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オイディプス父アンティゴネ妹イオカステ母クレオン叔父アドラストス義父エテオクレス兄弟アンピアラオス予言者テュデウス相婿
オイディプスが息子ポリュネイケスを呪う場面。ヨハン・ハインリヒ・フュースリの作。

ポリュネイケス

Πολυνείκης英雄

オイディプスが息子ポリュネイケスを呪う場面。ヨハン・ハインリヒ・フュースリの作。 『息子ポリュネイケスを呪うオイディプス』 ヨハン・ハインリヒ・フュースリ 1786年 ナショナル・ギャラリー・オブ・アート(ワシントン)CC0

ソポクレスの悲劇『アンティゴネ』は、野ざらしにされた一つの亡骸をめぐって始まる。王は葬ることを禁じ、妹は命がけで葬ろうとする。その亡骸の主が、祖国に攻め込んで死んだ王子ポリュネイケスである。

では、この王子がなぜ祖国に刃を向けることになったのか、たどってみよう。

ポリュネイケスは、テバイの王オイディプスの息子である。父が、知らずに父を殺し母と結婚していたことが明るみに出たあと、王座は二人の息子に残された。ポリュネイケスと、兄弟のエテオクレスである。

アポロドーロスによれば、二人は1年ずつ交代で国を治める約束をした。けれども、その約束は守られなかった。どちらが先に王になったのかは、伝える作品によって違う。いずれにしても、国を追われたのはポリュネイケスの方だった。彼は、祖先に伝わる首飾りと衣を携えて、アルゴスの国へ逃れた。

アルゴスの王の館に夜たどり着くと、門の前で、別の国から逃れてきた男と取っ組み合いになった。のちに英雄ディオメデスの父となる男である。騒ぎを聞いて出てきた王は、ある予言を思い出した。娘たちを猪と獅子に嫁がせよ。二人の盾には、猪と獅子の姿が描かれていた。王は二人を娘婿に迎え、それぞれを祖国へ戻してやると約束した。

こうして、テバイを攻める七人の将の軍勢が集められる。将の一人である予言者だけは、王を除いて全員が死ぬと見抜き、出陣を拒んだ。ポリュネイケスは、その妻に例の首飾りを贈り、夫を戦に出させてくれと頼んだ。妻は首飾りを受け取り、夫を送り出した。

ソポクレスの別の悲劇『コロノスのオイディプス』では、出陣を前にしたポリュネイケスが、盲目の身で放浪する父を訪ねて許しを請う。父の味方についた側が勝つという神託があったからだ。けれども父は許さず、兄弟が互いの手にかかって死ぬよう呪った。

テバイの七つの門の前で戦いが始まる。アイスキュロスの『テバイを攻める七将』では、ポリュネイケスの盾には、金細工の男を導く女の姿があり、わたしはこの男を連れ帰り、町と父の館を取り戻させる、という文字が添えられていた。女は正義の女神を名乗っていた。

その門を守ったのは、兄弟のエテオクレスだった。二人は一騎打ちに臨み、互いを刺し貫いて、ともに死んだ。父の呪いのとおりだった。

テバイの新しい王となった叔父クレオンは、攻めてきた者たちの遺体を葬ることを禁じた。ポリュネイケスの亡骸も、野ざらしにされた。その禁を破ったのが、妹のアンティゴネである。

野ざらしにされた兄の亡骸の前に立つアンティゴネ。
野ざらしにされた兄の亡骸の前に立つアンティゴネ。『ポリュネイケスの亡骸の前のアンティゴネ』 ニキフォロス・リトラス 1865年Public domain

ホメロスの『イリアス』には、この王子が一度だけ出てくる。援軍を求めてミュケナイを訪れたが、ゼウスが不吉なしるしを示したため、得られなかったという。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』、ソポクレス『アンティゴネ』、エウリピデス『フェニキアの女たち』、ソポクレス『コロノスのオイディプス』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

こういう風にも語られている

兄か弟か: ソポクレス『コロノスのオイディプス』では、ポリュネイケスが兄で、弟エテオクレスに王座から追われたと本人が語る。エウリピデス『フェニキアの女たち』では逆に、ポリュネイケスが弟で、年ごとに交代する約束で先に国を出たが、兄エテオクレスが王座を明け渡さなかったとイオカステが語る。アポロドーロスは、先に王になったのがどちらかについても両方の説を並べる。

エウリピデス『フェニキアの女たち』 前410年頃上演、ソポクレス『コロノスのオイディプス』 前401年上演(作者の死後)、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

アルゴスでの結婚: 追放されたポリュネイケスは、ハルモニアの首飾りと衣を持ってアルゴスに来た。夜、アドラストスの館の門前でカリュドンから亡命してきたテュデウスと争っていると、アドラストスは「娘たちを猪と獅子に嫁がせよ」という予言を思い出し、二人を婿にした。アポロドーロスでは盾の猪と獅子の前半身、エウリピデスでは取っ組み合う様子、ヒュギヌスでは身にまとった獅子と猪の皮が、予言の猪と獅子にあたる。

エウリピデス『フェニキアの女たち』 前410年頃上演、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』 1〜2世紀頃

父の呪い: ソポクレス『コロノスのオイディプス』では、ポリュネイケスがコロノスの父を訪ね、神託によれば父の味方した側が勝つと言って許しを請う。オイディプスは、兄弟が互いの手で死ぬよう呪って彼を追い返す。エウリピデスでは、閉じ込められたオイディプスが息子たちに「鋭い剣で家を分け合え」と呪ったため、二人は交代で王位に就く約束をした、とされる。

エウリピデス『フェニキアの女たち』 前410年頃上演、ソポクレス『コロノスのオイディプス』 前401年上演(作者の死後)

ローマ以後の語り

死後も争う兄弟: 2世紀のパウサニアスは、テーバイのプロイトスの門の外にオイディプスの子らの墓があり、兄弟に犠牲を捧げると炎と煙が二つに分かれるとテーバイ人が言う、と記す。彼は似た現象を見たことがあるので信じる、と添えている。

パウサニアス『ギリシア案内記』 2世紀

七将の軍勢はネメアで幼子オペルテスの死を弔う競技会を開き、ポリュネイケスはレスリングで勝った。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

もっと詳しく

ホメロスでの姿: 『イリアス』では、テュデウスと共に「神のごときポリュネイケス」がミュケナイへ客として来て、テーバイの城壁を攻める援軍を募ったが、ゼウスが凶兆を示したため得られなかった、と一度だけ語られる。兄弟との争いや相討ちは語られない。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

名前の意味: アイスキュロス『七将』では、予言者アンピアラオスがポリュネイケスを呼ぶとき、名の後半を二度区切って強調する。後半の neikos は「争い」で、「多くの争いの人」と名前を突きつけたことになる。エテオクレスも後で「まさに名のとおりの男、ポリュネイケス」と言う。

アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』 前467年上演

盾の図柄: アイスキュロスでは、金細工の男を女性が導く姿で、女性は「正義(ディケ)」を名乗り「私はこの男を連れ帰り、町と父の館を取り戻させる」と書かれている。エテオクレスは、正義が彼に寄り添ったことなど生まれてから一度も無い、と切り捨てる。エウリピデスでは、狂ったように駆けるポトニアイの牝馬が、仕掛けで回るように作られている。

アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』 前467年上演、エウリピデス『フェニキアの女たち』 前410年頃上演

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このページの出典(8件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前467年上演アイスキュロス『テーバイ攻めの七将』
  3. 前441年頃上演ソポクレス『アンティゴネ』
  4. 前410年頃上演エウリピデス『フェニキアの女たち』
  5. 前401年上演(作者の死後)ソポクレス『コロノスのオイディプス』
  6. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  7. 1〜2世紀頃ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』
  8. 2世紀パウサニアス『ギリシア案内記』