建国の話は二つある。『オデュッセイア』では、ゼウスとアンティオペの子アンピオンとゼトスが、七門のテーバイを初めて築いて城壁で囲んだとされ、カドモスの名は出てこない。アポロドーロスは、アンピオンの竪琴の音に石がついて来て城壁ができたと伝え、町の名はゼトスの妻テーベに由来するとする。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
Θῆβαι場所
竪琴の音に合わせて、石が自分で動いて積み上がり、町の城壁になった。後の神話集が伝える、ギリシャの町テーバイの城壁の始まりである。
テーバイは、七つの門を持つ城壁で知られた町だった。ギリシャ神話ではトロイアと並ぶほど多くの物語の舞台になっている。物語は、町が生まれたところから始まる。
町の始まりには、二つの話がある。
一つは、竪琴の話だ。『オデュッセイア』によれば、七つの門のテーバイを初めて築いて城壁で囲んだのは、ゼウスの二人の息子だった。後の神話集では、兄弟の一人が奏でる竪琴の音に石がついて来て、城壁ができあがったという。町の名は、もう一人の兄弟の妻の名にちなむとされる。
もう一つは、竜の話である。フェニキアの王子カドモスは、ゼウスにさらわれた妹エウロペを探して旅を続けていた。デルポイの神託は告げる。妹のことは忘れよ。一頭の牝牛のあとについて行き、牛が疲れて倒れた場所に町を建てよ、と。牛が伏したのが、のちのテーバイの地だった。
カドモスが牛を女神アテナに捧げようと、仲間に泉の水を汲みに行かせると、泉を守っていた戦の神アレスの竜が仲間たちを殺してしまう。怒ったカドモスは竜を倒し、アテナの助言でその歯を大地にまいた。すると地面から武装した男たちが生えてきて、互いに殺し合い、最後に5人が残った。この5人の子孫が、町の名家になったという。
竜を殺した償いに、カドモスは8年のあいだ戦の神に仕える。そのあとアテナが王国を授け、ゼウスは愛の女神と戦の神の娘をカドモスの妻に与えた。婚礼には神々がこぞって天から降りてきて、祝いの歌を歌った。

ところが、この王家の子孫には不幸が続く。カドモスの娘の一人はゼウスの子を宿したまま雷に焼かれて死に、その子がのちに酒の神ディオニュソスとなって、この町に帰ってくる。孫の一人は狩りの女神の水浴びを見てしまい、鹿に変えられて自分の猟犬に食い殺された。別の孫は、酒の神を認めなかったために、狂乱した実の母に八つ裂きにされた。
さらに数代のち、この町の王家からオイディプスが出る。知らずに父を殺し、町を苦しめていた怪物スフィンクスの謎を解いて、知らずに母と結婚した王である。その息子たちは王位を争い、国を追われた一人が七人の将を率いてこの町に攻め寄せた。兄弟は相討ちとなり、攻め手はほとんどが倒れた。

それでも、町の物語は終わらない。次の世代には、倒れた将たちの息子が再び攻め寄せ、今度はテーバイを落とした。『イリアス』で、その息子の一人が誇っている。父たちは愚かさゆえに滅んだが、我々はもっと少ない兵で、もっと強い七門のテーバイを落とした、と。
英雄ヘラクレスが生まれたのも、盲目の予言者が代々の王に警告を与え続けたのも、この町である。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ホメロス『オデュッセイア』、ヘシオドス『神統記』、ヘシオドス『仕事と日』、ソポクレス『オイディプス王』、エウリピデス『バッコスの信女』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
建国の話は二つある。『オデュッセイア』では、ゼウスとアンティオペの子アンピオンとゼトスが、七門のテーバイを初めて築いて城壁で囲んだとされ、カドモスの名は出てこない。アポロドーロスは、アンピオンの竪琴の音に石がついて来て城壁ができたと伝え、町の名はゼトスの妻テーベに由来するとする。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
もう一つはカドモスの建国譚。神託に従って牝牛の後を追い、牛が伏した場所に町を建て、アレスの竜を倒してその歯から生まれた戦士(スパルトイ)の子孫が町の名家になった。アポロドーロスはカドモスの城砦(カドメイア)と、後のアンピオンとゼトスの城壁を、時代の違う出来事として並べている。
オウィディウス『変身物語』 8年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
カドモス→ポリュドロス→ラブダコス→ライオス→オイディプス→エテオクレスとポリュネイケス、と続く王家(ラブダコス家)は、代々不幸に見舞われる。カドモスの孫たちの世代でもアクタイオン、ペンテウス、セメレ、イノが悲劇的な最期を遂げ、オウィディウスはこれらをテーバイの物語として一続きに語る。
オウィディウス『変身物語』 8年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アポロドーロスによれば、アンピオンとゼトスはリュコスを殺して王位を継ぎ、町を城壁で固めた。そのとき石はアンピオンの竪琴についてきたという。ゼトスはテーベを妻とし、町の名はこの女性にちなむ。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
竜を殺した償いにカドモスはアレスに「永遠の一年」(今の8年)仕えた。そのあとアテナが王国を与え、ゼウスはアプロディテとアレスの娘ハルモニアを妻として与えた。神々はみな天を離れてカドメイアで婚礼を祝い、歌を歌った。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ホメロスはテーバイを「七つの門の」と呼ぶ。『イリアス』では、ディオメデスの仲間ステネロスが「父たちは愚かさゆえに滅んだが、我々はより少ない兵で、より強い城壁の七門のテーバイを落とした」と言い、父の世代の「七将」の失敗と、子の世代(エピゴノイ)の攻略に触れている。ヘシオドスも、「オイディプスの羊の群れ」をめぐって七門のテーバイで英雄たちが戦って滅んだと書く。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ヘシオドス『仕事と日』 前700年頃
同名注意: 『イリアス』にはエジプトのテーバイも出てくる。アキレウスが「財宝の最も多いエジプトのテーバイ、百の門があり、門ごとに二百人が馬と戦車で出撃する町」と言うのがそれで、エジプトの都市を指す。ボイオティアの「七門の」テーバイと、エジプトの「百門の」テーバイは別の町である。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
住民は古くから「カドモスの民(カドメイオイ)」と呼ばれた。ヘシオドスはスフィンクスを「カドモスの民を滅ぼした者」と呼び、ホメロスもオイディプスが「カドモスの民」を治めたと語る。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、ヘシオドス『神統記』 前700年頃
3.4.1
3.5.8(ライオスの死後)、3.7.1(兄弟の死後)/『アンティゴネ』162-210 / 67
『イリアス』4.385-386「力強いエテオクレスの館」/『七将』1-9 / 3.6.1
3.5.7 アンピオンの死後に王位を継ぐ / OT 103 以下