出典 · 古典期(悲劇・歴史)
縛られたプロメテウス
アイスキュロス(伝) · 前5世紀 · Prometheus Bound
アイスキュロス作とされてきたが、作者性には古くから議論がある。プロメテウスが握る「ゼウスを倒す子を産む女」の秘密(907-927)はテティスの結婚譚に繋がる。
この出典が語っていること
アナンケ
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』で、プロメテウスは、必然の力は打ち負かせないと言い、「技は必然にはるかに劣る」と語る。必然の舵を取るのは誰かと問われると、三つの姿の運命の女神たちと、忘れることのない復讐の女神たちだと答え、ゼウスでさえ定められたことからは逃れられないと言う。 (104-105、511-518(Smyth 英訳))
ダナイデス
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』では、プロメテウスがイオに子孫の運命を予言する中で、エパポスから5代目に50人の乙女がアルゴスへ逃れ、夜中に夫たちを両刃の剣で殺すが、一人だけは夫を殺さない、と語る。 (853-869)
ガイア
- 関係: parent → prometheus (209-210。プロメテウスは母を「テミス、またの名をガイア」と呼ぶ。ヘシオドス(『神統記』507-511)では母はクリュメネで、系図が食い違う)
グライアイ
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』では、ポルキュスの娘たちは三人になり、白鳥の姿の古い乙女たちで、一つの目を共有し、歯も一本しかない。太陽も月も見下ろすことのない土地に住むとされる。 (794-797)
グリュプス
- アイスキュロスの『縛られたプロメテウス』では、プロメテウスがさまようイオに道のりを教える中で、くちばしの鋭い「吠えないゼウスの猟犬」グリュプスと、金の流れる川のほとりに住む一つ目の騎馬の民アリマスポイに近づくなと警告する。 (803-807)
- 関係: servant → zeus (803-804 「くちばしの鋭い、吠えないゼウスの猟犬、グリュプス」)
ヘパイストス
- 関係: enemy → prometheus (1-87。不本意ながらプロメテウスを岩に縛りつける役を負わされる)
イオ
- アブに追われたイオの放浪は、地名の由来譚になっている。アポロドーロスは、最初に着いた湾がイオにちなんでイオニア湾と呼ばれ、トラキアの海峡が「牛(ブース)の渡り(ポロス)」でボスポロスと呼ばれるようになったとする。ところがアイスキュロス『縛られたプロメテウス』でイオの名を負う「ボスポロス」は、イスタンブールの海峡ではなく、黒海北岸のキンメリアのボスポロス(現在のケルチ海峡)である。 (2.1.3 / 『縛られたプロメテウス』729-735。Smyth 訳の注は「牛の渡り」を民間語源とする説を紹介している)
- 関係: lover → zeus (アポロドーロス 2.1.3 / Met. 1.588-600 / 『縛られたプロメテウス』561-886)
- 関係: advisee → prometheus (561-886 岩に縛られたプロメテウスが、イオのこれからの放浪と子孫を予言する)
オケアニス
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』では、オケアノスの娘たちが翼のある車で岩山に飛んで来て合唱隊をつとめる。プロメテウスは彼女たちを「子沢山のテテュスの子、大地をめぐって眠らずに流れる父オケアノスの娘たち」と呼ぶ。 (128-143)
- 関係: visited → prometheus (『縛られたプロメテウス』128-140 岩に縛られたプロメテウスのもとへ合唱隊として訪れる)
オケアノス
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』ではオケアノス自身が舞台に現れ、ゼウスに執り成すから逆らうのをやめよと勧めるが、プロメテウスは巻き込むなと断る。 (284-396)
- 関係: visited → prometheus (284-396 翼ある獣に乗って縛られたプロメテウスを訪ね、ゼウスに逆らうのをやめるよう説く)
プロメテウス
- 『縛られたプロメテウス』では、彼はゼウスを王座から落とす子を産む女神の名を知っており、それを明かさないことでゼウスと対峙する。この秘密の女神がテティスであり、彼女が人間ペレウスに嫁がされた理由になる。 (『縛られたプロメテウス』907-927(名は伏せられる)。ピンダロス『イストミア祝勝歌』8.26-47 ではテミスが同じ予言を告げ、ゼウスとポセイドンが求婚を退く)
- 関係: child → gaia (209-210。「テミス、またの名をガイア」を母と呼ぶ。『神統記』507-511 では母はオケアノスの娘クリュメネ)
- 関係: companion → thetis (907-927。ゼウスを倒す子を産む女(=テティス)の秘密を握っており、これがゼウスとの取引材料になる)
- 関係: enemy → hephaestus (1-87。ヘパイストスが不本意ながらプロメテウスを岩に縛りつける)
テミス
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』では、プロメテウスの母はテミスで、テミスとガイアは「多くの名をもつ一つの姿」だとされる。ヘシオドスでプロメテウスの母はオケアノスの娘クリュメネなので、ここで系譜が大きく入れ替わる。 (18, 209-212, 873-874)
- 関係: parent → prometheus (18, 209-212, 873-874 アイスキュロスはプロメテウスの母をテミスとし、「テミスでありガイアでもある、多くの名をもつ一つの姿」と言わせる。ヘシオドスでは母はクリュメネ)
テティス
- 『縛られたプロメテウス』では、この予言こそプロメテウスが握る秘密であり、彼はゼウスに名を明かさずに対峙する。テティスの結婚がゼウスの支配の存続と直結している。 (907-927。劇中で女神の名は明かされない)
ティタノマキア
- アイスキュロス『縛られたプロメテウス』では、プロメテウスはティタンたちに「力ではなく策略で勝て」と説いたが聞き入れられず、母テミスとともにゼウスの側について勝利に貢献した、と自ら語る。ヘシオドスにはこの経緯はない。 (199-223)
- 関係: participant → kronos (『神統記』630-634, 851。アポロドロス 1.2.1。『縛られたプロメテウス』221-223)
- 関係: participant → prometheus (199-223 ティタンたちに策を説いたが相手にされず、母テミスとともにゼウスの側についた)
- 関係: participant → themis (209-218 力ではなく策略で勝つ者が支配すると予言した)
テュポン
- ピンダロスは、かつてキリキアの洞窟で育った百頭のテュポンが、いまはシチリアのエトナ山と海岸の崖に押さえつけられ、そこから火の流れを噴き上げていると歌う。アイスキュロス『縛られたプロメテウス』でも、エトナの下に押しつぶされたテュポンがいつか火の川を噴き出すと予言される。 (ピンダロス『ピュティア祝勝歌』1.15-28。『縛られたプロメテウス』351-372)