星座になった神話

かんむり座の神話

Corona Borealis

酒の神ディオニュソスが、妻アリアドネの冠を空に置いた。迷宮の闇を照らした冠とも、海の底から持ち帰った冠とも語られる。

花嫁に贈られた冠

かんむり座の冠は、クレタの王女アリアドネの冠である。ローマ時代のヒュギヌスの『天文譜』によれば、酒の神ディオニュソスがアリアドネを妻にしたとき、神々はこぞって祝いの品を持ち寄った。そのとき女神アフロディーテと季節の女神たちから最初に贈られたのが、この冠だった。のちにディオニュソスが、これを星のあいだに置いた。

ローマ期天文譜

クレタの伝えを書いた人は、少し違う話をしている。ディオニュソスがクレタ王ミノスのもとを訪れ、アリアドネに心を寄せたとき、贈り物としてこの冠を渡した。すっかり気に入ったアリアドネは、神の申し出を断らなかったという。

ローマ期天文譜

迷宮の闇を照らした冠

冠は、鍛冶の神ヘパイストスが金とインドの宝石で作ったものだとも言われる。英雄テセウスがクレタの迷宮の闇から光のもとへ戻ってこられたのは、この冠のおかげだという。金と宝石が、暗闇の中で光を放っていたからだ。

ローマ期天文譜

冥界の入口に置いた冠

アルゴスの伝えを書いた人たちは、別のわけを挙げる。ディオニュソスは父ゼウスから、死んだ母セメレを冥界から連れ戻す許しを得た。降り口を探してアルゴスの地まで来ると、ある男が道を教えてくれた。

ローマ期天文譜

いよいよ冥界へ下りようとするとき、ディオニュソスはアフロディーテからもらった冠を、その場所に置いていった。不死の神々の贈り物を、死者に触れさせて汚したくなかったからだ。その場所は、このことから「冠(ステパノス)」と呼ばれるようになった。母を無事に連れ戻したあと、ディオニュソスは冠を星のあいだに置き、いつまでも名が記憶されるようにしたという。

ローマ期天文譜

海の底から持ち帰った冠

この冠はテセウスの冠だ、という話もある。テセウスがクレタに渡ったとき、ミノス王は自分の指輪を海に投げ込み、お前が本当に海の神ポセイドンの子なら取ってこい、と言った。

ローマ期天文譜

テセウスが海に飛び込むと、たくさんのイルカが現れ、穏やかな波に乗せて海の女神たちのもとへ連れていった。テセウスはそこでミノスの指輪を受け取り、さらに女神テティスから、婚礼のときにアフロディーテにもらったという、宝石のきらめく冠を持ち帰った。

ローマ期天文譜

ポセイドンの妻から冠を授かったのだ、とも言われる。テセウスはこの冠をアリアドネに贈り、アリアドネが亡くなったあと、ディオニュソスがそれを星のあいだに置いたのだという。

ローマ期天文譜

名前の由来

語源辞典によれば、この星座はほかの星座よりずっと名前どおりの形をしていて、ギリシャ人は「花の冠」と呼び、ローマ時代からは「アリアドネの冠」と呼ばれた。

ラテン語の corona は「冠」の意味で、皆既日食のとき太陽のまわりに見える光の輪「コロナ」も、1809年からこの言葉で呼ばれている。

近現代オンライン語源辞典近現代国立天文台 公式サイト

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