ギリシャ神話の地図
ヘラクレス宿敵ヘラ育ての親エウリュステウス命じた王スフィンクス兄弟テュポン父ヘラクレスの十二の功業試練
ヘラクレスと組み合うネメアの獅子。スルバランの絵。

ネメアの獅子

Νεμεαῖος λέων怪物

ヘラクレスと組み合うネメアの獅子。スルバランの絵。 『ネメアの獅子と戦うヘラクレス』 フランシスコ・デ・スルバラン 1634年 プラド美術館Public domain

英雄ヘラクレスは、獅子の毛皮を身にまとい、獅子の頭の皮を兜にしていたと語られる。その毛皮の持ち主として名が挙がるのが、ネメアの獅子である。

では、この獅子がどんな怪物で、どうやって倒されたのか、見ていこう。

『神統記』によれば、ネメアの獅子は怪物の一族の生まれで、謎かけの怪物スフィンクスとはきょうだいにあたる。育てたのは女神ヘラだった。ヘラは獅子をネメアの丘に住まわせ、人々の災いとした。後の時代に神話をまとめたアポロドーロスは、父は巨大な怪物テュポンだとしている。刃物も矢も通さない、不死身の獣だった。

ヘラクレスが仕える王から命じられた、十二の仕事の最初。それが、この獅子の皮を持ってくることだった。

獅子の住む土地へ向かう途中、ヘラクレスは貧しい日雇いの男の家に泊まった。男が客のために生け贄を捧げようとすると、ヘラクレスは止めた。30日待て。無事に戻ったら救いの神ゼウスに捧げよ。戻らなければ、わしを英雄として祀る生け贄にせよ、と。

ネメアで獅子を見つけると、ヘラクレスはまず矢を射た。矢ははね返された。そこで棍棒を振り上げて追い立てた。獅子は、出口が二つある洞窟に逃げ込む。ヘラクレスは片方の出口をふさぎ、もう一方から入っていった。そして腕を獅子の首に回し、息が止まるまで締め上げた。

獅子を肩に担いで戻ると、30日目、ちょうど男が死者のための生け贄を捧げようとしているところだった。ヘラクレスは救いの神ゼウスに生け贄を捧げ、獅子を王のもとへ運んだ。

獅子の死骸を見た王は、あまりの力に恐れをなした。それからは、ヘラクレスを町に入れず、成果は門の前で見せるよう命じた。王自身は、地中に青銅の甕を作らせて、その中に隠れたという。

ヘラクレスが身にまとう獅子の皮がこの獅子のものだと書いたのは、悲劇詩人エウリピデスである。けれどもアポロドーロスは、別の獅子の話を伝えている。

この物語の出典: ヘシオドス『神統記』、エウリピデス『ヘラクレス(狂えるヘラクレス)』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

こういう風にも語られている

ヘシオドスでは、オルトス(ゲリュオンの番犬)と交わった「彼女」が生む。この「彼女」がエキドナかキマイラか、文の上では決め切れない。育てたのはヘラ。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

アポロドーロスはテュポンの子とする。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ヘラクレスが頭からかぶる獅子の皮はネメアの獅子のもの、とするのがエウリピデスの合唱歌。ケルベロスを捕らえる場面でも獅子の皮を身にまとっている。

エウリピデス『ヘラクレス(狂えるヘラクレス)』 前420〜前414年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

一方アポロドーロスは、功業より前、18歳のヘラクレスがキタイロン山の獅子を倒したとき「その皮をまとい、頭の皮を兜にした」と書く。皮の出どころが二つある。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ローマ以後の語り

矢が通じないと知ったヘラクレスは棍棒で追い、二つの出口がある洞窟の一方を塞いで入り、首を抱えて絞め殺した。道中泊めてくれた日雇い人モロルコスには「30日たって戻らなければ英雄として祀れ」と言い残していた。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

獅子の死骸を見て怯えたエウリュステウスは、ヘラクレスを城内に入れず門の前で成果を見せるよう命じ、自分は地中に青銅の甕を作って隠れたという。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

今の言葉に残る

しし座 / Leoしし座(獅子座)のライオンは、ヘラクレスが素手で倒したネメアの獅子とされる。もっとも、ヒュギヌスの『天文譜』が最初に挙げる理由はもっと単純で、あらゆる獣の王と考えられていたからゼウスが星にした、というものだ。そのうえで、これはヘラクレスの最初の戦いの相手で、彼が武器を持たずに殺したからだ、とまで言う人々もいる、と書き添え、何人もの詩人がこの話を書いたと述べている。英語の Leo はラテン語で「ライオン」の意味で、星座の名としては古英語の終わりごろから使われている。11月中旬に見ごろを迎えるしし座流星群(英語で Leonid)の名は1868年から。語源辞典によれば、流れ星がとりわけ多く降るのはおよそ33年ごとで、テンペル・タットル彗星と結びついていると考えられている。

星座になった話

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このページの出典(3件)
  1. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  2. 前420〜前414年頃エウリピデス『ヘラクレス(狂えるヘラクレス)』
  3. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』