しし座の神話
獣の王だから、ゼウスが星にした。ヘラクレスが素手で倒した、最初の仕事の獅子だともいう。
獣の王の星
さらに付け加える人たちもいた。この獅子は、英雄ヘラクレスが最初に挑んだ相手で、彼は武器を持たずにこれを倒した、と。詩人ペイサンドロスをはじめ、多くの人がそう書いている、とヒュギヌスは記す。ヘラクレスの十二の仕事の一つめ、ネメアの獅子である。
ローマ期天文譜ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
尾のそばの、王妃の髪
獅子の尾のそば、おとめ座の近くに、三角に並んだ七つの星がある。ヒュギヌスによれば、数学者コノンと詩人カリマコスは、これをエジプトの王妃ベレニケの髪だと言った。
ローマ期天文譜近現代日本大百科全書(ニッポニカ)
王が戦いに出たとき、王妃は、夫が勝って帰ってきたら自分の髪を切って捧げると誓った。誓いがかなうと、彼女は髪を女神アプロディテの神殿に納めた。ところが翌日、その髪が消えていた。王が機嫌を損ねると、コノンは王に取り入ろうとして、髪は星々のあいだに置かれたのだと言い、まだどの星座の形にも入っていなかった七つの星を指さしてみせた。
ローマ期天文譜
ベレニケは神話の人物ではない。エジプト王プトレマイオス3世の妻で、この話は一部が史実にもとづく、と事典は説明している。この星たちは、いまはかみのけ座という星座になっている。
この話の項目
- ネメアの獅子ペロポネソス半島のネメアを荒らした獅子。刃も矢も通らず、ヘラクレスは素手で絞め殺した。十二の功業の第一で、ヘラクレスがかぶる獅子の皮はこの獅子のものとされることが多い。
- ヘラクレスゼウスとアルクメネの子の英雄。ヘラに憎まれ、母のいとこにあたるエウリュステウスに仕えて数々の難業をこなした。トロイアをトロイア戦争の一世代前に一度攻め落とし、その弓はのちにピロクテテスに渡ってトロイア陥落の鍵になる。
- ヘラクレスの十二の功業ヘラクレスがエウリュステウスの命で果たした一連の難業。ネメアの獅子からケルベロスまでの12という数と順序は、ホメロスには無く、後代に固まったもの。資料によって数え方も中身も揺れる。
- ゼウスオリュンポスの神々の王。クロノスとレアの末子で、父を倒して天を得た。多くの女神・人間の女性との間に子をもうけ、神々と英雄の多くの父になった。トロイア戦争では人間の側に肩入れしつつ、最後は運命の側に立つ。
ほかの星座の話
- おひつじ座金の毛の雄羊が、兄と妹を背に乗せて海を越えた。砂漠で軍勢を水場へ導いた羊だという話もある。
- おうし座王女を背に乗せて海を渡った牡牛は、ゼウスの化けた姿だった。牝牛にされた娘イオだという話もある。
- ふたご座どちらが上かを争わなかった双子の兄弟が、二人並んで星になった。ヘラクレスとアポロンだという説もある。
- かに座怪物ヒュドラと戦うヘラクレスの足に、沼から出てきた蟹がかみついた。その甲羅の上には、ろばと呼ばれる星もある。
- おとめ座人間に愛想をつかして天へ去った正義の女神。父の亡骸を見つけて死んだ娘エリゴネだという話もある。
- てんびん座古いギリシャでは、この星たちはさそり座のはさみだった。天秤と呼んだのはローマの人々である。
- さそり座思い上がった狩人オリオンを刺し殺したさそり。だから今も、さそりが昇るとオリオンは沈んでいく。
- いて座弓を引く、馬の脚の射手は誰なのか。弓を使うケンタウロスはいない、と言う人たちもいた。芸術の女神ムーサたちの友の姿だ、という説もある。
- やぎ座怪物テュポンに襲われた神々は、動物に化けて逃げた。牧神パンは川に飛び込み、半分だけ魚になった。
- みずがめ座瓶から水を注ぐ男は、ゼウスにさらわれた美少年か、大洪水を生き延びた男か。古い星座の本は三つの答えを並べる。
- うお座怪物テュポンから逃げるアプロディテとエロスが、川に飛び込んだ。二人を背に受けたのが、二匹の魚だった。
- へびつかい座太陽の通り道にかかりながら、十二の星座には数えられない星座。蛇を抱えた男は、医術の神とも、麦の種をまく若者を襲った王ともいう。
- オリオン座女神アルテミスは、沖に浮かぶ黒い点を射抜いた。それは、愛した狩人オリオンの頭だった。
- カシオペヤ座海の女神たちより美しいと言い放った王妃は、椅子に座ったまま、頭を下にして空を回り続ける。
- アンドロメダ座英雄ペルセウスに救われた王女は、空の上でも両腕を広げたまま、鎖につながれている。
- ペルセウス座怪物メドゥーサを討った英雄は、見張りの目を奪って湖へ投げ込んだ。空では今も、ちりにまみれて大またに歩いている。
- ペガスス座蹄で泉を開いた天馬は、乗り手が地に落ちたあと、ひとり空へ昇った。この馬は、馬に変えられたケイロンの娘だという話もある。
- こと座赤ん坊のヘルメスが亀の甲羅で作った竪琴は、やがて名手オルペウスの手に渡り、その死のあと空に上げられた。
- はくちょう座鷲に追われるふりをして、女神のひざに飛び込んだ白鳥。その正体はゼウスで、女神の産んだ卵から絶世の美女ヘレネが生まれた。
- おおぐま座北斗七星をふくむ大きな熊は、熊に変えられた娘カリスト。けれども、いちばん初めに星を見た人たちは、これを熊ではなく車だと見ていた。
- わし座美少年ガニュメデスをさらった、ゼウスの鷲。妻を失った王が、忘れられるように鷲にされたのだという話もある。
- こぐま座北極星をしっぽの先にもつ小さな熊は、クレタ島の洞窟で幼いゼウスを育てた乳母だという。フェニキアの船乗りは、この熊を頼りに海を渡った。
- ケフェウス座王女アンドロメダの父、エチオピアの王。婚礼に武器を持って乗り込んできた実の弟を、王は必死にいさめた。
- うしかい座熊を追いかける牛飼い。熊にされた母を知らずに追った息子とも、世界で初めて荷車を作った男ともいう。
- くじら座名前はくじらだが、もとは王女アンドロメダを襲った海の怪物。空の上でも王女に迫り、その父王に押し返されている。