ギリシャ神話の地図
メドゥサ母ポセイドン父ペルセウス英雄ベレロポン乗り手アテナ授け手キマイラ獲物ゼウス主人ムーサ泉の女神
翼を広げて岩の上に立ち上がるペガサス。ルドンの絵。

ペガソス

Πήγασος怪物

翼を広げて岩の上に立ち上がるペガサス。ルドンの絵。 『ペガサス』 オディロン・ルドン 1914年Public domain

ペガサスといえば、翼のある馬。夜空の星座の名にも、スマートフォンをねらうスパイウェアの名にもなっている。

19世紀の星座カードに描かれたペガスス座。星の並びに合わせて、翼のある馬が逆さまに描かれている。
19世紀の星座カードに描かれたペガスス座。星の並びに合わせて、翼のある馬が逆さまに描かれている。『ペガスス座とこうま座(星座カード『ウラニアの鏡』より)』 シドニー・ホール(版画) 1825年ごろ National Museums of Scotland collectionsPublic domain

ギリシャ神話での名はペガソス。この天馬は、首を斬られた怪物の体から生まれた。

見た者を石に変える蛇髪の怪物メドゥサ。英雄ペルセウスがその首を斬り落としたとき、切り口から二つのものが飛び出した、と『神統記』は語る。一つは黄金の剣を持つ戦士、もう一つが翼のある馬ペガソスだった。アポロドーロスはもっとはっきり書いている。ペガソスは、メドゥサと海の神ポセイドンの子である。ポセイドンは馬の神でもあった。

首を斬られた怪物の体から、翼のある馬と黄金の剣の戦士が飛び出す。右で、英雄ペルセウスが怪物の首を掲げている。
首を斬られた怪物の体から、翼のある馬と黄金の剣の戦士が飛び出す。右で、英雄ペルセウスが怪物の首を掲げている。『ペルセウス連作 メドゥーサの死 I』 エドワード・バーン=ジョーンズ 1882年Public domain

生まれたペガソスは、地上にとどまらなかった。『神統記』によれば、すぐに大地を離れて神々のもとへ飛び去り、ゼウスの館に住んで、雷鳴と稲妻を運ぶ役についた。

ところが地上には、この馬に乗りたいと願う若者がいた。コリントスの英雄ベレロポンである。詩人ピンダロスは、その苦労を描いている。ベレロポンは泉のほとりで何度もペガソスを捕まえようとしたが、どうしても手なずけられない。土地の予言者に言われて、女神アテナの祭壇で一夜を明かすと、夢に女神が現れた。眠っているのか、この馬の魔よけを取りなさい、と言って黄金の手綱を差し出す。跳ね起きると、手綱は本当に枕元にあった。

手綱をかけると、天馬はおとなしくなった。ベレロポンは青銅の鎧を着てその背に乗り、冷たい空の上から攻めかかった。弓を操る女だけの軍勢アマゾン、火を吐く怪物キマイラ、山の民。『神統記』も、キマイラを討ったのはペガソスとベレロポンだとしている。

天馬にまたがった英雄が、空の上から怪物キマイラを槍で突く。
天馬にまたがった英雄が、空の上から怪物キマイラを槍で突く。『ペガソスに乗ってキマイラを討つベレロポン』 2〜3世紀 ロラン美術館(フランス・オータン)Public domain

ただし、『イリアス』の語るベレロポンの冒険には、ペガソスは出てこない。『イリアス』では、彼は神々のしるしに従ってキマイラを倒した、とだけある。天馬と英雄を組にして語るのは、『神統記』からである。

ベレロポンの最期について、ピンダロスは口をつぐむ。別の詩では、英雄が天の神々の集いに加わろうとし、ペガソスに振り落とされたと書いている。英雄は地に落ち、ペガソスはオリュンポスにあるゼウスの古い厩に迎えられた。

ローマの詩人オウィディウスは、もう一つの話を伝えている。ペガソスの蹄が山の岩を打つと、そこから新しい泉が湧き出した。芸術の女神ムーサたちの住む山の泉で、女神アテナがわざわざ見物にやってくるほどの名所になった。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ヘシオドス『神統記』、ピンダロス『祝勝歌集』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』、小学館『デジタル大辞泉』

この物語の人々

こういう風にも語られている

ヘシオドス自身が名の由来を述べていて、「オケアノスの泉(pēgai)のほとりで生まれたからその名がある」とする。etymonline はこの説明を民間語源の可能性があるとし、語尾はギリシャ語らしくないと指摘する。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)

etymonline は近年の研究として、アナトリアのルウィ語の雷の神ピハッサッシの名とよく似ており、ゼウスの雷を運ぶペガソスはその神の姿を受け継いだものだという見方を紹介している。

ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)

ローマ以後の語り

オウィディウスでは、ペガソスの蹄が岩を打って新しい泉が湧き、ムーサたちのもとの名所となった。ミネルウァ(アテナ)がわざわざ見物に来る。

オウィディウス『変身物語』 8年頃

もっと詳しく

ヘシオドスでは、ペルセウスがメドゥサの首を斬ると、そこからクリュサオルとペガソスが飛び出した。ポセイドンの子としては、アポロドーロスが「メドゥサとポセイドンの子」とはっきり書く。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

『イリアス』のベレロポンの話にペガソスは出てこない。キマイラを倒したのは「神々のしるしに従って」とだけ語られる。ペガソスとベレロポンを組にするのはヘシオドスから。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ヘシオドス『神統記』 前700年頃

ピンダロスでは、ベレロポンは泉のほとりでペガソスを捕まえようとして苦労していたが、夢にアテナが現れて黄金の手綱を授け、目覚めると本当に手綱があった。

ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半

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天の神々の集いに加わろうとしたベレロポンを、ペガソスは振り落とした。ペガソス自身はゼウスの古い厩に迎えられる。

ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半

ベレロポンは黄金の手綱でペガソスを捕らえると青銅の鎧で乗り、空からアマゾン、キマイラ、ソリュモイ人を攻めた。ピンダロスはベレロポンの死については黙すると言い、ペガソスはゼウスの古い厩にいるとだけ歌う。

ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半

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Pegasus(ペガサス)ペガソスは古代から北天の星座の名でもある(etymonline)。英語読みの「ペガサス」は、デジタル大辞泉ではペガソスの英語名とされ、スマートフォンを標的にするスパイウェアの名にもなっている。

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このページの出典(6件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  3. 前5世紀前半ピンダロス『祝勝歌集』
  4. 8年頃オウィディウス『変身物語』
  5. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  6. 2001年〜(2026年9月閲覧)ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』