ギリシャ神話の地図
アトラス父ヘルメス甥ゼウス恋人ポセイドン恋人シシュポス義兄弟オリオン追っ手オデュッセウス航海者オケアノス祖父
踊るプレイアデスの姉妹たち。イライヒュー・ヴェダーの作。

プレイアデス

Πληϊάδες / Πληιάδες神

踊るプレイアデスの姉妹たち。イライヒュー・ヴェダーの作。 『プレイアデス』 イライヒュー・ヴェダー 1885年 メトロポリタン美術館Public Domain (The Met Open Access, CC0)

自動車メーカーSUBARUの社名は、「六連星」とも呼ばれるおうし座の星団「すばる」から取られている。清少納言も『枕草子』で「星はすばる」と書いた。この同じ星団を、古代ギリシャ人はプレイアデスと呼び、巨人アトラスの7人の娘たちの姿だと考えた。SUBARUが1985年に出した車「アルシオーネ」の名も、その娘の一人から取られている。

東と西で別々の名をもつこの星たちが、ギリシャ神話でどう語られてきたのか、見ていこう。

アポロドーロスによれば、7人の姉妹は、天を支える巨人アトラスと、大河の神オケアノスの娘のあいだに生まれた。

姉妹の多くは、神々に愛された。長女マイアは、ゼウスとのあいだに、洞窟で伝令神ヘルメスを産んだ。エレクトラもゼウスの子を産み、その子がトロイア王家の祖となった。海の神ポセイドンも二人の姉妹を愛した。ただ一人、メロペだけが人間の男、のちに冥界で岩を押し上げ続けるシシュポスの妻になった。

いちばん古い作品では、姉妹は物語の人物というより、暮らしの目印の星だった。『イリアス』で鍛冶の神が英雄アキレウスのために作った盾には、プレイアデスや、力強いオリオンなどの星々が刻まれている。『オデュッセイア』では、筏で海を渡るオデュッセウスが、眠らずにプレイアデスを見上げて進路を取る。ヘシオドスの『仕事と日』は農民に教える。アトラスの娘たちが明け方に昇るころに刈り入れを、沈むころに畑を耕せ。姉妹が力強いオリオンから逃れて霧の海に沈むころには、船を出すな、と。

プレイアデスは7人の姉妹と呼ばれるのに、目で見える星は六つしかない。このことは古代から語られていた。前3世紀の詩人アラトスは、7つと呼ばれるが見えるのは6つだけ、それでもゼウスのもとから星が一つ知られずに消えたわけではない、と書いている。

ローマの詩人オウィディウスは、見えない一つについて理由を二つ挙げた。一つは、6人の姉妹が神々と結ばれたのに、メロペだけは人間に嫁いだのを恥じて、身を隠しているから。もう一つは、エレクトラが、自分の子の子孫の国トロイアが滅びるのを見ていられず、手で目を覆ったから。

日本の「すばる」は、ギリシャ神話とは関係なく、星々がひとつに統べ集まっている姿から名づけられたと辞書は説明する。SUBARUは、5つの会社が出資してできた会社であることから、六つの星の星団の名を社名に選んだという。ちょうど、目に見える数と同じである。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ホメロス『オデュッセイア』、ヘシオドス『仕事と日』、ヘシオドス『神統記』、アラトス『星辰譜(パイノメナ)』、オウィディウス『祭暦』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』、小学館『デジタル大辞泉』、株式会社SUBARU『株式会社SUBARU 公式サイト(よくある質問・SUBARUトリビア)』

この物語の人々

こういう風にも語られている

「7人と呼ばれるのに6つしか見えない」ことは古代から語られていた。前3世紀のアラトスは、7つと呼ばれるが目に見えるのは6つだけで、それでもゼウスのもとから星が一つ知られずに消えたわけではない、と歌う。

アラトス『星辰譜(パイノメナ)』 前3世紀前半

オウィディウス『祭暦』は理由を二つ挙げる。一つは、6人は神々と交わったが、メロペだけは人間のシシュポスに嫁いだのを恥じて隠れているから。もう一つは、エレクトラがトロイアの滅びるのを見ていられず、手で目を覆ったから。エレクトラはトロイア王家の祖ダルダノスの母なので、子孫の国の滅亡を嘆いたことになる。

オウィディウス『祭暦』 8年頃(未完)

ローマ以後の語り

名前の由来は二説ある。「鳩たち」(peleiades)の短い形とする説と、この星の明け方の出が航海の季節の始まりを告げるので「航海する」(plein)から来たとする説。英語での初出は14世紀後半。肉眼では多くの人に6つ、よく晴れた夜なら9つほど見え、望遠鏡では少なくとも500個の星がある。

ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)

日本ではこの星団を「すばる」と呼ぶ。星々が糸を通して一つに統べたように集まっているので「統ばる」星と呼んだ、という説明が辞書に見え、古代の玉飾り「すまるの玉」から来たとする説もある。星の名としては平安時代の辞書『和名類聚抄』に現れ、清少納言『枕草子』の「星はすばる」で広く知られる。ギリシャ神話とは別々に、同じ星団に名前がついていたことになる。

小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』 1984-94年刊、随時改訂(2026年9月閲覧)、小学館『デジタル大辞泉』 随時改訂

自動車メーカーのSUBARUは、社名を「六連星とも呼ばれる星団の名前」とし、旧中島飛行機の流れをくむ5社の出資で設立されたことから、6つの星の星団の名を選んだと説明している。姉妹の名前も製品名に使われ、1985年の車「アルシオーネ」(Alcyone、アルキュオネの名から)や、北米向けの「マイア」、天体望遠鏡「メローペ」などがある。

株式会社SUBARU『株式会社SUBARU 公式サイト(よくある質問・SUBARUトリビア)』 2026年9月閲覧

もっと詳しく

ホメロスとヘシオドスでは、プレイアデスは物語の人物ではなく星として現れる。アキレウスの盾には「プレイアデス、ヒュアデス、力強いオリオン」が刻まれ、筏で海を渡るオデュッセウスはプレイアデスを見て進路をとる。ヘシオドス『仕事と日』では「アトラスから生まれたプレイアデス」が昇るころに刈り入れを、沈むころに耕作を始めよと言い、40日間は姿を隠すとも言う。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃、ヘシオドス『仕事と日』 前700年頃

7人の名はアルキュオネ、メロペ、ケライノ、エレクトラ、ステロペ(アステロペ)、タユゲテ、マイア。アポロドーロスとアラトスで同じ7人が挙がる。マイアはヘルメスの母、エレクトラはトロイア王家の祖ダルダノスの母、メロペはシシュポスの妻になる。アルキュオネは、カワセミに変わったケユクスの妻アルキュオネとは別人。

アラトス『星辰譜(パイノメナ)』 前3世紀前半、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ヘシオドスは、プレイアデスが「オリオンの力強さから逃れて」霧の海に沈むころは航海をやめよと言い、ピンダロスも「山の鳩たち(ペレイアデス)から遠くないところをオリオンが行くのがふさわしい」と歌う。星どうしを、追う者と逃げる者に見立てた言い方になっている。オリオンが彼女たち(あるいは母プレイオネ)に恋して追い続けた、という恋物語の形は後代の星座誌に出てくる。

ヘシオドス『仕事と日』 前700年頃、ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半

ほかのつながり(2人)

家族・恋愛

  • アレス愛人・交わった相手

    『祭暦』4.172 ステロペはマルス(アレス)と交わったという。アポロドーロス 3.10.1 ではステロペはオイノマオスの妻

仲間・師弟

今の言葉に残る

プレアデス / Pleiades星団名。ラテン語経由でギリシャ語 Pleiades(単数 Pleias)から。由来は二説あり、「鳩」peleias の複数 peleiades の短い形とする説と、明け方の出が航海の季節の始まりを告げることから「航海する」plein に結びつける説がある。神話ではアトラスとプレイオネの7人の娘の名。英語での初出は14世紀後半(Pliades)。

すばる / SUBARUおうし座のプレアデス星団の和名。辞書は、星々が一か所に統べ集まっているので「統ばる」と呼んだと説明する。平凡社の百科事典は、上代の人が髪や手首に着けた玉飾り「すまるの玉」の名をこの星団に付け、「すまる」が「すばる」になったとみている。平安時代の『和名類聚抄』に星の名として現れ、『枕草子』の「星はすばる」で知られる。自動車メーカーSUBARUはこの星団名を社名にしている。前身の富士重工業が5社の出資で設立されたことから、6つの星の星団の名を選んだと公式に説明している。ギリシャ神話のプレイアデス(アトラスの7人の娘)とは別に付いた名前で、同じ星団を東西で別々に呼んでいた例。

星座になった話

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このページの出典(12件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  3. 前700年頃ヘシオドス『仕事と日』
  4. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  5. 前5世紀前半ピンダロス『祝勝歌集』
  6. 前3世紀前半アラトス『星辰譜(パイノメナ)』
  7. 8年頃(未完)オウィディウス『祭暦』
  8. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  9. 1984-94年刊、随時改訂(2026年9月閲覧)小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』
  10. 2001年〜(2026年9月閲覧)ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』
  11. 随時改訂小学館『デジタル大辞泉』
  12. 2026年9月閲覧株式会社SUBARU『株式会社SUBARU 公式サイト(よくある質問・SUBARUトリビア)』