ウェルギリウス『農耕詩』は、月の五日目を凶日とする理由として、この日に冥界の神とエウメニデスが生まれ、大地がおぞましいお産でコイオスとイアペトスと荒々しいテュポエウスを産み、兄弟が山を積み上げて天を引き裂こうとした、と歌う。ヘシオドスではウラノスの子として最初の世代に置かれたコイオスが、ここではテュポエウスと並んで、天を攻める兄弟の一人に数えられている。
ウェルギリウス『農耕詩』 前29年頃
Κοῖος神
弓と竪琴の神アポロンと、狩りの女神アルテミス。この双子の祖父にあたる神がいる。ところが、その祖父自身には、ほとんど物語が残っていない。ゼウスより前の世代の神々、ティタンの一柱、コイオスである。
では、系図の中にだけ名を残したこの神が、どう語られてきたのか見ていこう。
『神統記』によれば、コイオスは大地の女神ガイアと天空の神ウラノスのあいだに生まれた、ティタンと呼ばれる古い神々の一人だった。兄弟の末っ子が、のちに父を倒して王になるクロノスである。
コイオスは、姉妹にあたる女神ポイベと結ばれ、二人の娘をもうけた。
姉のレトは、ゼウスとのあいだに双子を産んだ。弓の神アポロンと、狩りの女神アルテミスだ。妹のアステリアは別の神と結ばれて、魔術の女神として知られるヘカテを産んだ。ゼウスの子のうち二柱と、夜と冥界に通じる女神が、そろってコイオスの孫にあたる。
二人の娘は、一つの島で結びついている。後の時代の神話集によれば、妹のアステリアはゼウスに言い寄られ、ウズラに姿を変えて海に身を投げて逃れた。彼女の名をとってアステリアと呼ばれていた町が、のちにデロスと名を変えた。そして身重の姉レトが、どの土地にも受け入れてもらえずにさまよった末、双子を産み落としたのが、そのデロス島だった。
ところが、ローマの詩人ウェルギリウスの手にかかると、コイオスはまるで別の姿になる。『農耕詩』は、月の五日目は不吉な日だと書いている。この日に大地がおぞましいお産をして、コイオスとその兄弟、そして荒々しい怪物テュポンを産んだ。兄弟たちは山の上に山を積み上げて、天を引き裂こうとした。系図の上では穏やかな祖父だった神が、ここでは神々に刃向かう大地の子らの一人に数えられている。
『アエネイス』でも、大地が最後に産んだ噂の女神は、コイオスと巨人の妹だとされた。
この物語の出典: ヘシオドス『神統記』、ウェルギリウス『農耕詩』、ウェルギリウス『アエネイス』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
ウェルギリウス『農耕詩』は、月の五日目を凶日とする理由として、この日に冥界の神とエウメニデスが生まれ、大地がおぞましいお産でコイオスとイアペトスと荒々しいテュポエウスを産み、兄弟が山を積み上げて天を引き裂こうとした、と歌う。ヘシオドスではウラノスの子として最初の世代に置かれたコイオスが、ここではテュポエウスと並んで、天を攻める兄弟の一人に数えられている。
ウェルギリウス『農耕詩』 前29年頃
『アエネイス』でも、噂の女神ファーマは、神々に怒った大地がコイオスとエンケラドスの妹として最後に産んだ娘とされる。ローマの詩では、コイオスは巨人エンケラドスと同列に扱われる。
ウェルギリウス『アエネイス』 前19年頃
アポロドロスによれば、娘アステリアはゼウスに言い寄られて鶉の姿で海に身を投げ、その名の町がのちにデロスと呼ばれるようになった。そのデロス島で、もう一人の娘レトがアルテミスとアポロンを産む。コイオスの二人の娘が、同じ島でつながっている。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『神統記』では、ガイアとウラノスの子であるティタンの一柱。名の挙がる順ではオケアノスの次に来る。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
姉妹のポイベと結ばれ、レトとアステリアの父になる。レトはゼウスとのあいだにアポロンとアルテミスを産み、アステリアはヘカテの母になる。ゼウスの子のうち二柱と、冥界に通じる女神ヘカテが、どちらもコイオスの孫にあたる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
ホメロスの二つの叙事詩にコイオスの名は出てこない。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
『神統記』134 同じ行に名が並ぶ
『神統記』134
『神統記』134
『神統記』134-135