ギリシャ神話の地図
ゼウス恋人テュンダレオス夫ヘレネ娘ポリュデウケス息子カストル息子クリュタイムネストラ娘ネメシス別伝の母
白鳥の姿のゼウスに寄り添われるレダ。メルツィの絵。

レダ

Λήδα人間

白鳥の姿のゼウスに寄り添われるレダ。メルツィの絵。 『レダと白鳥』 フランチェスコ・メルツィ 1508〜1515年Public domain

ふたご座には、カストルとポルックスという二つの明るい星が並んでいる。名前はギリシャ神話の双子の兄弟から取られた。ところがこの双子、父親が違う。一人は人間の王の子、もう一人は神々の王ゼウスの子だった。

二人を産んだ母がレダである。同じ夜に神と人間の両方の子を宿したこの女性の話を、見ていこう。

アポロドーロスによれば、レダはギリシャ西部の国の王の娘で、国を追われて身を寄せてきたスパルタの王子テュンダレオスの妻となった。夫はのちにスパルタに戻って王になる。

そのレダのもとへ、ゼウスが白鳥の姿でやって来た。同じ夜、レダは夫とも床をともにした。そして4人の子が生まれた。ゼウスの子としては、のちに絶世の美女と呼ばれるヘレネと、拳闘の名手ポリュデウケス。夫の子としては、のちに総大将アガメムノンの妻となるクリュタイムネストラと、馬の名手カストル。ラテン語の神話集を残したヒュギヌスも、同じ組み分けをしている。ポリュデウケスのローマでの呼び名がポルックスで、ふたご座の星の名になった。

神の子と人の子とでは、運命も違った。ピンダロスの詩によれば、カストルが戦いで槍に刺されて死にかけたとき、ゼウスはポリュデウケスに選ばせた。おまえは私の子、カストルは母の夫の子だ。一人で不死となって神々のもとへ来るか、それとも兄弟と命を分け合うか。ポリュデウケスは迷わず、分け合うほうを選んだ。こうして双子は、一日おきに天と冥界を行き来するようになったという。

ヘレネの生まれについては、もう一つの伝えがある。アポロドーロスが「一説には」として紹介する形では、ゼウスに追われた女神ネメシスが鵞鳥に姿を変え、ゼウスは白鳥になって交わった。ネメシスが産んだ卵を羊飼いが森で見つけてレダに渡し、レダはそれを箱にしまっておいた。やがて卵からヘレネが生まれ、レダは自分の娘として育てたという。この形では、レダはヘレネの育ての母ということになる。

最も古い作品のレダは、ずっと控えめだ。『オデュッセイア』で冥界を訪れたオデュッセウスは、テュンダレオスの妻レダの霊に会い、彼女が夫とのあいだに、馬を馴らすカストルと拳闘の名手ポリュデウケスを産んだと語る。白鳥の話も、ヘレネの母であることも、ここには出てこない。『イリアス』では、トロイアの城壁の上に立ったヘレネが、ギリシャ軍の中に同じ母から生まれた兄弟二人の姿を探している。二人がすでに故郷の土の下に眠っていることを、彼女は知らなかった。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ホメロス『オデュッセイア』、作者不詳(スタシノスに帰される)『キュプリア』、ピンダロス『祝勝歌集』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』

この物語の人々

こういう風にも語られている

卵の数え方は伝承で割れる。ヒュギヌスは、白鳥のゼウスからポリュデウケスとヘレネが、テュンダレオスとの間にカストルとクリュタイムネストラが生まれたとするが、卵には触れない。アポロドーロスも同じ組み分けをしたうえで、ネメシスの産んだ卵を羊飼いがレダに渡し、そこからヘレネが孵ったとする異伝を並べる。ホメロスはカストルとポリュデウケスを二人ともテュンダレオスの子とする。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』 1〜2世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

『キュプリア』の伝えるもう一つの形では、卵を産んだのは女神ネメシスで、レダはそれを預かって育てただけになる。この場合レダはヘレネの生みの母ではない。

作者不詳(スタシノスに帰される)『キュプリア』 前7世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ローマ以後の語り

アイトリアの王テスティオスの娘で、スパルタ王テュンダレオスに嫁いだ。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

白鳥の姿のゼウスと交わり、同じ夜にテュンダレオスとも交わった。ゼウスからヘレネとポリュデウケスを、テュンダレオスからカストルとクリュタイムネストラを産んだ。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

アポロドーロスの割り振りでは、ゼウスからヘレネとポリュデウケス、テュンダレオスからカストルとクリュタイムネストラを産んだ。同じ夜の二人の相手から、不死の側と死ぬ側の子が二人ずつ生まれるという分け方になっている。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

もっと詳しく

『オデュッセイア』の冥界の場面では、テュンダレオスの妻レダがカストルとポリュデウケスを産んだことだけが語られる。白鳥の逸話も、ヘレネの母であることも、ホメロスには明記されない。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

『イリアス』で城壁からギリシャ勢を見渡すヘレネは、同じ母から生まれたカストルとポリュデウケスの姿が見えないのをいぶかるが、二人はすでに故郷ラケダイモンの土の下にいた。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

ほかのつながり(1人)

出来事・場所・物

今の言葉に残る

レダ(木星の衛星)/ Leda木星の衛星レダは、1974年に見つかった半径10キロほどの小さな衛星である。見つけた天文学者は、そもそも衛星に名前を付けることに反対で、昔ながらの番号で呼ぶほうを支持していた。それでも名前を付けるならと出したのが「レダ」だった。白鳥の姿のゼウスと結ばれ、ヘレネたちの母になった女性である。木星の衛星には、ゼウスの恋人や子孫の名を付ける決まりがある。

星座になった話

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このページの出典(6件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  3. 前7世紀頃作者不詳(スタシノスに帰される)『キュプリア』
  4. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  5. 1〜2世紀頃ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』
  6. 2世紀パウサニアス『ギリシア案内記』