みずがめ座の神話
瓶から水を注ぐ男は、ゼウスにさらわれた美少年か、大洪水を生き延びた男か。古い星座の本は三つの答えを並べる。
水を注ぐ少年
みずがめ座は、瓶から水を注ぐ男の姿をしている。その水の流れは南の空の一匹の魚のところまで届き、魚はそれを口で受けている、とローマ時代のヒュギヌスは星座の本『天文譜』に書いている。
ローマ期天文譜
ほかの二人の男
ヒュギヌスは、別の答えも並べている。ヘゲシアナクスという著述家は、大洪水を生き延びたデウカリオンだと言った。その治世に、空からすさまじい量の水があふれ落ち、「大洪水」と呼ばれるほどになったからである。
ローマ期天文譜ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
エウブロスという著述家は、アッティカの最初の王だとした。人間がまだぶどう酒を知らなかったころ、神々への供え物には水が使われていた。この王は、ぶどう酒が見つかるより前に国を治めていたのだ、と。
ローマ期天文譜ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
この話の項目
- ガニュメデストロイア王家の若者で、人間の中で最も美しいとされた。神々に連れ去られ、ゼウスの酌をする者として不死を与えられる。トロイア戦争の主要人物ではないが、トロイア王家の系譜と、ラオメドンの名馬の由来に関わる。
- ゼウスオリュンポスの神々の王。クロノスとレアの末子で、父を倒して天を得た。多くの女神・人間の女性との間に子をもうけ、神々と英雄の多くの父になった。トロイア戦争では人間の側に肩入れしつつ、最後は運命の側に立つ。
- デウカリオンプロメテウスの子で、ゼウスが起こした大洪水を妻ピュラと二人だけで生き延びた人間。父の助言で箱舟を作り、水が引いたあと背後に石を投げて新しい人間を生み出した。その子ヘレンが「ギリシャ人(ヘレネス)」の名の祖とされる。
- デウカリオンの洪水ゼウスが人間の種族を滅ぼすために起こした大洪水。プロメテウスの子デウカリオンと妻ピュラが箱舟で生き延び、水が引いたあと背後に投げた石から新しい人間が生まれた。二人の子ヘレンが、ギリシャ人(ヘレネス)の名の祖とされる。
ほかの星座の話
- おひつじ座金の毛の雄羊が、兄と妹を背に乗せて海を越えた。砂漠で軍勢を水場へ導いた羊だという話もある。
- おうし座王女を背に乗せて海を渡った牡牛は、ゼウスの化けた姿だった。牝牛にされた娘イオだという話もある。
- ふたご座どちらが上かを争わなかった双子の兄弟が、二人並んで星になった。ヘラクレスとアポロンだという説もある。
- かに座怪物ヒュドラと戦うヘラクレスの足に、沼から出てきた蟹がかみついた。その甲羅の上には、ろばと呼ばれる星もある。
- しし座獣の王だから、ゼウスが星にした。ヘラクレスが素手で倒した、最初の仕事の獅子だともいう。
- おとめ座人間に愛想をつかして天へ去った正義の女神。父の亡骸を見つけて死んだ娘エリゴネだという話もある。
- てんびん座古いギリシャでは、この星たちはさそり座のはさみだった。天秤と呼んだのはローマの人々である。
- さそり座思い上がった狩人オリオンを刺し殺したさそり。だから今も、さそりが昇るとオリオンは沈んでいく。
- いて座弓を引く、馬の脚の射手は誰なのか。弓を使うケンタウロスはいない、と言う人たちもいた。芸術の女神ムーサたちの友の姿だ、という説もある。
- やぎ座怪物テュポンに襲われた神々は、動物に化けて逃げた。牧神パンは川に飛び込み、半分だけ魚になった。
- うお座怪物テュポンから逃げるアプロディテとエロスが、川に飛び込んだ。二人を背に受けたのが、二匹の魚だった。
- へびつかい座太陽の通り道にかかりながら、十二の星座には数えられない星座。蛇を抱えた男は、医術の神とも、麦の種をまく若者を襲った王ともいう。
- オリオン座女神アルテミスは、沖に浮かぶ黒い点を射抜いた。それは、愛した狩人オリオンの頭だった。
- カシオペヤ座海の女神たちより美しいと言い放った王妃は、椅子に座ったまま、頭を下にして空を回り続ける。
- アンドロメダ座英雄ペルセウスに救われた王女は、空の上でも両腕を広げたまま、鎖につながれている。
- ペルセウス座怪物メドゥーサを討った英雄は、見張りの目を奪って湖へ投げ込んだ。空では今も、ちりにまみれて大またに歩いている。
- ペガスス座蹄で泉を開いた天馬は、乗り手が地に落ちたあと、ひとり空へ昇った。この馬は、馬に変えられたケイロンの娘だという話もある。
- こと座赤ん坊のヘルメスが亀の甲羅で作った竪琴は、やがて名手オルペウスの手に渡り、その死のあと空に上げられた。
- はくちょう座鷲に追われるふりをして、女神のひざに飛び込んだ白鳥。その正体はゼウスで、女神の産んだ卵から絶世の美女ヘレネが生まれた。
- おおぐま座北斗七星をふくむ大きな熊は、熊に変えられた娘カリスト。けれども、いちばん初めに星を見た人たちは、これを熊ではなく車だと見ていた。
- わし座美少年ガニュメデスをさらった、ゼウスの鷲。妻を失った王が、忘れられるように鷲にされたのだという話もある。
- こぐま座北極星をしっぽの先にもつ小さな熊は、クレタ島の洞窟で幼いゼウスを育てた乳母だという。フェニキアの船乗りは、この熊を頼りに海を渡った。
- ケフェウス座王女アンドロメダの父、エチオピアの王。婚礼に武器を持って乗り込んできた実の弟を、王は必死にいさめた。
- うしかい座熊を追いかける牛飼い。熊にされた母を知らずに追った息子とも、世界で初めて荷車を作った男ともいう。
- くじら座名前はくじらだが、もとは王女アンドロメダを襲った海の怪物。空の上でも王女に迫り、その父王に押し返されている。