出典 · ローマ期
天文譜
ヒュギヌス(偽ヒュギヌス) · 1〜2世紀 · De Astronomia (Astronomica)
星座ごとに神話を並べた便覧。第2巻が星座譚で、同じ星座に複数の同定説を併記するため、星座神話の異伝を見るのに使う。
この出典が語っていること
アイギス
- ヒュギヌス『天文譜』が伝える説では、ゼウスの乳母は太陽神の娘アイクス(「山羊」)で、顔が恐ろしいため大地がクレタの洞窟に隠していた。ティタンとの戦いの前に、山羊の皮とゴルゴンの首で身を守れと神託を受けたゼウスは、そうして勝ち、のちにこのアイギスをミネルウァ(アテナ)に与えた。 (2.13.7)
- 関係: owned_by → athena (『イリアス』2.446-449、5.738-742、『オデュッセイア』22.297、ヒュギヌス『天文譜』2.13.7 ゼウスがアテナに譲る)
- 関係: participated_in → titanomachy (2.13.7 神託に従い、山羊の皮とゴルゴンの首で身を守ってティタンと戦う)
アマルテイア
- ヒュギヌス『天文譜』は諸説を並べる。オレノスの娘アイクスとヘリケがゼウスの乳母だったという説、メリッセウス王の娘たちが乳の出ないのを補うためにアマルテイアという雌山羊をあてがったというパルメニスコスの説、テミスとニンフのアマルテイアが育て、アマルテイアの飼う山羊が乳を与えたというムサイオスの説。子山羊たちも星にされたという。 (2.13.5-6)
- ヒュギヌスが伝える一説では、ゼウスの乳母は太陽神の娘アイクスで、恐ろしい顔のため大地がクレタの洞窟に隠していた。ゼウスはティタンとの戦いで神託に従い、この山羊の皮とゴルゴンの首で身を守って勝ち、その皮(アイギス)をのちにアテナに与えた。 (2.13.7)
- 関係: foster_parent → zeus (『ゼウス讃歌』48-49、アポロドーロス1.1.7、『祭暦』5.115-121、ヒュギヌス『天文譜』2.13.5-6)
アンピトリテ
- ヒュギヌス『天文詩』によれば、ポセイドン(ネプトゥヌス)がアンピトリテを妻にしようとしたとき、彼女は処女のままでいたくてアトラスのもとへ逃げた。島々を探し回ったイルカが彼女を見つけ、ポセイドンとの結婚を説き伏せて式を取り仕切った。その功績でイルカは星座(いるか座)にされた。 (2.17)
- 関係: visited → atlas (2.17 ポセイドンとの結婚を避けてアトラスのもとへ逃れる)
カドゥケウス
- ヒュギヌス『天文譜』によれば、竪琴の返礼にアポロンから杖を得たメルクリウス(ヘルメス)は、アルカディアへ行く途中、絡み合って争う2匹の蛇のあいだに杖を置いて離れさせ、この杖を平和をもたらすものと定めた。そのためカドゥケウスには2匹の蛇が絡ませてあり、運動競技などでも用いられるという。 (2.7.2)
カシオペイア
- ヒュギヌスの『天文譜』は、エウリピデス、ソポクレスらによれば、カシエピアはネレイスより美しいと誇ったため、椅子に座った姿で星座になったが、その不敬のため、天が回るにつれて、あおむけに運ばれていくように見える、と記す。同書は、一家を記念するため神々がケペウスも星座に加えたとし、アンドロメダは父母の反対を押し切ってペルセウスについて行ったとも書く。 (2.9-2.11(ToposText 所収のグラント英訳))
- 関係: rival → nereids (アポロドーロス2.4.3 美しさを競い、誰よりも美しいと誇る。ヒュギヌス『天文譜』2.10)
ケンタウロス族
- ヒュギヌス『天文譜』は、ケンタウルス座をクロノス(サトゥルヌス)とピリュラの子ケイロンとし、ほかのケンタウロスだけでなく人間にもまさる正しさで、アスクレピオスとアキレウスを育てたために星座にされたと説明する。 (2.38.1)
- 同じ『天文譜』は、射手座をケンタウロスと呼ぶ人が多いが、ケンタウロスは弓矢を使わないという理由でそれを否定する人もいる、と書く。馬の胴にサテュロスの尾を持つ姿とされ、ムーサたちの乳母の子クロトスだとする説を挙げる。 (2.27.1-2)
ケイロン
- 死後、星座になったとされる。ヒュギヌス『天文譜』はケンタウルス座をケイロン(サトゥルヌスとピリュラの子)とし、いて座については「多くはケンタウロスと呼ぶが、弓を使うケンタウロスはいない」として、ムーサイのもとで育ったクロトスの姿だと説明する。いて座をケイロンとする現代の説明は、この二つの星座の混同による。 (『天文譜』2.38(ケンタウルス座=ケイロン)、2.27(いて座=クロトス))
デウカリオン
- 水瓶座を誰とするかについて、ヒュギヌスはガニュメデスとする説と並べて、ヘゲシアナクスがデウカリオンだと言っていることを記す。デウカリオンの治世に天から大量の水が注いだから、という理由。 (2.29(Aquarius))
エリクトニオス
- ヒュギヌスは、エリクトニオスが人間で初めて4頭の馬を戦車に繋いだので、ユピテルが感心して星座の馭者座にした、という説を伝える。アテナの祭祀とアクロポリスの神殿を始めたのも彼だとされる。 (2.13(Heniochus / Auriga))
ヘレ
- ヒュギヌス『天文譜』は、海に落ちたヘレをネプトゥヌスが抱き、パイオン(あるいはエドノス)という子が生まれたという話も伝える。溺れて終わりではない別の結末。 (2.20(Aries))
- ヒュギヌスによれば、おひつじ座はプリクソスとヘレを乗せてヘレスポントスを渡った雄羊で、ネペレ(雲)がその姿を星座にしたとも、雄羊自らが毛皮をプリクソスに残して星々へ昇ったとも(エラトステネス)いう。 (2.20)
- 関係: lover → poseidon (2.20(Aries)。海に落ちたヘレをネプトゥヌスが抱き、パイオン(またはエドノス)を産んだという説)
プリクソス
- ヒュギヌスの『神話集』では、プリクソスが自分で毛皮をマルス(アレス)の神殿に納めた。『天文譜』では、雄羊が自分で金の毛皮を脱いで記念にプリクソスに与えた、という説まで伝える。 (『神話集』3、『天文譜』2.20(Aries))
- プリクソスを運んだ雄羊は、星座の牡羊座になったとされる。 (2.20(Aries))
アスクレピオスの杖
- ヒュギヌス『天文譜』は、へびつかい座を、体に巻きつく蛇を両手に持つ姿とし、多くの天文学者がこれをアスクレピオスとみなしたと書く。死者をよみがえらせた罪でゼウスに雷で打たれたが、アポロンの子であることと医術のゆえに星座にされたという。 (2.14.1、2.14.6)
- 同じ『天文譜』は、アスクレピオスが蛇を持つ理由として、グラウコス(ミノスの子)をよみがえらせるよう命じられて牢にいたとき、杖に這い上がった蛇を杖で打ち殺すと、別の蛇が草をくわえて来て死んだ蛇の頭に置き、その草でグラウコスを生き返らせた、という話を挙げる。医者が蛇を用いるのはこれにならったものだとする。 (2.14.7-8)
- 関係: owned_by → asclepius (パウサニアス2.27.2、『変身物語』15.655-660、ヒュギヌス『天文譜』2.14.7)