ギリシャ神話の地図
ゼウス捧げた神ヘルメス雄羊の贈り主ヘリオス王の父イアソン毛皮を追う英雄アルゴナウタイの遠征拾った英雄たち金羊毛毛皮イノ・レウコテア継母アタマス父
雄羊にまたがる若い男。下に魚が見える。

プリクソス

Φρίξος人間

雄羊にまたがる若い男。下に魚が見える。 『テラコッタの浮彫板』 前450年ごろ メトロポリタン美術館Public Domain (The Met Open Access, CC0)

星座の一つ、牡羊座。ローマ時代の天文の書によれば、この雄羊は、ある王子を背に乗せて空を逃げた金の雄羊だという。その王子が、プリクソスである。

牡羊座の雄羊が運んだ少年は、何から逃げ、どこへたどり着いたのか。見ていこう。

プリクソスは、ギリシャ中部のある国の王の息子だった。父が後妻を迎えると、継母は先妻の子であるプリクソスと妹ヘレを亡き者にしようと企む。女たちにひそかに種麦を炒らせて不作を起こし、神託を聞きに行った使者に、プリクソスをゼウスに捧げれば不作は終わる、と偽りを言わせた。

プリクソスが祭壇に立たされたそのとき、兄妹の母が二人をさらって救い出した。母は、伝令の神ヘルメスから授かった金の毛の雄羊を子どもたちに与える。二人は雄羊の背に乗って空へ舞い上がり、陸を越え、海を越えて逃げていった。

ところが途中の海峡の上で、妹のヘレは雄羊の背からすべり落ち、海に沈んで死んでしまう。その海峡は、ヘレの海という意味のヘレスポントスと呼ばれるようになった。

プリクソスは一人で旅を続け、コルキスという国にたどり着いた。王は太陽神ヘリオスの息子で、魔女キルケの兄弟にあたる。王はプリクソスを迎え入れ、娘を妻に与えた。

プリクソスは、自分を運んできた雄羊を、逃れる者を守るゼウスへの犠牲に捧げた。英雄たちの船旅を描いた叙事詩『アルゴナウティカ』によれば、それは雄羊自身の勧めだったという。金の毛皮は王に贈られ、王はそれを軍神アレスの森の樫の木に打ちつけた。ローマ時代の天文の書は、雄羊が自分で金の毛皮を脱いで、記念にプリクソスに与えたという話まで伝えている。

プリクソスはコルキスで年老いて死んだ。息子たちは、父の遺言に従って、父の故郷ギリシャへ向かって船出する。ところが嵐で船が難破し、島に打ち上げられたところを、ちょうど金の毛皮を取りに来たアルゴ船の英雄たちに拾われた。

その毛皮を取り戻しに行く旅こそが、英雄イアソンとアルゴ船の冒険である。詩人ピンダロスでは、イアソンに旅を命じる王が、その理由をこう語る。プリクソスの霊が夢に現れて、コルキスの王の館へ来て自分の魂を連れ帰り、海と継母の刃から自分を救った雄羊の毛皮を取り戻してほしいと求めているのだ、と。

この物語の出典: ピンダロス『祝勝歌集』、アポロニオス・ロディオス『アルゴナウティカ』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ヒュギヌス(偽ヒュギヌス)『天文譜』、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』

この物語の人々

こういう風にも語られている

毛皮はアイエテスに贈られ、アレスの森の樫の木に打ちつけられた。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ヒュギヌスの『神話集』では、プリクソスが自分で毛皮をマルス(アレス)の神殿に納めた。『天文譜』では、雄羊が自分で金の毛皮を脱いで記念にプリクソスに与えた、という説まで伝える。

ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』 1〜2世紀頃、ヒュギヌス(偽ヒュギヌス)『天文譜』 1〜2世紀

ローマ以後の語り

父アタマスが民に迫られてプリクソスを祭壇に立たせたとき、母ネペレが二人の子をさらい、ヘルメスから授かった金の毛の雄羊を与えた。子どもたちは雄羊に運ばれて空を越え、陸と海を渡った。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

コルキスに着いたプリクソスを、太陽神ヘリオスの子である王アイエテスが迎え、娘カルキオペを妻に与えた。プリクソスは雄羊を「逃亡者の守り手」ゼウス・ピュクシオスに捧げ、毛皮をアイエテスに贈った。アイエテスはそれをアレスの森の樫の木に打ちつけた。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

カルキオペとの間に、アルゴス、メラス、プロンティス、キュティソロスの4人の息子が生まれた。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

プリクソスを運んだ雄羊は、星座の牡羊座になったとされる。

ヒュギヌス(偽ヒュギヌス)『天文譜』 1〜2世紀

もっと詳しく

ピンダロスでは、ペリアスがイアソンに遠征を命じる口実として「プリクソスの魂が、アイエテスの館へ行って自分の魂を連れ帰り、海と継母の刃から自分を救った雄羊の毛皮を取り戻せと夢で求めている」と語る。金羊毛の探索は、もとはプリクソスの霊を故郷に帰す務めとして語られていた。

ピンダロス『祝勝歌集』 前5世紀前半

アポロニオスでは、プリクソスの息子アルゴスがアルゴ船の英雄たちに語る。プリクソスはヘルメスが金にした雄羊に乗ってアイエテスの町に着き、雄羊自身の勧めに従って、逃れる者を守るゼウス(ピュクシオス)にそれを捧げた。アイエテスは娘カルキオペを婚資なしで与えた。プリクソスはアイエテスの館で年老いて死に、息子たちは父の遺言に従ってオルコメノスへ向かう途中、難破した。

アポロニオス・ロディオス『アルゴナウティカ』 前3世紀

ほかのつながり(4人)

家族・恋愛

敵対・殺害

  • アイエテス殺した側

    ヒュギヌス3 アイオロスの子孫の異邦人に殺されるというお告げを恐れて殺す(アポロドーロス・アポロニオスにはない)

仲間・師弟

星座になった話

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このページの出典(5件)
  1. 前5世紀前半ピンダロス『祝勝歌集』
  2. 前3世紀アポロニオス・ロディオス『アルゴナウティカ』
  3. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  4. 1〜2世紀頃ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』
  5. 1〜2世紀ヒュギヌス(偽ヒュギヌス)『天文譜』