトゥス(土星の衛星)/ Iapetus土星の衛星イアペトゥスは、進む向きの側が石炭のように黒く、反対側は明るいという、二色に塗り分けられたような星である。1671年に天文学者カッシーニが見つけ、最初はルイ14世にちなむ「ルイの星」の一つとされていた。のちに土星の衛星をクロノスの兄弟姉妹の名で呼ぶことになり、ティタンの神イアペトスの名が付いた。アトラスとプロメテウスの父にあたる神で、土星にはこの二人の名を持つ小さな衛星もある。