「アマゾン」は a-(無い)+ mazos(乳房)で「乳の無い者」と説明されることがあるが、etymonline もデジタル大辞泉もこれを通俗語源(民間語源)として扱う。乳房を取る話そのものが、この語呂合わせから生まれた可能性が指摘されている。
ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)、小学館『デジタル大辞泉』 随時改訂

Ἀμαζόνες人間
馬にまたがって戦うアマゾンたち。ルーベンスの絵。 『アマゾンの戦い』 ピーテル・パウル・ルーベンス 1618年Public domain
南米を流れる世界最大の大河、アマゾン川。その名は、ギリシャ神話の女だけの戦士の一族から来ている。1541年、流域で女の戦士たちと戦ったとするスペインの探検家が、神話にちなんで名づけ直したとされる。
後の時代に神話をまとめたアポロドーロスによれば、アマゾンは戦いに秀でた女たちの国で、男と交わって子が生まれても、育てるのは女の子だけ。槍を投げるのに邪魔になるからと右の乳房を締めて取り去り、子に乳をやるための左だけを残したという。「アマゾン」という名を「乳房の無い者」と説明することがあるが、これは語呂合わせの俗説とみられている。

いちばん古い作品である『イリアス』では、アマゾンは「男に匹敵する女たち」として、二度名前が出るだけである。一度目は、トロイアの老王プリアモスの思い出話。若いころ援軍に出た先で、アマゾンと戦ったことがあるという。二度目は、天馬に乗った英雄ベレロポンが倒した相手として。住む場所も女王の名も、『イリアス』は語らない。
ギリシャの名だたる英雄の多くが、どこかでアマゾンと戦っている。
英雄ヘラクレスの九番目の仕事は、アマゾンの女王の帯を持ち帰ることだった。軍神アレスから授かった、女王の力のしるしの帯である。ヘラクレスが港に着くと、女王本人が訪ねてきて、帯を渡すと約束した。ところが女神ヘラがアマゾンの一人に化けて、よそ者たちが女王をさらいに来たと言いふらす。武装したアマゾンたちが馬で船に押し寄せた。罠だと思ったヘラクレスは女王を殺して帯を奪い、残りと戦って引き揚げた。

アテナイの王テセウスは、ヘラクレスの遠征に加わってアマゾンの一人をさらい、妻にした。取り戻しに来たアマゾンの軍勢はアテナイまで攻め寄せたが、テセウス率いるアテナイ人に敗れた。この女戦士との間に生まれた息子は、のちに継母に恋をされ、悲劇に巻き込まれていく。

トロイア戦争の終盤には、女王ペンテシレイアがトロイア側に加わった。軍神アレスの娘で、戦場で多くのギリシャ兵を倒したが、最後はアキレウスに討たれた。アキレウスは、死んだ彼女に心を奪われたという。
歴史家ヘロドトスは、また別の話を伝えている。北の遊牧民スキュタイ人は、アマゾンを「男殺し」と呼んでいた。戦いで捕らえられたアマゾンたちが船を乗っ取ってスキュタイの地に流れ着き、そこの若者たちと結ばれて、新しい民族の祖先になったという。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、アルクティノス(伝)『アイティオピス』、ヘロドトス『歴史』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』、小学館『デジタル大辞泉』
「アマゾン」は a-(無い)+ mazos(乳房)で「乳の無い者」と説明されることがあるが、etymonline もデジタル大辞泉もこれを通俗語源(民間語源)として扱う。乳房を取る話そのものが、この語呂合わせから生まれた可能性が指摘されている。
ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)、小学館『デジタル大辞泉』 随時改訂
語源としては、ギリシャ語以外の語から来たとみる説や、イラン系の「ともに戦う者」にあたる複合語とみる説(ワトキンズ)が挙げられている。確定はしていない。
ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)
アポロドーロスでは、テルモドン川のほとりに住み、男の子が生まれても育てるのは女の子だけ。槍を投げるのに邪魔だとして右の乳房を締めて取り去り、授乳のため左は残したという。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ヘラクレスの第九の功業では、女王ヒッポリュテは帯を渡すと約束したが、ヘラがアマゾンに化けて「女王がさらわれる」と触れ回ったため戦いになり、ヘラクレスは女王を殺して帯を奪った。帯はアレスから授かったもの。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
テセウスがアマゾンの一人(アンティオペ、メラニッペ、またはヒッポリュテ)をさらったため、アマゾンはアテナイに攻め寄せ、アレイオパゴスのあたりに陣を敷いたが、テセウス率いるアテナイ人に敗れた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ホメロスでは「男に匹敵する」アマゾンとして2回だけ現れる。プリアモスが若い頃に戦った相手、そしてベレロポンが倒した相手。住む場所や女王の名は語られない。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
ヘロドトスは、スキュタイ人はアマゾンを「オイオルパタ」(男殺し)と呼ぶと記し、テルモドンの戦いで捕虜になったアマゾンがスキュタイ人の若者と結ばれてサウロマタイ人の祖になったという話を伝える。
ヘロドトス『歴史』 前430年頃
トロイア戦争では、アレスの娘である女王ペンテシレイアがトロイア側に加わり、アキレウスに討たれる。この話は叙事詩圏の『アイティオピス』で語られ、アポロドーロスが要約している。
アルクティノス(伝)『アイティオピス』 前7世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アポロドーロス2.5.9 アマゾンの女王。『アルゴナウティカ』2.998-999 三つの部族のうちの一つを治める
Amazon(アマゾン・ドットコム)米国の通販・IT企業。同社の公式サイトによれば、ジェフ・ベゾスは1995年に書店としてこの会社を始め、地球上でいちばん多くの本をそろえることを目指した。社名はそこから来ていて、アマゾン川のように広大な品ぞろえを思い描いたのだという。川の名はギリシャ神話の女だけの部族アマゾンに由来するので、たどれば神話の女戦士に行き着く。
アマゾン川南米の大河。スペイン人探検家フランシスコ・デ・オレリャーナが1541年、流域で女戦士(あるいは髭のない長髪の男たち)と戦ったことから、ギリシャ神話の女戦士アマゾンにちなんで名づけ直したとされる(もとはサンタ・マリア・デ・ラ・マル・ドゥルセ川)。一方で、先住民のトゥピ語・グアラニ語で「波」を意味する語がなまったとする説もある。デジタル大辞泉も、流域に女だけの部族がいると伝えられたことからの名とする。