アポロドロスも、ポントスと大地からポルコス、タウマス、ネレウス、エウリュビエ、ケトが生まれたと書き、ヘシオドスの系譜を引き継ぐ。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
Πόντος神
見た者を石に変える怪物メドゥサ。神々の使いの虹の女神イリス。英雄アキレウスの母である海の女神テティス。まるで違う顔ぶれに見えるが、系図をさかのぼると、同じ一人の祖父に行き着く。海そのものの神、ポントスである。

『神統記』によれば、世界のはじめに生まれた大地の女神ガイアは、まず自分と同じ大きさの星空ウラノスを産み、山々を産んだ。そして誰とも交わらずに、波が荒れ狂う実りのない海、ポントスを産んだ。そのあとでガイアはウラノスと交わり、クロノスたち古い神々ティタンを産む。海は、ティタンよりも古い神だった。
やがてポントスは母である大地と交わり、子どもたちをもうけた。長男は、うそをつかない誠実な「海の老人」ネレウス。ほかに、大いなる神、勇ましい神、頬の美しい女神、鉄の心を持つ女神がいた。
この子どもたちから、海の一族が広がっていく。ネレウスには50人の娘が生まれ、その一人がのちにアキレウスの母となる女神テティスだった。別の息子からは、虹の女神イリスと、速い翼で風や鳥と並んで飛ぶハルピュイアたちが生まれた。そして、兄妹で結ばれた二人の子のあいだからは、生まれたときから白髪の姉妹と、メドゥサを含むゴルゴンの姉妹が生まれた。この二人の末の子は、暗い大地の果ての奥で黄金の林檎を守る、恐ろしい大蛇だったという。海の奥に潜む美しいものと恐ろしいものが、みな一つの家系から出ている。

ただし、『イリアス』や『オデュッセイア』に出てくる「ポントス」は神ではなく、「海」を指すごく普通の言葉にすぎない。系図を持つ神としてのポントスがはっきり姿を見せるのは、『神統記』からである。ラテン語の同じ名は、黒海とその沿岸の地方を指す名でもある。
この物語の出典: ヘシオドス『神統記』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
アポロドロスも、ポントスと大地からポルコス、タウマス、ネレウス、エウリュビエ、ケトが生まれたと書き、ヘシオドスの系譜を引き継ぐ。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『神統記』では、ガイアはまず天ウラノスと山々を産み、続いて「愛の交わりなしに」波立つ不毛の海ポントスを産む。そのあとでウラノスと交わってティタンたちを産む。海はティタンより古い。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
のちに母ガイアと交わり、嘘をつかない誠実な長子ネレウス、大いなるタウマス、勇ましいポルキュス、頬の美しいケト、鉄の心をもつエウリュビエをもうける。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
ポントスの子らから海の怪異と精霊の系譜が広がる。ネレウスからは五十人のネレイス、タウマスからは虹のイリスと怪鳥ハルピュイア、ポルキュスとケトからはグライアイとゴルゴン(メドゥーサを含む)が生まれる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
ホメロスでは πόντος は「海」を表すごく普通の語で、系譜を持つ神としてのポントスは出てこない。海を人格化した神としての姿は、ヘシオドスの系譜で初めてはっきりする。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、ヘシオドス『神統記』 前700年頃
妻エウリュビエはポントスとガイアの娘。『神統記』237-239, 375。アポロドロス 1.2.2 も「ポントスの娘エウリュビエ」と書く