アポロドーロスでも、首が斬られるとゴルゴン(メドゥーサ)から翼の馬ペガソスと、ゲリュオンの父クリュサオルが飛び出し、どちらもポセイドンの子とされる。ゲリュオンは、腰で一つにつながり脇腹と腿から三つに分かれた三人の男の体をもち、オケアノスの近くの島エリュテイア(今のガデイラ)に住んでいた、と書かれる。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

Χρυσάωρ怪物
首を斬られたメドゥーサの体から、ペガソスとクリュサオルが現れる。剣を持ったペルセウスがメドゥーサの首を掲げる(画中に各人物の名が書かれている)。エドワード・バーン=ジョーンズの作。 『ペルセウス連作 メドゥーサの死 I』 エドワード・バーン=ジョーンズ 1882年Public domain
漫画『聖闘士星矢』には、海将軍クリュサオルのクリシュナという戦士が出てくる。フィギュアを出しているバンダイの商品ページは、この戦士の武器を、邪悪を刺し貫く黄金の槍と紹介している。
ギリシャ神話のクリュサオルも、黄金の武器と切り離せない。生まれたとき、両手に黄金の剣を握っていたのだから。そして、あの天馬ペガサスとは、同じときに同じ母から生まれた兄弟だった。
ペガサスの陰に隠れがちなこの兄弟の話を、生まれたところから見ていこう。
ヘシオドスの『神統記』によれば、大河オケアノスの向こう、夜の国に近い果ての地に、ゴルゴンと呼ばれる三姉妹が住んでいた。二人は不死で年も取らなかったが、メドゥーサだけは死すべき身だった。海の神ポセイドンは、春の花が咲く柔らかな草原で、このメドゥーサと愛をかわした。
英雄ペルセウスがメドゥーサの首を斬り落とすと、その首から、偉大なクリュサオルと、翼のある馬ペガソス(ペガサス)が飛び出した。ヘシオドスは名前の由来も書いている。ペガソスはオケアノスの泉のそばで生まれたから、クリュサオルは両手に黄金の剣を握っていたから、その名で呼ばれるのだ、と。
ペガソスは地上を離れて神々のもとへ飛び去り、ゼウスの館に住んで、雷と稲妻を運ぶようになった。クリュサオルは地上に残り、オケアノスの娘カリロエと結ばれた。二人のあいだに生まれたのが、三つの頭をもつゲリュオン。人間の中で最も強い者だった。
ゲリュオンは、大河オケアノスの向こうの島エリュテイアで、赤い牛の群れを飼っていた。英雄ヘラクレスは、この牛を奪いに行き、牛番と番犬を殺し、ゲリュオンを討って、牛の群れを追っていった。アポロドーロスの神話集は、ゲリュオンを、腰のところで一つにつながった三人の男の体をもつ姿で描き、エリュテイアの島は、今はガデイラと呼ばれている、と書く。
クリュサオル自身の手柄を語る話は、ほとんど残っていない。ローマの詩人オウィディウスの『変身物語』でも、メドゥーサ退治を語るペルセウスは、母の血から生まれた、翼で飛ぶペガソスとその兄弟、と言うだけで、名前さえ出さない。天へ昇った兄弟と、ヘラクレスに討たれた息子のあいだで、黄金の剣を握って生まれたこの者は、静かに系図の中に立っている。
この物語の出典: ヘシオドス『神統記』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、BANDAI SPIRITS(バンダイ)『魂ウェブ「聖闘士聖衣神話 クリュサオルクリシュナ」』
アポロドーロスでも、首が斬られるとゴルゴン(メドゥーサ)から翼の馬ペガソスと、ゲリュオンの父クリュサオルが飛び出し、どちらもポセイドンの子とされる。ゲリュオンは、腰で一つにつながり脇腹と腿から三つに分かれた三人の男の体をもち、オケアノスの近くの島エリュテイア(今のガデイラ)に住んでいた、と書かれる。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ヒュギヌスの神話集も、メドゥーサとネプトゥヌス(ポセイドン)からクリュサオルと馬のペガソスが生まれ、クリュサオルとカリロエから三つの体のゲリュオンが生まれたとする。
ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』 1〜2世紀頃
オウィディウス『変身物語』では、ペルセウスが自分の冒険を語る場面で、メドゥーサの首を斬ったことと、「母の血から生まれた、翼で逃げ去るペガソスとその兄弟」に触れるだけで、クリュサオルの名は出てこない。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
パウサニアスは、リュディアの小さな町で嵐のあと巨大な骨が現れ、人々がすぐに「クリュサオルの子ゲリュオンの亡骸」だと言い出した話を記す。
パウサニアス『ギリシア案内記』 2世紀
ヘシオドス『神統記』では、ゴルゴン三姉妹のうちただ一人死すべき身のメドゥーサと、「黒髪の神」ポセイドンが春の花の咲く草原で交わる。ペルセウスがメドゥーサの首を斬ると、偉大なクリュサオルと馬のペガソスが飛び出した。ペガソスはオケアノスの泉(ペーガイ)のそばで生まれたから、クリュサオルは両手に黄金の剣(アオル)を握っていたから、その名がついたと説明される。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
クリュサオルはオケアノスの娘カリロエと結ばれ、三つの頭のゲリュオン(ゲリュオネウス)をもうける。ゲリュオンは人間のうちで最も強く、海に囲まれたエリュテイアで、牛のためにヘラクレスに殺された。ヘラクレスは牛番エウリュティオンと犬オルトスも殺して、牛をティリュンスへ追っていった。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃
漫画・アニメ『聖闘士星矢』の海闘士の一人に、海将軍「クリュサオルのクリシュナ」がいる。バンダイのフィギュア商品「聖闘士聖衣神話 クリュサオルクリシュナ」(2007年発売)の紹介文は、付属の「邪悪を刺し貫く黄金の槍」に触れる。神話のクリュサオルは、槍ではなく黄金の剣を握って生まれる。
ヘシオドス『神統記』 前700年頃、BANDAI SPIRITS(バンダイ)『魂ウェブ「聖闘士聖衣神話 クリュサオルクリシュナ」』 2007年10月発売の商品ページ(2026年9月閲覧)