星座になった神話

かに座の神話

怪物ヒュドラと戦うヘラクレスの足に、沼から出てきた蟹がかみついた。その甲羅の上には、ろばと呼ばれる星もある。

ヘラクレスの足にかみついた蟹

かに座の蟹は、英雄ヘラクレスに殺された蟹だという。ローマ時代のヒュギヌスの星座の本『天文譜』はこう語る。レルネの沼地で、英雄が水蛇の怪物ヒュドラを相手にしていたさなか、沼から一匹の蟹が出てきて、その足に食らいついた。怒りにまかせて、ヘラクレスは蟹の命を奪った。

ローマ期天文譜

蟹を星にしたのは、女神ヘラだった。太陽の通り道にあたる十二の星座の一つに、この蟹を加えたのである。

ローマ期天文譜

甲羅の上のろば

蟹の甲羅の上には、「ろば」と呼ばれる二つの星がある。これを置いたのは、酒の神ディオニュソスだという。

ローマ期天文譜

ヘラに正気を奪われたディオニュソスは、ドドネにあるゼウスの神託所へ行き、心を元に戻すすべを尋ねようと、テスプロティアの地をさまよっていた。大きな沼に行き当たって渡れずにいると、二頭のろばに出会った。その一頭をつかまえて乗ると、水に少しも触れずに向こう岸へ渡ることができた。

ローマ期天文譜

神託所に着いたとたん、狂気は消えた。ディオニュソスはろばたちに感謝して、星々のあいだに置いたのだという。

ローマ期天文譜

ヒュギヌスは、エラトステネスの伝える別の話も並べている。ゼウスが巨人族との戦いに神々を呼び集めたとき、ディオニュソスや鍛冶の神ヘパイストス、サテュロスたちは、ろばに乗ってやって来た。敵のすぐ近くまで来たとき、ろばたちはおびえ、巨人たちが聞いたこともないような大声でいっせいに鳴いた。その声に巨人たちは逃げ出し、こうして打ち負かされたのだという。

ローマ期天文譜

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