ゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』の元ネタのギリシャ神話
スパルタの戦士クレイトスが、オリュンポスの神々に挑むゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』。主人公の名前からして、ギリシャ神話に出てくる神の名前だった。
どんな作品か
クレイトスは「力」の神
クレイトスの英語の綴りKratosは、ギリシャ神話で「力」そのものである神クラトスと同じだ。ヘシオドスの『神統記』によれば、クラトスは冥界の川の女神ステュクスの子で、きょうだいは勝利の女神ニケ、競争心、そして暴力。ゼウスは、この子らをいつも自分のそばに置いた。
古拙期神統記
アイスキュロスの悲劇『縛られたプロメテウス』の幕開けでは、「力」と「暴力」の二柱が、人間に火を与えたプロメテウスを岩山へ引き立ててくる。鍛冶の神ヘパイストスは気が進まないまま、その体を鎖で縛りつける。
古典期縛られたプロメテウス
兄弟デイモス
シリーズには、クレイトスの兄弟デイモスも登場する。
題名の「戦の神」
題名の「ゴッド・オブ・ウォー」は、「戦の神」という意味。ギリシャ神話で戦の神といえば、アレスである。『イリアス』のアレスは、父ゼウスに「おまえがいちばん憎い」と言われるほど、神々の中でも嫌われていた。
ホメロスイリアス
この話の項目
- アレス戦いの神。ただしホメロスでは戦術の神アテナに何度も打ち負かされ、父ゼウスから「オリュンポスの神の中で最も憎い」と言い渡される。破壊的な暴力そのものであり、ギリシャ人に愛された神ではない。
- ニケ勝利を神格化した翼のある女神。ヘシオドスではティタンのパラスと冥界の川の女神ステュクスの娘で、ティタン戦争のときに母に連れられてゼウスの側についたため、以後いつもゼウスのそばにいる。アテナやゼウスの像が手に載せる小さな勝利の女神としても表され、アテナイのアクロポリスには「翼のない勝利の女神」の神殿があった。
- ステュクス冥界を流れる川であり、その川の女神。ヘシオドスではオケアノスの娘たちのなかで最も優れた者で、ティタン戦争のとき真っ先に子らを連れてゼウスの側についた功で、「神々の誓いの証」という特別な役目を与えられた。神がステュクスの水にかけて誓って破れば、一年間息もできずに倒れ、九年間神々の集まりから締め出される。
- プロメテウスティタン族イアペトスの子で、人間の側に立ってゼウスを欺いた神。供犠の分け前をごまかし、火を盗んで人間に与えた。その報いに岩に縛られて鷲に肝臓を啄まれ、人間にはパンドラが送られる。
- ヘパイストス鍛冶と工芸の神。オリュンポスから投げ落とされて足が不自由になったと語られ、その出自と転落には複数の食い違う伝えがある。アキレウスの楯をはじめ、神話世界の重要な人工物のほとんどが彼の手によるもの。
- ポボスとデイモス軍神アレスとアプロディテの息子たちで、戦場で兵の隊列を崩す「敗走(ポボス)」と「恐怖(デイモス)」の神。ヘシオドスが系譜を記し、『イリアス』ではアレスに付き従って戦車に馬をつなぎ、アガメムノンの盾にも描かれる。1877年に見つかった火星の二つの衛星は、この兄弟の名をもらった。英語の phobia(〜フォビア、恐怖症)も同じ言葉から来ている。
- ゼウスオリュンポスの神々の王。クロノスとレアの末子で、父を倒して天を得た。多くの女神・人間の女性との間に子をもうけ、神々と英雄の多くの父になった。トロイア戦争では人間の側に肩入れしつつ、最後は運命の側に立つ。
ほかの作品の話
- 聖闘士星矢女神アテナを護る少年たちが、星座の名を背負って戦う。『聖闘士星矢』のどこが、ギリシャ神話のどの話につながっているのか。
- トロイトロイア戦争を描いた2004年の映画『トロイ』。ホメロスの『イリアス』と並べると、どこが同じで、どこが変えられているのか。
- オデュッセイア(ノーラン監督)2026年7月に公開された、クリストファー・ノーラン監督の映画『オデュッセイア』。ホメロスの叙事詩と並べると、何を変え、どこをふくらませたのか。
- ヘラクレス(ディズニー)ディズニーのアニメ映画『ヘラクレス』。神話の英雄の話と並べると、母も、敵も、師匠も、メガラの役回りも、ずいぶん入れ替わっている。
- パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々ギリシャの神々が今もいて、神と人間のあいだに生まれた子どもたちが怪物と戦う。『パーシー・ジャクソン』のどこが、神話のどの話につながっているのか。
- ワンダーウーマンアマゾン族の王女ダイアナが、人間の世界で戦う『ワンダーウーマン』。その故郷の島の名前も、一族の名前も、ギリシャ神話にさかのぼる。
- ハデス(ゲーム)冥界の王子になって、死者の国からの脱出を何度も試みるゲーム『ハデス』。神話で、冥界から出ていこうとした者たちはどうなったのか。
- タイタンの戦い英雄ペルセウスが、メドゥサの首で海の怪物クラーケンに立ち向かう映画『タイタンの戦い』。神話のペルセウスの話と、どこが重なり、どこが違うのか。
- Fate/Grand Order歴史や伝説の人物が「サーヴァント」として戦う『Fate/Grand Order』。ギリシャ神話から来たメドゥーサ、ヘラクレス、アタランテは、神話ではどんな人物だったのか。
- 海のトリトン(手塚治虫)少年トリトンが、海の支配者ポセイドンの一族と戦う手塚治虫の『海のトリトン』。ところが神話では、トリトンはポセイドンの息子だった。