ディズニー映画『ヘラクレス』の元ネタのギリシャ神話
ディズニーのアニメ映画『ヘラクレス』。神話の英雄の話と並べると、母も、敵も、師匠も、メガラの役回りも、ずいぶん入れ替わっている。
どんな作品か
母はヘラか、人間か
映画のヘラクレスは、ゼウスと、その妻ヘラの息子である。
神話では、母は人間の王妃アルクメネ。ヘラは母どころか、夫がよその女に産ませたこの子を、生まれる前から憎み続けた女神だった。赤ん坊の寝床に大蛇を送り込んだのも、ヘラである。ヘラクレスという名は「ヘラの栄光」とも読まれるが、その女神に一生つけ狙われた。
ホメロスイリアスローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)近現代改訂新版 世界大百科事典
悪役のハデス
師匠のフィロクテテス
メガラ
映画には、メガラという娘が出てくる。ディズニーの公式の事典は、ハデスがヘラクレスに差し向ける災いの一つとして、彼女を「裏切りの、助けを待つ乙女」と紹介している。
神話のメガラは、ヘラクレスの最初の妻。テーバイの王が、手柄の褒美に長女を与えた。ところがヘラクレスは、ヘラに狂わされて、メガラとのあいだの子どもたちを火の中に投げ込んでしまう。神話で二人がたどるのは、悲しい結末だった。
ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
この話の項目
- ヘラクレスゼウスとアルクメネの子の英雄。ヘラに憎まれ、母のいとこにあたるエウリュステウスに仕えて数々の難業をこなした。トロイアをトロイア戦争の一世代前に一度攻め落とし、その弓はのちにピロクテテスに渡ってトロイア陥落の鍵になる。
- ヘラゼウスの正妻にして姉。結婚の守護者でありながら、夫の浮気相手とその子を執拗に苦しめる。トロイア戦争では一貫してギリシャ側に立ち、その動機は『イリアス』末尾で一度だけパリスの審判に結び付けられる。
- ハデス冥界を支配する神で、ゼウス・ポセイドンの兄弟。オリュンポスには住まず、十二神に数えられないのが通例。ペルセポネを攫って妻とし、その和解から季節の循環が生まれる。
- ピロクテテス弓の名手。蛇に噛まれた傷の悪臭のためレムノス島に置き去りにされ、9年後に「この弓が無ければトロイアは落ちない」と知った味方に呼び戻される。捨てた者が頭を下げに来る話。
- メガラテバイ王クレオンの娘で、英雄ヘラクレスの最初の妻。ミニュアイ人に勝った褒美として嫁ぎ、息子たちを産んだ。ヘラが送った狂気に襲われたヘラクレスが子どもたちを殺したとき、エウリピデス『ヘラクレス』では彼女も夫の矢に倒れ、アポロドーロスでは生き延びて、のちにヘラクレスの甥イオラオスに嫁ぐ。ディズニー映画『ヘラクレス』(1997年)の登場人物メガラと同じ名。
- アルクメネペルセウスの孫娘で、アンピトリュオンの妻。夫が戦に出ているあいだに、夫の姿を借りたゼウスが訪れて、ヘラクレスを身ごもった。同じとき夫の子イピクレスも宿し、双子の兄弟が生まれた。
- ゼウスオリュンポスの神々の王。クロノスとレアの末子で、父を倒して天を得た。多くの女神・人間の女性との間に子をもうけ、神々と英雄の多くの父になった。トロイア戦争では人間の側に肩入れしつつ、最後は運命の側に立つ。
ほかの作品の話
- 聖闘士星矢女神アテナを護る少年たちが、星座の名を背負って戦う。『聖闘士星矢』のどこが、ギリシャ神話のどの話につながっているのか。
- トロイトロイア戦争を描いた2004年の映画『トロイ』。ホメロスの『イリアス』と並べると、どこが同じで、どこが変えられているのか。
- オデュッセイア(ノーラン監督)2026年7月に公開された、クリストファー・ノーラン監督の映画『オデュッセイア』。ホメロスの叙事詩と並べると、何を変え、どこをふくらませたのか。
- パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々ギリシャの神々が今もいて、神と人間のあいだに生まれた子どもたちが怪物と戦う。『パーシー・ジャクソン』のどこが、神話のどの話につながっているのか。
- ゴッド・オブ・ウォースパルタの戦士クレイトスが、オリュンポスの神々に挑むゲーム『ゴッド・オブ・ウォー』。主人公の名前からして、ギリシャ神話に出てくる神の名前だった。
- ワンダーウーマンアマゾン族の王女ダイアナが、人間の世界で戦う『ワンダーウーマン』。その故郷の島の名前も、一族の名前も、ギリシャ神話にさかのぼる。
- ハデス(ゲーム)冥界の王子になって、死者の国からの脱出を何度も試みるゲーム『ハデス』。神話で、冥界から出ていこうとした者たちはどうなったのか。
- タイタンの戦い英雄ペルセウスが、メドゥサの首で海の怪物クラーケンに立ち向かう映画『タイタンの戦い』。神話のペルセウスの話と、どこが重なり、どこが違うのか。
- Fate/Grand Order歴史や伝説の人物が「サーヴァント」として戦う『Fate/Grand Order』。ギリシャ神話から来たメドゥーサ、ヘラクレス、アタランテは、神話ではどんな人物だったのか。
- 海のトリトン(手塚治虫)少年トリトンが、海の支配者ポセイドンの一族と戦う手塚治虫の『海のトリトン』。ところが神話では、トリトンはポセイドンの息子だった。