ギリシャ神話の地図
ヘラクレス英雄ヘラ後ろ盾ゼウス誓った神ヘラクレスの十二の功業難業ネメアの獅子獲物アマゾン族娘の望みアルクメネ仇の母ミュケナイ都

エウリュステウス

Εὐρυσθεύς人間

英雄ヘラクレスの十二の難業は、誰が命じたのか。命じたのは、ヘラクレスよりずっと弱く、臆病な一人の王だった。

では、その王エウリュステウスが、なぜ最強の英雄の上に立つことになったのか、見ていこう。

始まりは、ゼウスのうっかりした誓いである。『イリアス』によれば、ゼウスの子を身ごもった人間の女が、いよいよヘラクレスを産もうとしていた日、ゼウスは神々の前で得意げに言った。今日、わしの血を引く男が生まれ、周りの者すべての王となる。

妻ヘラが、すかさず念を押した。本当にそうなるのか、固く誓ってほしい。今日生まれる、あなたの血筋の男が王になる、と。ゼウスは企みに気づかずに誓ってしまった。

ヘラはすぐに地上へ降りた。英雄ペルセウスの息子の妻が、7か月の子を身ごもっていた。ペルセウスはゼウスの子だから、この子もゼウスの血筋にあたる。ヘラはこの子を月足らずで先に生ませ、ヘラクレスの母のお産は押しとどめた。そしてゼウスに告げた。いま、あなたの血筋の立派な男が生まれた。エウリュステウスだ、と。誓いは取り消せず、王になる運命は、先に生まれたこの子のものになった。

こうしてエウリュステウスはミュケナイの王となり、ヘラクレスはその命令に従って難業に挑むことになる。『オデュッセイア』の冥界で、ヘラクレスの霊はこう嘆いている。わしはゼウスの子でありながら、はるかに劣る男に仕えさせられ、つらい難業を課された。

最初の命令は、刃も矢も通らないネメアの獅子の皮を持ってくることだった。ヘラクレスが獅子を担いで戻ってくると、王はその力に震え上がった。以後、ヘラクレスを町の中に入れず、成果は門の前で見せるよう命じる。自分は地中に青銅の甕を作らせ、そこに隠れた。命令も、伝令を通して伝えるようになった。

甕に身を隠し、ヘラクレスの持ち帰った獲物におびえる王。
甕に身を隠し、ヘラクレスの持ち帰った獲物におびえる王。『ヘラクレス、エウリュステウス、猪』 前510年ごろ ミュンヘン古代美術博物館Public domain

王は、数え方にもけちをつけた。水蛇ヒュドラ退治は甥の手を借りたから数に入れない。牛小屋の掃除は報酬を取ったから数に入れない。もとは10だった難業が12になったのは、このためだという。アマゾンの女王の帯を取りに行かせたのは、王の娘が欲しがったからだった。

ヘラクレスが死んで神々の仲間入りをしたあとも、王の恨みは続いた。ヘラクレスの子どもたちを追い回し、かくまったアテナイに戦を仕掛けたのである。けれども戦いに敗れ、戦車で逃げる途中、ヘラクレスの息子に追いつかれて討たれた。首は、ヘラクレスの母のもとに届けられた。母はその目を、機織りの針でえぐり出したという。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ホメロス『オデュッセイア』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

ローマ以後の語り

ネメアの獅子を担いで帰ったヘラクレスに恐れをなし、以後は城内に入れず門の外で成果を見せさせ、自分は地中に造らせた青銅の甕に隠れた。命令は伝令コプレウスに伝えさせた。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ヒュドラ退治はイオラオスの手を借りたから、アウゲイアスの家畜小屋は報酬を取ったからと言って数に入れず、功業を10から12に増やしたのもエウリュステウス。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

第九の功業でアマゾンの女王ヒッポリュテの帯を取りに行かせたのは、娘アドメテが欲しがったからだった。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ヘラクレスの死後、その子らを追ってアテナイと戦ったが敗れ、戦車で逃げる途中スケイロンの岩のあたりでヒュロスに討たれた。ヒュロスは首をアルクメネに渡し、アルクメネは機織りの杼で目をえぐった。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

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ゼウスが「今日生まれる自分の血を引く者が周りの者すべてを治める」と誓うと、ヘラはアルゴスに急ぎ、ペルセウスの子ステネロスの妻の七か月の子を先に生ませ、アルクメネのお産を止めた。こうしてゼウスの誓いはエウリュステウスのものになった。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

『オデュッセイア』の冥界で、ヘラクレスの幻影は「ゼウスの子でありながら、はるかに劣る男に従わされ、つらい難業を課された」と嘆く。名は出さないが、エウリュステウスのことである。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

ほかのつながり(1人)

家族・恋愛

  • ペルセウス祖父母

    アポロドーロス 2.4.5、『イリアス』19.116, 19.123「ペルセウスの子ステネロス」の子

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このページの出典(3件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  3. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』