父アクリシオスは地下に青銅の部屋を造ってダナエを閉じ込めたが、ゼウスが黄金の流れとなって屋根から膝に注ぎ込み、彼女は身ごもった。ピンダロスもペルセウスを「自ら流れる黄金から生まれた」と呼ぶ。
ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

Δανάη人間
黄金の雨を受けるダナエ。ヤン・ホッサールトの作。 『ダナエ』 ヤン・ホッサールト 1527年Public domain
地下の青銅の部屋に閉じ込められた娘のもとへ、屋根から黄金の雨が降り注いだ。
メドゥサ退治の英雄ペルセウスは、こうして生まれた。その母がダナエである。父に閉じ込められ、海に流され、それでも生き延びた母の物語を、はじめから見ていこう。
ダナエの父は、ギリシャのアルゴスの王だった。男の子に恵まれない王が神託を仰ぐと、思いがけない答えが返ってきた。おまえの娘が男の子を産み、その子がおまえを殺す。恐れた王は、地下に青銅の部屋を造り、娘をそこに閉じ込めて見張らせた。孫さえ生まれなければ、殺されることもない。
けれども、神々の王の目はごまかせなかった。アポロドーロスによれば、ゼウスは黄金の流れに姿を変え、屋根からダナエの膝に注ぎ込んだ。ダナエは男の子を産んだ。これがペルセウスである。詩人ピンダロスも、ペルセウスを、ひとりでに流れる黄金から生まれた者と呼んでいる。アポロドーロスは一方で、娘をたぶらかしたのは王の兄弟だったという説も書き添えている。
やがて王は、娘に子どもがいることを知った。ゼウスの子だとは信じない。王は娘と赤ん坊を箱に入れ、海へ流した。

箱は、エーゲ海の小島に流れ着いた。拾い上げたのは、島の王の弟で、彼が男の子を育てた。
年月が流れ、今度は島の王がダナエに目をつけた。けれども、すっかり大人になった息子がそばにいては手が出せない。王は策を巡らした。仲間を集めて結婚祝いの贈り物を出させることにし、ペルセウスが、ゴルゴンの首でも持ってきてみせる、と口をすべらせると、それなら持ってこい、と命じた。見た者を石に変える怪物メドゥサの首である。
息子が遠い旅に出ているあいだ、ダナエは王の乱暴から逃れて、育ての親とともに神殿の祭壇にすがっていた。帰ってきたペルセウスは、宮殿で仲間と宴を開いていた王の前に進み出て、顔をそむけたままメドゥサの首を突き出した。王も仲間も、その場の姿のまま石になった。
ペルセウスは母と新しい妻を連れて、祖父の国アルゴスへ向かった。孫が来ると知った祖父は、神託を恐れて国を逃れる。ところが、たまたま出場した遠い国の競技会で、ペルセウスの投げた円盤がその場に居合わせた祖父の足に当たり、祖父はその場で死んだ。神託は、誰も望まない形でかなった。
『イリアス』は、この母について多くを語らない。『イリアス』で、ゼウスが妻ヘラに向かって自分の過去の恋を並べ立てる場面に、くるぶしの美しい娘ダナエとして一度だけ名が出てくる。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ピンダロス『祝勝歌集』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
父アクリシオスは地下に青銅の部屋を造ってダナエを閉じ込めたが、ゼウスが黄金の流れとなって屋根から膝に注ぎ込み、彼女は身ごもった。ピンダロスもペルセウスを「自ら流れる黄金から生まれた」と呼ぶ。
ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アポロドーロスは同じ箇所で、ダナエを誘惑したのは叔父プロイトスで、それがアクリシオスとプロイトスの兄弟の争いのもとになった、という説も併記している。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
子がゼウスの子だと信じないアクリシオスは、母子を箱に入れて海に流した。箱はセリポス島に流れ着き、ディクテュスが子を育てた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ペルセウスが母とアンドロメダを連れてアルゴスへ向かうと、アクリシオスは神託を恐れて国を去ったが、ラリッサの競技会でペルセウスの投げた円盤が足に当たって死んだ。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『イリアス』では、ゼウスがヘラに向かって過去の恋を数え上げる場面で「くるぶしの美しいアクリシオスの娘ダナエ」として名が出る。黄金の雨や幽閉の話は語られない。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
セリポス王ポリュデクテスがダナエに言い寄り、邪魔なペルセウスをゴルゴン退治に送り出した。戻ったペルセウスは、祭壇に逃れていた母を救うためメドゥサの首で王とその仲間を石に変えた。
ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『イリアス』14.319「アクリシオスの娘ダナエ」、アポロドーロス2.2.2(母はラケダイモンの娘エウリュディケ)、ヒュギヌス63(母はアガニッペ)