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アテナ導き手オデュッセウス父ヘレネ王妃メネラオス訪ねた王キルケ後の妻ペネロペイア母ネストル老将メントル父の友
父の行方を探す旅で、ネストルのもとを発つテレマコス。

テレマコス

Τηλέμαχος英雄

父の行方を探す旅で、ネストルのもとを発つテレマコス。 『ネストルのもとを発つテレマコス』 ヘンリー・ハワードPublic domain

2026年のクリストファー・ノーラン監督の映画『オデュッセイア』で、トム・ホランドが演じたのが、英雄オデュッセウスの一人息子テレマコスだ。

原典の『オデュッセイア』は、父の顔を知らずに育ったこの息子から語り始める。

父がトロイアへ出征したとき、テレマコスは生まれたばかりだった。20年がたち、若者になった彼の家は、母ペネロペイアに言い寄る求婚者たちに占拠されていた。彼らは毎日館で宴を開き、家畜を食いつぶしている。テレマコスはその中に座って、いつか父が帰ってきて、あの連中を追い散らしてくれたらと思い描くばかりだった。

ある日、門口に見知らぬ客人が立った。父の古い友人だと名乗るその客は、実は女神アテナの変装である。客人に「本当にオデュッセウスの子か」と尋ねられて、テレマコスは答えた。母はそう言うが、自分では分からない。自分の親を確かに知っている者などいない、と。女神は彼をけしかけた。もう子どものようにふるまう年ではない。父の消息を探しに船で出かけ、それから求婚者をどう討つか考えよ。

テレマコスは動いた。父の出征以来、一度も開かれていなかった島の民会を招集し、求婚者たちの狼藉を皆の前で訴えた。そして乳母から旅の食料を受け取り、母には内緒で夜のうちに船出した。

最初に訪ねたのは、父と一緒にトロイアで戦った老将の国だった。続いてスパルタへ向かい、ヘレネの夫である王の館に迎えられる。名乗る前から、ヘレネが見抜いた。こんなによく似た人は見たことがない、あの人の息子のテレマコスに違いない。王も、足も手も目つきも髪も父親そっくりだと言った。ここでテレマコスは、父が女神の島に引き止められて生きている、という知らせを聞く。

父の消息を探して、老将の国に着いたテレマコス(右)。前を行く老人は、姿を変えた女神アテナ。
父の消息を探して、老将の国に着いたテレマコス(右)。前を行く老人は、姿を変えた女神アテナ。『メントルの姿のミネルウァとテレマコス、老ネストルの治めるピュロスに着く』 ジョン・フラックスマン(原画) 1810年Public domain

そのころ故郷では、求婚者たちが、帰ってくるテレマコスを海で待ち伏せて殺そうと船を出していた。アテナに警告されたテレマコスは道を変えて島に戻り、まっすぐ町へは行かず、忠実な豚飼いの小屋を訪ねた。

そこに、乞食の姿の老人がいた。豚飼いが町へ出かけたあと、アテナが杖で触れると、老人はみるみる若返り、立派な身なりの男になった。神ではないかとおびえるテレマコスに、男は告げる。私は神ではない。おまえの父だ。二人は抱き合って泣いた。雛を奪われた鷲や禿鷹よりも激しく声をあげて泣き、そのままでは日が暮れるところだった。

父と子は、求婚者を討つ策を練った。館の壁に掛かった武具を、テレマコスがこっそり奥の蔵へ運び込む。弓の試合の日には、テレマコス自身も弓に弦を張ろうとした。三度しくじり、四度目で張れそうになったところで、父の目配せを受けて手を止めた。

戦いが始まると、テレマコスは槍を取って父の横に立った。すべてが終わったあと、父子は田舎に暮らす祖父のもとを訪ねる。求婚者の身内が仕返しに押し寄せてきたとき、老いた祖父は、息子と孫が勇ましさを競い合うのを見て、なんという日だと喜んだ。

『オデュッセイア』の物語は、ここで終わる。その後のテレマコスについて、後の時代の叙事詩は、思いもよらない結婚を伝えている。

この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』、クリストファー・ノーラン監督『映画『オデュッセイア』』

この物語の人々

こういう風にも語られている

異伝: 『テレゴニア』の要約では、オデュッセウスの死後にテレマコスはキルケと結婚し、テレゴノスはペネロペイアと結婚したとされる。ホメロスの外での後日談。

エウガンモン(伝)『テレゴニア』 前6世紀頃

ローマ以後の語り

現代解釈: クリストファー・ノーラン監督の映画『オデュッセイア』(2026年)でトム・ホランドが演じる。原作よりも父子の関わりが前面に出ていると報じられている。

クリストファー・ノーラン監督『映画『オデュッセイア』』 2026年7月17日公開

もっと詳しく

父について問われ「母はわたしを彼の子だと言うが、自分では分からない。自分の親を確かに知る者などいない」と答える。父の不在が主題であることを冒頭で示す台詞。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

1〜4歌は「テレマキア(テレマコスの物語)」と呼ばれ、イタケの集会招集(2歌)、ピュロスのネストル訪問(3歌)、スパルタのメネラオス訪問(4歌)と続く。主人公オデュッセウスは5歌まで登場しない。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

オデュッセウス出征以来20年ぶりにイタケの民会を招集し、求婚者の狼藉を公に訴える。父の不在のあいだ一度も集会が開かれていなかったことが語られる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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エウマイオスの小屋で父と再会する。アテナの手で姿を戻したオデュッセウスを、テレマコスは最初は神だと思って恐れる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

弓の試技で自らも弦を張ろうとし、三度失敗して四度目で張れそうになるが、父の合図で手を止める。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

アテナはタポス人の長メンテスの姿で館を訪れ、テレマコスに父の消息を尋ねる旅と、求婚者を討つ算段をするよう勧める。子どもじみたことをする年ではないと言い、父の仇を討ったオレステスを引き合いに出す。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

スパルタで、ヘレネは名乗る前のテレマコスを、オデュッセウスにあまりに似ているのでその息子に違いないと見抜き、メネラオスも足・手・目つき・髪がそっくりだと同意する。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

父と子は抱き合って、雛を奪われた海鷲や禿鷹よりも激しく泣いた。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

求婚者の身内との戦いの前、ラエルテスは息子と孫が勇ましさを競い合うのを見て、なんという日かと喜ぶ。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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このページの出典(3件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  2. 前6世紀頃エウガンモン(伝)『テレゴニア』
  3. 2026年7月17日公開クリストファー・ノーラン監督『映画『オデュッセイア』』