プリクソスは金の毛の雄羊に乗ってコルキス人のもとに来た。王アイエテスはヘリオスとペルセイスの子で、キルケとパシパエの兄弟にあたり、プリクソスを迎えて娘カルキオペを妻に与えた。プリクソスは雄羊を逃走の守り神ゼウスにささげ、毛皮をアイエテスに贈り、アイエテスはそれをアレスの森の樫の木に釘で打ちつけた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
Κολχίς場所
歴史家ヘロドトスの『歴史』は、東と西の争いがどう始まったのかを語るところから書き起こされる。ペルシャの物知りたちの言い分では、最初に女をさらったのは東の側だった。ギリシャのアルゴスの王女イオが、船で来た商人たちに連れ去られたのだ。ところがその後、ギリシャ人も長い船で黒海の奥のコルキスへ乗りつけ、王の娘メデイアを連れ去った。王が使者を送って娘を返せと迫ると、ギリシャ人はこう答えたという。そちらがイオのことで償いをしなかったのだから、こちらも償いはしない、と。
コルキスは、黒海の東の果てにある国である。神話の中では、金の羊毛が眠る国として知られていた。
神話集を書いたアポロドーロスによれば、継母に命を狙われたギリシャの王子は、金色の毛の雄羊に乗って空を逃れ、この国にたどり着いた。この国の王は、太陽の神ヘリオスの子で、魔女キルケの兄弟にあたる。王は王子を迎え入れ、娘の一人を妻として与えた。王子は雄羊をゼウスにささげ、金の毛皮を王に贈った。王はそれを、軍神アレスの森の樫の木に釘で打ちつけた。
その毛皮を取り戻しに、英雄イアソンがアルゴ船の仲間とやって来る。王は、毛皮を渡す代わりに難題を出した。鍛冶の神ヘパイストスから贈られた、青銅の足を持ち口から火を吐く二頭の牡牛にくびきをかけ、竜の歯をまけ、というのだ。その歯は、テーバイを建てた英雄がまいた竜の歯の半分を、王が女神アテナからもらったものだった。

途方に暮れたイアソンに恋をしたのが、王の娘メデイアだった。魔法に通じた王女は、ギリシャへ連れて行って妻にすると誓わせ、父に隠れて、火にも刃にも傷つかない薬を渡した。こうしてイアソンは難題を果たし、メデイアの助けで毛皮を手に入れて、船で国を去る。

ヘロドトスの物知りたちが「さらわれた」と言ったのは、この王女のことである。神話の国コルキスは、歴史家の目には、東と西の長い争いの始まりにかかわる国でもあった。
この物語の出典: ヘロドトス『歴史』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
プリクソスは金の毛の雄羊に乗ってコルキス人のもとに来た。王アイエテスはヘリオスとペルセイスの子で、キルケとパシパエの兄弟にあたり、プリクソスを迎えて娘カルキオペを妻に与えた。プリクソスは雄羊を逃走の守り神ゼウスにささげ、毛皮をアイエテスに贈り、アイエテスはそれをアレスの森の樫の木に釘で打ちつけた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アルゴナウタイはカウカソスを過ぎてコルキスのパシス川に着いた。アイエテスは、ヘパイストスから贈られた青銅の足で火を吐く二頭の牡牛にくびきをかけ、竜の歯をまくことを毛皮の条件とした。竜の歯は、カドモスがテーバイでまいた歯の半分をアテナから得たものだった。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
アイエテスとオケアノスの娘イデュイアの娘で魔女のメデイアはイアソンに恋をし、ギリシャへ連れて行き妻にすると誓わせて、父に隠れて盾・槍・体に塗る薬を与えた。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
ヘロドトスが伝えるペルシャの物知りたちの説では、フェニキア人がアルゴスの王女イオを連れ去ったのに続いて、ギリシャ人が長い船でコルキスの町アイアとパシス川へ行き、王の娘メデイアを連れ去った。コルキスの王が償いと返還を求めると、ギリシャ人はイオのことで償いがなかった以上、償いはしないと答えた。
ヘロドトス『歴史』 前430年頃
ヘロドトスは、コルキス人はエジプト人の出だと自分の目で見て考え、両方の民に尋ねたところ、コルキス人のほうがエジプト人をよく覚えていたと書く。
ヘロドトス『歴史』 前430年頃
コルチカム(イヌサフラン)・コルヒチン秋に花を咲かせる球根植物コルチカム(和名イヌサフラン)の属名は、ギリシャ語の「コルキスの」から。黒海の東の古い土地コルキスに生えていたことにちなむ。コルキスは、英雄イアソンがアルゴ号で金の羊毛を取りに行った国で、魔女メデイアの故郷でもある。球根や種にはコルヒチンという成分が含まれ、もとは毒をもつ植物だが、少量を痛風の薬として使ってきた。植物の品種改良にも使われる。古代ギリシャの医者ディオスコリデスは、コルチカムを毒キノコと同じ、毒のある植物として扱っていた。