アポロドーロスでは、ポリュデクテスへの献上品として「ゴルゴンの首でも惜しまない」と口走ったのが発端。ヘルメスとアテナの導きで、目と歯を一つずつ共有する老婆グライアイからニンフの居場所を聞き出し、翼のサンダル、袋(キビシス)、姿を消すハデスの帽子を得た。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

Περσεύς英雄
メドゥーサの首を高く掲げるペルセウス。チェッリーニの青銅像。 『メドゥーサの首を持つペルセウス』 ベンヴェヌート・チェッリーニ 写真は2011年 ロッジア・デイ・ランツィ(フィレンツェ)。写真 JebulonCC0
毎年8月、夏の夜空に流れ星が集中して見える「ペルセウス座流星群」。その名のもとになった星座の英雄は、見た者を石に変える怪物メドゥサの首を取った男である。
物語は、一つの神託から始まる。ギリシャ南部アルゴスの王が、どうすれば男の子を授かるかと神に尋ねると、答えは思いもよらないものだった。お前の娘が産む男の子が、お前を殺すだろう。
恐れた王は、地下に青銅の部屋を造り、娘ダナエをそこに閉じ込めた。ところが屋根から黄金の雨が流れ込み、娘の膝に降り注いだ。黄金の雨に姿を変えたゼウスである。生まれた男の子がペルセウスだった。
王は、娘がゼウスの子を産んだという話を信じなかった。母と赤子を箱に入れ、海へ流した。箱はある島に流れ着き、島の王の兄弟ディクテュスに拾われて、ペルセウスはその家で育った。

やがて島の王が母ダナエに言い寄るようになる。だが大きく育った息子がそばにいて、手が出せない。王は一計を案じた。友人たちを集め、ある姫への婚礼の贈り物を出し合おうと持ちかけたのだ。その席でペルセウスは口走ってしまう。見た者を石に変える怪物ゴルゴンの首だって惜しまない、と。王は他の者には馬を出させ、ペルセウスには本当にゴルゴンの首を持って来いと命じた。
ここから、神々の手助けが始まる。ペルセウスはヘルメスとアテナに導かれて、ゴルゴンの姉妹にあたる三人の老婆を訪ねた。生まれたときから老婆で、目も歯も三人で一つずつしかなく、それを順番に回して使っている。ペルセウスはその目と歯を横取りし、返してほしければ道を教えろと迫った。

老婆たちが教えたのは、ニンフたちの住みかだった。ペルセウスはそこで、空を飛ぶ翼のサンダル、首を入れる袋、かぶると姿が見えなくなる冥界の王ハデスの帽子を手に入れる。ヘルメスからは、硬い金属の鎌も受け取った。
大洋の果てで、ゴルゴンの三姉妹は眠っていた。頭には竜の鱗がからみつき、猪のような大きな牙、青銅の手、黄金の翼を持ち、その姿を見た者は石になる。三人のうち、死ぬ運命にあるのはメドゥサだけだった。ペルセウスは顔をそむけ、青銅の盾に映る姿を見ながら、アテナに手を導かれて首を斬り落とした。切り口からは、翼のある馬ペガソスが飛び出した。目を覚ました姉たちが追ってきたが、帽子をかぶったペルセウスの姿は見えなかった。

ローマの詩人オウィディウスは、帰り道にもう一つの場面を加えている。日が暮れて、ペルセウスは世界の西の果て、天を支える巨人アトラスの国に降りた。そこには黄金のりんごが実る木があった。ゼウスの息子がやって来てりんごを奪っていく、という予言を覚えていたアトラスは、ゼウスの子だと名乗る若者に宿を貸さず、力ずくで追い払おうとする。ペルセウスは顔をそむけ、メドゥサの首を差し出した。巨人のひげと髪は森に、肩と腕は尾根に、頭は峰になり、アトラスは大きな山になった。
帰り道、エチオピアの海岸で、ペルセウスは岩に縛りつけられた王女アンドロメダを見つける。オウィディウスによれば、はじめは大理石の像かと思った。風に髪が揺れ、目から涙がこぼれるのを見て、生きた娘だと気づいたという。母である王妃が、自分は海の女神たちより美しいと自慢したため、怒った女神たちに味方した海の神ポセイドンが、洪水と海の怪物を送り込んでいた。神託は、王女を怪物に差し出せば災いは収まると告げ、父王は民に迫られて娘を岩につないだのだった。ペルセウスは、救ったら妻にもらうという約束を王と交わし、怪物を倒して王女を解き放った。王女の元の婚約者が仲間とともに襲ってきたが、ペルセウスがメドゥサの首を見せると、全員がそのまま石になった。

島に戻ると、母と育ての親は王の乱暴から逃れて祭壇にすがっていた。ペルセウスは王の館に乗り込み、顔をそむけて首を突き出す。居並ぶ者たちは、そのときの姿勢のまま石になった。ペルセウスは育ての親を島の王に据え、サンダルと袋と帽子をヘルメスに返し、首はアテナに捧げた。アテナはそれを自分の盾の真ん中にはめ込んだ。

残るは、あの神託である。ペルセウスが会いに来ると聞いた祖父は、国を捨てて逃げた。ところがある町の競技会に出たペルセウスが円盤を投げると、それが観客の祖父の足に当たり、祖父はその場で死んだ。神託は当たった。ペルセウスは、自分の手で死なせた人の国を継ぐことを恥じ、よその国の王と国を取り替えた。そして、のちに総大将アガメムノンの都となるミュケナイに城壁を築いた。
アンドロメダとのあいだには何人もの子が生まれ、その孫の代に英雄ヘラクレスが生まれる。ヘラクレスに12の難業を命じた王も、同じペルセウスの子孫だった。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ヘシオドス『神統記』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』、小学館『デジタル大辞泉』
アポロドーロスでは、ポリュデクテスへの献上品として「ゴルゴンの首でも惜しまない」と口走ったのが発端。ヘルメスとアテナの導きで、目と歯を一つずつ共有する老婆グライアイからニンフの居場所を聞き出し、翼のサンダル、袋(キビシス)、姿を消すハデスの帽子を得た。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
眠っているゴルゴンのうち不死でないメドゥサだけを狙い、顔をそむけて青銅の盾に映る姿を見ながら、アテナに手を導かれて首を斬った。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
「娘の子に殺される」という神託を恐れた祖父アクリシオスは逃げたが、ラリッサの競技会でペルセウスが投げた円盤が足に当たって死んだ。神託は当たった。ペルセウスはアルゴスを継ぐことを恥じてティリュンスと交換し、ミデアとミュケナイを城壁で固めた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アポロドーロスとオウィディウスのペルセウスは、翼のサンダルで空を飛ぶ。ペガソスはメドゥサの首から生まれるが、ペルセウスはそれに乗らない。
オウィディウス『変身物語』 8年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
娘の子に殺されるという神託を受けたアルゴス王アクリシオスは、娘ダナエを地下の青銅の部屋に閉じ込めた。ゼウスが屋根から黄金の流れとなって膝に注ぎ込み、ペルセウスが生まれた(プロイトスに誘惑されたという説も併記)。王はゼウスの子だと信じず、母子を箱に入れて海に流し、箱はセリポス島に着いてディクテュスに拾われた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
エチオピア王ケペウスの妃カッシエペイアがネレイスたちより美しいと誇ったため、ポセイドンが洪水と怪物を送った。アンモンの神託に従い王女アンドロメダが岩に縛られた。ペルセウスは救えば妻にもらう約束をして怪物を倒し、婚約者だった王の弟ピネウスの一味をゴルゴンの首で石にした。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
セリポスに戻ったペルセウスは、祭壇に逃れていた母とディクテュスを見つけ、ポリュデクテスの館で首を見せて一同をその姿勢のまま石にした。ディクテュスを王にし、サンダル・袋・帽子はヘルメスに、首はアテナに渡した。アテナは首を盾の中央に付けた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
毎年8月に極大となるペルセウス座流星群は、放射点がペルセウス座にあることからの名。
ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)、小学館『デジタル大辞泉』 随時改訂
オウィディウスでは、西の果てで宿を求めたペルセウスを、ゼウスの子が黄金のりんごを奪うという予言を恐れたアトラスが追い払おうとし、ペルセウスがメドゥサの首を見せてアトラスを山に変える。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
オウィディウスでは、岩に縛られたアンドロメダを、ペルセウスは初め大理石の像だと思い、風に揺れる髪と流れる涙で生身の娘だと気づく。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
『イリアス』では、ゼウスが過去の恋を数え上げる場面で「ダナエが生んだ、あらゆる人に抜きん出たペルセウス」と名前が出るだけ。ゴルゴンの首はアテナのアイギスやアガメムノンの盾に描かれるが、ペルセウスの手柄とは結びつけられていない。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
メドゥサの首を斬ったことはヘシオドスが語り、ピンダロスは首を持ち帰ってセリポス島の王ポリュデクテスへの復讐に使ったことまで歌う。ピンダロスはペルセウスを「自ら流れる黄金から生まれた」とも呼ぶ。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃、ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半
ヘロドトスは、ペルセウスとアンドロメダの子ペルセスがケペウスのもとに残され、ペルシア人の名はこのペルセスに由来すると伝える。アポロドーロスも同じ話を「言われている」として載せる。
ヘロドトス『歴史』 前430年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ペルセウスとアンドロメダの子エレクトリュオンの娘がアルクメネ、ステネロスの子がエウリュステウス。ヘラクレスを苦しめたエウリュステウスも、ヘラクレス自身も、ペルセウスの子孫である。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
2.4.5 子エレクトリュオンの娘
2.4.1
アポロドーロス2.4.3、『変身物語』4.736-738 ペルセウスを婿として迎える
アポロドーロス2.4.4 ラリサの葬送競技で円盤が足に当たる。パウサニアス2.16.2 気づかずに円盤の進路へ入る。ヒュギヌス63 セリポスのポリュデクテスの葬送競技で風にあおられた円盤が頭に当たる
ペルセウス座流星群毎年8月12〜13日ごろに極大を迎える流星群で、放射点がペルセウス座にあることからの名。英語 Perseid は1867年から見られ、イタリアの天文学者スキアパレッリが1866年に用いたラテン語 Perseides(「ペルセウスの娘たち」の形)に由来する。母天体はスイフト・タットル彗星。
ペルセウス座 / アルゴル北の空には、怪物メドゥーサを退治した英雄ペルセウスの星座もある。ローマ時代のヒュギヌスの『天文譜』は、彼が星になった理由を、家柄の尊さと、ふつうではない生まれ方のためだと書き、退治の道具立てを数え上げる。ヘルメスからもらった翼のあるサンダルと帽子、そしてかぶると姿が見えなくなる兜。現代の星座の絵では、ペルセウスは切り取ったメドゥーサの首を手に下げていて、その首にあたるのがアルゴルという星だ。アルゴルはアラビア語で「悪魔」の意味で、英語では14世紀後半から見える。ただし語源辞典は、そう呼ばれたのはおそらく首の絵のせいではなく、3日ごとに目に見えて明るさが変わるという、ほかの明るい星にはない性質のためだろうと書いている。