ケクロプスの時代に、アテナとポセイドンがアッティカを争った。ゼウスが立てた十二神の審判は、ケクロプスが「アテナが先にオリーブを植えた」と証言したのを受けてアテナの勝ちとした。アポロドーロスは、審判をケクロプスとクラナオス、あるいはエリュシクトンとする説があることにも触れ、それを退けている。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
Κέκροψ人間
アテネという町の名は、女神アテナに由来する。女神がこの土地を手に入れたとき、その証人になった者がいた。上半身が人間、下半身が蛇の姿をした、アテナイ最初の王ケクロプスである。
神々の土地争いの証人となったこの王の話を、見ていこう。
アポロドーロスによれば、ケクロプスは親から生まれたのではなく、大地から生まれた。体は人と蛇が混じり合っていた。彼はアッティカ地方の最初の王となり、それまでアクテと呼ばれていた土地を、自分にちなんでケクロピアと名づけた。
ケクロプスの時代に、神々はそれぞれ自分が祀られる町を手に入れようと決めた。アッティカに最初にやって来たのは、海の神ポセイドンだった。彼は町の丘の真ん中を三叉の矛で打ち、そこに海を湧き出させた。続いて女神アテナがやって来た。アテナはケクロプスを呼んで、自分が土地を手に入れる証人になってもらい、オリーブの木を植えた。
二柱の神が土地の持ち主を争うと、ゼウスは二人を引き分け、十二の神々に裁かせた。神々はケクロプスの証言、アテナが先にオリーブを植えた、という言葉にもとづいて、土地をアテナのものと決めた。アテナは町を自分の名にちなんでアテナイと名づけた。怒ったポセイドンは、近くの平野を洪水で沈め、アッティカを海の下にした。アポロドーロスの時代にも、そのオリーブの木は丘の上の聖域で人々に示されていたという。

ケクロプスには、息子一人と3人の娘がいた。この娘たちに、アテナはある箱を預けた。中には、鍛冶の神ヘパイストスがアテナに言い寄ったときに地に落ちた種から生まれた赤ん坊が入っていた。アテナは、決して開けてはならないと命じた。ところが姉妹は好奇心に負けて箱を開け、赤ん坊に蛇が巻きついているのを見てしまう。姉妹は蛇に殺されたとも、アテナの怒りで狂って丘から身を投げたともいう。箱の中の赤ん坊は、やがてアテナイの王になった。

ローマの詩人オウィディウスは、娘の一人が伝令神ヘルメスの恋路を邪魔して石に変えられた話も伝えている。
歴史家ヘロドトスは、アテナイの人々の呼び名の移り変わりを書き留めている。その中に、ケクロプス王の時代には、人々は「ケクロプスの子ら」と呼ばれていた、とある。
この物語の出典: ヘロドトス『歴史』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』
ケクロプスの時代に、アテナとポセイドンがアッティカを争った。ゼウスが立てた十二神の審判は、ケクロプスが「アテナが先にオリーブを植えた」と証言したのを受けてアテナの勝ちとした。アポロドーロスは、審判をケクロプスとクラナオス、あるいはエリュシクトンとする説があることにも触れ、それを退けている。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
オウィディウスでも、アテナが機織りの競争で織り出す場面では、ユピテルを中心に十二の神々が審判の席に並ぶ。ケクロプスは登場しない。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
アポロドーロスは、ケクロプスを大地から生まれた者(アウトクトン)で、人と蛇の混じった体をもつアッティカ最初の王とする。以前アクテと呼ばれた土地を、彼にちなんでケクロピアと呼ぶようになった。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
妻アグラウロスとの間に、息子エリュシクトンと、アグラウロス・ヘルセ・パンドロソスの3人の娘がいた。アテナは赤子エリクトニオスを入れた箱をこの娘たちに預け、開けるなと命じたが、娘たちは開けてしまう。
オウィディウス『変身物語』 8年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アテナイの王の系図には、同じ名のケクロプスがもう一人いる。エレクテウスの長男で、父の跡を継いで王になった。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ポセイドンは最初にアッティカに来て、アクロポリスの中央を三叉の矛で打ち、いまエレクテイスと呼ばれる海を湧き出させた。アテナはケクロプスを証人に呼んでオリーブを植え、その木はパンドロセイオンに今も示されている。土地を得られなかったポセイドンは怒ってトリアの平野を水浸しにし、アッティカを海に沈めた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
箱を開けてエリクトニオスに巻きつく蛇を見た娘たちは、蛇に殺されたとも、アテナの怒りで狂ってアクロポリスから身を投げたともいう。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ヘロドトスは、アテナイ人の呼び名の移り変わりを、ペラスゴイ人の時代の「クラナオイ」、ケクロプス王の時代の「ケクロピダイ」、エレクテウスの時代からの「アテナイ人」、クストスの子イオンが将軍になってからの「イオニア人」と並べる。
ヘロドトス『歴史』 前430年頃
3.14.1