ホメロスの外の経歴: アポロドーロスのアルゴ船遠征隊の一覧に「アルケイシオスの子ラエルテス」の名が挙がる。『オデュッセイア』にこの経歴の記述はない。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
Λαέρτης人間
ぶどう畑で、みすぼらしい老人が一人、苗木の根もとを掘っている。継ぎはぎだらけの汚れた上着に、とげよけの革の脛当てと手袋、頭には山羊皮の帽子。それが、20年ぶりに帰ってきたオデュッセウスの見た、父の姿だった。
英雄オデュッセウスの父ラエルテス。『オデュッセイア』の最後の場面で、ようやく表舞台に立つこの老人の物語を、たどってみよう。
ラエルテスは、かつてイタケの島を治めた王である。息子がトロイアへ出征したあと、帰らぬ息子を嘆いて町に下りてこなくなった。冥界でオデュッセウスに会った母は、父の様子をこう伝えている。田舎の農園にこもり、寝台も毛布もなく、冬は下男たちと炉ばたの灰の上で眠り、夏はぶどう畑の落ち葉を寝床にして、あなたの帰りを思って嘆いている、と。その妻も、息子を待ちきれずに死んだ。
館では、嫁のペネロペイアが、この義父の死に装束を織り上げるまで再婚は待ってほしいと言って、求婚者たちを3年もかわしていた。孫が父を探しに船出したと聞いてからは、食べることも飲むこともやめ、座りこんで泣き、骨の上の肉が落ちていったという。
求婚者たちを討ち果たした翌日、オデュッセウスは町を出て、父の農園を訪ねた。変わり果てた父を見て、オデュッセウスは梨の木の下に立ち止まり、涙を流した。すぐに抱きしめて打ち明けるか、それとも先に試してみるか。迷ったすえ、彼は後者を選んだ。旅の者のふりをして、かつてオデュッセウスという客をもてなしたことがある、と作り話をした。
息子の名を聞いた老人は、黒い土を両手ですくって、白髪頭にかけて呻いた。それを見たオデュッセウスは、胸に鋭い痛みが走り、父に飛びついて口づけした。父上、あなたが尋ねているその男が、私です。20年目に帰ってきました。
ラエルテスは、しるしを見せよと言った。オデュッセウスは、若いころに猪の牙で負った膝の傷跡を見せた。それから、幼いころ父と庭を歩きながら、ねだって一本ずつもらった木を数え上げた。梨の木が13本、林檎が10本、無花果が40本。ぶどうの列も50約束してくれた。聞いているうちに老人の膝から力が抜け、息子に抱きついて気を失った。
その日のうちに、殺された求婚者の身内たちが仕返しに押し寄せてくる。ラエルテスも武具を身につけた。息子と孫が勇ましさを競うのを見て、なんという日だと喜んだ老人に、女神アテナが力を吹き込む。ラエルテスが投げた槍は、求婚者の頭目の父親の兜を貫いた。『オデュッセイア』の中で最後に人を倒すのは、この老人である。
後の時代のアポロドーロスは、英雄たちが乗り組んだアルゴ船の遠征隊の名簿に、ラエルテスの名を挙げている。『オデュッセイア』には、そうした若き日の冒険の話は出てこない。
この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
ホメロスの外の経歴: アポロドーロスのアルゴ船遠征隊の一覧に「アルケイシオスの子ラエルテス」の名が挙がる。『オデュッセイア』にこの経歴の記述はない。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
息子を嘆いて町に下りず、田舎の農園で下男たちと暮らし、冬は灰の上で眠ると語られる。オデュッセウス不在のイタケの荒廃を体現する人物。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
最後の再会の場面で、オデュッセウスは猪の牙の傷跡に加えて「幼い頃あなたが庭でくれた木」を梨13本・林檎10本・無花果40本と数え上げて父に証明する。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
アテナに力を吹き込まれ、アンティノオスの父エウペイテスを槍で討つ。『オデュッセイア』で最後に人を殺すのはこの老人である。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
ペネロペイアが織り続けたと称した経帷子は、このラエルテスのためのものだった。「いつか死ぬ日のために」という口実が3年引き延ばしを可能にした。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
ぶどう畑で苗木の根もとを掘るラエルテスは、継ぎはぎの汚れた上着に、ひっかき傷よけの牛革の脛当て、とげよけの手袋、山羊皮の帽子という姿だった。オデュッセウスは梨の木の下で涙を流し、すぐに名乗るか先に試すか迷って、試すことにした。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
息子の消息を尋ねた作り話を聞いて、ラエルテスは黒い土を両手ですくって白髪頭にかけて呻き、それを見たオデュッセウスは抱きついて名乗った。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
テレマコスがピュロスへ船出してから、ラエルテスは食べることも飲むことも畑の見回りもやめ、座って泣き、骨から肉が落ちていったとエウマイオスが語る。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
24.205-360 先代の王。老いて田舎の農園に退いている
Met. 8.315「ペネロペの舅」/ 173。オデュッセウスの父。アポロドーロスの名簿には無い