ギリシャ神話の地図
ガイア母であり妻ネレウス長男ネレイス孫娘たちイリス孫娘メドゥサ孫娘グライアイ孫娘たちウラノス兄弟

ポントス

Πόντος神

見た者を石に変える怪物メドゥサ。神々の使いの虹の女神イリス。英雄アキレウスの母である海の女神テティス。まるで違う顔ぶれに見えるが、系図をさかのぼると、同じ一人の祖父に行き着く。海そのものの神、ポントスである。

見た者を石に変える怪物メドゥサ。カラヴァッジョの絵(1597〜1598年)。
見た者を石に変える怪物メドゥサ。カラヴァッジョの絵(1597〜1598年)。『メドゥサ』 カラヴァッジョ 1597〜1598年Public domain

『神統記』によれば、世界のはじめに生まれた大地の女神ガイアは、まず自分と同じ大きさの星空ウラノスを産み、山々を産んだ。そして誰とも交わらずに、波が荒れ狂う実りのない海、ポントスを産んだ。そのあとでガイアはウラノスと交わり、クロノスたち古い神々ティタンを産む。海は、ティタンよりも古い神だった。

やがてポントスは母である大地と交わり、子どもたちをもうけた。長男は、うそをつかない誠実な「海の老人」ネレウス。ほかに、大いなる神、勇ましい神、頬の美しい女神、鉄の心を持つ女神がいた。

この子どもたちから、海の一族が広がっていく。ネレウスには50人の娘が生まれ、その一人がのちにアキレウスの母となる女神テティスだった。別の息子からは、虹の女神イリスと、速い翼で風や鳥と並んで飛ぶハルピュイアたちが生まれた。そして、兄妹で結ばれた二人の子のあいだからは、生まれたときから白髪の姉妹と、メドゥサを含むゴルゴンの姉妹が生まれた。この二人の末の子は、暗い大地の果ての奥で黄金の林檎を守る、恐ろしい大蛇だったという。海の奥に潜む美しいものと恐ろしいものが、みな一つの家系から出ている。

海の老人の娘の一人が、海の神トリトンの背に乗る。2世紀前半の大理石の浮彫。
海の老人の娘の一人が、海の神トリトンの背に乗る。2世紀前半の大理石の浮彫。『トリトンに乗るネレイスを刻んだ大理石の半円浮彫』 2世紀前半 メトロポリタン美術館Public Domain (The Met Open Access, CC0)

ただし、『イリアス』や『オデュッセイア』に出てくる「ポントス」は神ではなく、「海」を指すごく普通の言葉にすぎない。系図を持つ神としてのポントスがはっきり姿を見せるのは、『神統記』からである。ラテン語の同じ名は、黒海とその沿岸の地方を指す名でもある。

この物語の出典: ヘシオドス『神統記』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

ローマ以後の語り

アポロドロスも、ポントスと大地からポルコス、タウマス、ネレウス、エウリュビエ、ケトが生まれたと書き、ヘシオドスの系譜を引き継ぐ。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

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『神統記』では、ガイアはまず天ウラノスと山々を産み、続いて「愛の交わりなしに」波立つ不毛の海ポントスを産む。そのあとでウラノスと交わってティタンたちを産む。海はティタンより古い。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

のちに母ガイアと交わり、嘘をつかない誠実な長子ネレウス、大いなるタウマス、勇ましいポルキュス、頬の美しいケト、鉄の心をもつエウリュビエをもうける。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

ポントスの子らから海の怪異と精霊の系譜が広がる。ネレウスからは五十人のネレイス、タウマスからは虹のイリスと怪鳥ハルピュイア、ポルキュスとケトからはグライアイとゴルゴン(メドゥーサを含む)が生まれる。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

ホメロスでは πόντος は「海」を表すごく普通の語で、系譜を持つ神としてのポントスは出てこない。海を人格化した神としての姿は、ヘシオドスの系譜で初めてはっきりする。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、ヘシオドス『神統記』 前700年頃

ほかのつながり(1人)

家族・恋愛

  • クレイオス義理の子

    妻エウリュビエはポントスとガイアの娘。『神統記』237-239, 375。アポロドロス 1.2.2 も「ポントスの娘エウリュビエ」と書く

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このページの出典(4件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  3. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  4. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』