出典 · 古典期(悲劇・歴史)
ピロクテテス
ソポクレス · 前409年 · Philoctetes
日本語訳: 松平千秋・久保正彰・岡道男編『ギリシア悲劇全集』岩波書店、1990-93(全13巻+別巻) / 『ギリシア悲劇II ソポクレス』ちくま文庫、1986 · 原文・参考リンク ↗
この出典が語っていること
アンティクレイア
- 異伝: 悲劇では、アンティクレイアはラエルテスに嫁ぐ前にシシュポスと交わっており、オデュッセウスはその子だとされる。オデュッセウスを侮辱する文脈で持ち出される系譜。 (417 「ラエルテスに買われたシシュポスの子」)
ディオメデス
- レムノスに置き去りにされたピロクテテスを連れ戻す役は、出典によって違う。『小イリアス』要約ではディオメデスだが、ソポクレス『ピロクテテス』ではオデュッセウスとネオプトレモスである。同じ出来事の実行者が入れ替わる分かりやすい例。 (『小イリアス』要約 / ソポクレス『ピロクテテス』1-134)
ヘレノス
- パリスの死後、ヘレネをめぐってデイポボスと争って敗れ、トロイアを去ってイダ山にこもる。そこをオデュッセウスに捕らえられ、トロイアが落ちるための条件を明かした。アポロドーロスが挙げる条件はペロプスの骨を持ち帰ること、ネオプトレモスを参戦させること、パラディオンを城内から奪うことの三つ。ソポクレス『ピロクテテス』では、ピロクテテスを連れて来なければ落ちないと予言する。 (アポロドーロス摘要 5.9-10、ソポクレス『ピロクテテス』604-613)
ヘラクレス
- ソポクレスとオウィディウスでは、火を点けたのはポイアスの子ピロクテテス本人で、その礼に弓を受け継ぐ。この弓がのちにトロイア陥落に欠かせないものとなる。 (ソポクレス『ピロクテテス』801-803、オウィディウス『変身物語』9.229-234)
- 関係: gave_gift → philoctetes (ソポクレス『ピロクテテス』801-803 火葬の薪に火を点けた礼に武具(弓)を譲る。オウィディウス『変身物語』9.231-234「ふたたびトロイアの王国を見ることになる矢」)
ネオプトレモス
- ソポクレス『ピロクテテス』(前409)では主役級。オデュッセウスに命じられてピロクテテスを騙すが、途中で耐えられなくなり、奪った弓を返してしまう。父の名を継ぐ者が「嘘をつけない」ことで劇が動く。 (1-134(計略の指示)、1222-1262(弓を返す))
- 関係: companion → odysseus (『オデュッセイア』11.508-509(スキュロスから連れてくる)、ソポクレス『ピロクテテス』全体)
- 関係: companion → philoctetes (ソポクレス『ピロクテテス』では、騙す役を負わされながら最後に良心に従う)
オデュッセウス
- 父はラエルテスではなくシシュポスだとする異伝がある。ソポクレス『ピロクテテス』でピロクテテスはオデュッセウスを「ラエルテスに買われたシシュポスの子」と罵る。 (417。ソポクレス『アイアス』190 の古註にも同じ伝承が引かれる)
ピロクテテス
- ヘラクレスの弓矢を持つ。ヘラクレスの火葬の薪に火をつけた礼に譲り受けたとされる。ホメロスは弓の名手だとは言うが、その弓がヘラクレスのものだとは書かない。 (『ピロクテテス』801-803, 1406-1440 / アポロドーロス 2.7.7)
- ソポクレス『ピロクテテス』(前409)では、迎えに行くのはオデュッセウスとネオプトレモスである。しかも弓だけ奪えばいいと考えるオデュッセウスと、騙すことに耐えられないネオプトレモスが対立し、説得は最後まで失敗する。決着をつけるのは神格化したヘラクレスの登場(デウス・エクス・マキナ)である。 (1-134、1409-1444)
- 蛇に噛まれた場所は伝承で分かれる。ホメロスは「レムノスに残された」とだけ書き、どこで噛まれたかを言わない。アポロドーロスの摘要はテネドス上陸後、アポロンに犠牲を捧げている最中に祭壇から出た水蛇に噛まれたとし、ソポクレスはクリュセの屋根の無い聖所を守る蛇に噛まれたとする。 (『イリアス』2.716-725 / 摘要 3.26-27(テネドスでの犠牲の場)/ 『ピロクテテス』1326-1328(クリュセの聖所の番蛇))
- 置き去りの理由は、傷の悪臭と絶え間ない叫び声が犠牲の儀式の妨げになったからだとされる。戦力としてではなく、耐えがたい存在として捨てられた点が、後にヘラクレスの弓を必要として呼び戻される展開と噛み合っている。 (7-11)
- アポロドーロスでは、ヘラクレスの火葬の薪に火をつけたのはピロクテテスの父ポイアスで、その礼に弓を与えられた。ソポクレスではピロクテテス自身が火をつけたとされる。 (アポロドーロス2.7.7、『ピロクテテス』801-803)
- ソポクレスでは、ネオプトレモスはだましていたことを打ち明けて弓を返し、ピロクテテスがオデュッセウスを射ようとするのを止める。 (1222-1303)
- 関係: enemy → odysseus (置き去りを主導した張本人として憎む(『ピロクテテス』314-316, 1004-1015))
- 関係: companion → neoptolemus (騙されかけた末に信頼を取り戻す)
シシュポス
- 関係: parent → odysseus (異伝。417「ラエルテスに買われたシシュポスの子」)
- 関係: lover → anticleia (異伝。オデュッセウスの実父をシシュポスとする伝承の前提(417))