ペルセウス座の神話
怪物メドゥーサを討った英雄は、見張りの目を奪って湖へ投げ込んだ。空では今も、ちりにまみれて大またに歩いている。
星になった二つの理由
ペルセウスが星になった理由として、ローマ時代のヒュギヌスが星座の本『天文譜』で挙げるのは二つ。名高い家の生まれであること、そして、世にもまれなやり方で母に宿った子であることだ。閉じ込められた母のもとへ、ゼウスが黄金の雨となって降り注いだ、という生まれである。
ローマ期天文譜ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
神々から授かった道具
島の王の命令で、怪物ゴルゴンの首を取りに行くことになったとき、ペルセウスをかわいがっていたヘルメスが、翼のあるサンダルとつばの広い帽子を与えた。ほかに、かぶれば向き合った相手からも見えなくなる兜も手に入れた。
ローマ期天文譜ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
ギリシャ人はこれを「アイドスの兜」と呼んだ。それを、冥界の神の兜を借りたのだと解釈する人たちがいるが、まったくの見当違いで、学のある人なら誰も認めない、とヒュギヌスは言い切っている。一方、アポロドーロスの神話集は、それを冥界の王ハデスの帽子だとしている。
ローマ期天文譜ローマ期ビブリオテーケー(ギリシア神話)
湖に投げ込まれた一つの目
ヒュギヌスが悲劇作家アイスキュロスの劇から引く筋は、よく知られた形と少し違う。ゴルゴンたちには、グライアイという見張り役がいた。彼女たちは一つしかない目を順番に受け渡し、目を持っている者が見張りに立った。
ローマ期天文譜
ペルセウスは、その目が一人から次の一人へ手渡される瞬間をねらって奪い取り、トリトニスの湖に投げ込んでしまった。見張りが見えなくなれば、あとはたやすい。眠り込んでいたゴルゴンを、彼は難なく討ち取った。その首は、女神アテナが自分の胸に据えたという。
ローマ期天文譜
ただしエウヘメロスは、ゴルゴンを討ったのはアテナ自身だと言っている、とヒュギヌスは書き添えている。
ローマ期天文譜
ちりにまみれて歩く英雄
前3世紀の詩人アラトスは、星座の詩『星辰譜』で、空のペルセウスをこう描く。妻アンドロメダの足をたどれば、彼に行き着く。その足は、いつも彼の肩の上にある。彼は北の空で、ほかの誰よりも背が高い。目の前の何かを追うように、ゼウスの空をちりにまみれて大またに進んでいく。その左の腿のそばには、プレイアデスの星々が小さく身を寄せ合っているのだという。
ヘレニズム星辰譜(パイノメナ)
この話の項目
- ペルセウスゼウスとダナエの子。見た者を石に変えるゴルゴンのメドゥサの首を取り、帰り道で海の怪物からアンドロメダを救った。ヘラクレスの曾祖父にあたり、ペルシア人の名の由来とする伝えもある。
- メドゥサ三姉妹の怪物ゴルゴンのうち、ただ一人死すべき者。見た者を石に変える首をペルセウスに斬られ、その首から天馬ペガソスが生まれた。首はアテナの盾に付けられた。
- グライアイ海の老神ポルキュスとケトの娘たちで、生まれたときから白髪の老婆。ゴルゴンの姉妹にあたる。一つの目と一つの歯を回して使うという有名な姿は後代の話で、人数も二人とも三人とも伝わる。ペルセウスはその目を奪って、ゴルゴン退治への道を聞き出す。
- ヘルメス神々の伝令であり、境界と旅人と盗人と商人の神。生まれたその日に竪琴を発明し、アポロンの牛を盗んだ。魂を冥界へ導く役目も担い、生と死、神と人の境を行き来する神として描かれる。
- アテナゼウスの頭から武装して生まれた知恵と戦術の女神。トロイア戦争ではギリシャ側、とりわけディオメデスとオデュッセウスの後ろ盾となる。荒ぶる戦のアレスに対し、計略と工芸を司る戦の神として対置される。
- アンドロメダエチオピア王ケペウスとカシオペイアの娘。母が海のニンフより美しいと誇ったため、海の怪物への生贄として岩に縛られ、通りかかったペルセウスに救われて妻となった。一家そろって星座になっている。
- ダナエアルゴス王アクリシオスの娘で、ペルセウスの母。孫に殺されるという神託を恐れた父に閉じ込められたが、黄金の雨となったゼウスが通って身ごもった。のちに息子とともに箱に入れられて海に流された。
ほかの星座の話
- おひつじ座金の毛の雄羊が、兄と妹を背に乗せて海を越えた。砂漠で軍勢を水場へ導いた羊だという話もある。
- おうし座王女を背に乗せて海を渡った牡牛は、ゼウスの化けた姿だった。牝牛にされた娘イオだという話もある。
- ふたご座どちらが上かを争わなかった双子の兄弟が、二人並んで星になった。ヘラクレスとアポロンだという説もある。
- かに座怪物ヒュドラと戦うヘラクレスの足に、沼から出てきた蟹がかみついた。その甲羅の上には、ろばと呼ばれる星もある。
- しし座獣の王だから、ゼウスが星にした。ヘラクレスが素手で倒した、最初の仕事の獅子だともいう。
- おとめ座人間に愛想をつかして天へ去った正義の女神。父の亡骸を見つけて死んだ娘エリゴネだという話もある。
- てんびん座古いギリシャでは、この星たちはさそり座のはさみだった。天秤と呼んだのはローマの人々である。
- さそり座思い上がった狩人オリオンを刺し殺したさそり。だから今も、さそりが昇るとオリオンは沈んでいく。
- いて座弓を引く、馬の脚の射手は誰なのか。弓を使うケンタウロスはいない、と言う人たちもいた。芸術の女神ムーサたちの友の姿だ、という説もある。
- やぎ座怪物テュポンに襲われた神々は、動物に化けて逃げた。牧神パンは川に飛び込み、半分だけ魚になった。
- みずがめ座瓶から水を注ぐ男は、ゼウスにさらわれた美少年か、大洪水を生き延びた男か。古い星座の本は三つの答えを並べる。
- うお座怪物テュポンから逃げるアプロディテとエロスが、川に飛び込んだ。二人を背に受けたのが、二匹の魚だった。
- へびつかい座太陽の通り道にかかりながら、十二の星座には数えられない星座。蛇を抱えた男は、医術の神とも、麦の種をまく若者を襲った王ともいう。
- オリオン座女神アルテミスは、沖に浮かぶ黒い点を射抜いた。それは、愛した狩人オリオンの頭だった。
- カシオペヤ座海の女神たちより美しいと言い放った王妃は、椅子に座ったまま、頭を下にして空を回り続ける。
- アンドロメダ座英雄ペルセウスに救われた王女は、空の上でも両腕を広げたまま、鎖につながれている。
- ペガスス座蹄で泉を開いた天馬は、乗り手が地に落ちたあと、ひとり空へ昇った。この馬は、馬に変えられたケイロンの娘だという話もある。
- こと座赤ん坊のヘルメスが亀の甲羅で作った竪琴は、やがて名手オルペウスの手に渡り、その死のあと空に上げられた。
- はくちょう座鷲に追われるふりをして、女神のひざに飛び込んだ白鳥。その正体はゼウスで、女神の産んだ卵から絶世の美女ヘレネが生まれた。
- おおぐま座北斗七星をふくむ大きな熊は、熊に変えられた娘カリスト。けれども、いちばん初めに星を見た人たちは、これを熊ではなく車だと見ていた。
- わし座美少年ガニュメデスをさらった、ゼウスの鷲。妻を失った王が、忘れられるように鷲にされたのだという話もある。
- こぐま座北極星をしっぽの先にもつ小さな熊は、クレタ島の洞窟で幼いゼウスを育てた乳母だという。フェニキアの船乗りは、この熊を頼りに海を渡った。
- ケフェウス座王女アンドロメダの父、エチオピアの王。婚礼に武器を持って乗り込んできた実の弟を、王は必死にいさめた。
- うしかい座熊を追いかける牛飼い。熊にされた母を知らずに追った息子とも、世界で初めて荷車を作った男ともいう。
- くじら座名前はくじらだが、もとは王女アンドロメダを襲った海の怪物。空の上でも王女に迫り、その父王に押し返されている。