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オデュッセウス育てた子テレマコス育てた子ペネロペイア奥様ラエルテス買い主アテナ女神ペネロペイアの求婚者たち居座る者
乞食姿でイタケに帰ったオデュッセウスに、老いた乳母エウリュクレイアが気づく場面。エドワード・ポインターの周辺の画家の作。

エウリュクレイア

Εὐρύκλεια人間

乞食姿でイタケに帰ったオデュッセウスに、老いた乳母エウリュクレイアが気づく場面。エドワード・ポインターの周辺の画家の作。 『イタケで老いた乳母エウリュクレイアに気づかれる乞食姿のオデュッセウス』 エドワード・ポインターの周辺の画家 制作年不明Public domain

20年ぶりに故郷の館へ帰った英雄オデュッセウスは、みすぼらしい乞食の姿をしていた。妻でさえ、目の前の男が夫だと気づかない。その正体を最初に見抜いた人間は、足を洗ってくれた年老いた乳母だった。名はエウリュクレイア。

では、英雄を赤子のころから知っていたこの乳母が、どんな人だったのか、見ていこう。

エウリュクレイアは、オデュッセウスの家に仕える女奴隷である。まだ若い娘だったころ、オデュッセウスの父が牛20頭分の値で買い取った。父は彼女を妻と同じように大切にしたが、妻の怒りを恐れて、床を共にすることはなかったという。

オデュッセウスが生まれたとき、赤子を母方の祖父の膝に乗せて、この子に名前をつけてくださいと頼んだのも彼女だった。のちに彼女は、オデュッセウスの息子テレマコスも育てた。二代にわたって、この家の男の子を育てた乳母である。

主人のいない20年のあいだ、館には妻に言い寄る男たちが居座っていた。息子テレマコスが父の消息を求めて旅に出ようとしたとき、エウリュクレイアは泣いて止めた。あなたはたった一人の大事な子なのに、なぜ広い世界へ出ていくのですか。お父上は遠い国で亡くなってしまった。あなたがいなくなれば、あの男たちはあなたを亡き者にする企みを練るでしょう。テレマコスは、神のお導きだから心配するなと言い、母には11日か12日たつまで黙っていてほしいと頼んだ。乳母は神々にかけて誓い、旅の酒と粉を用意してやった。

そして、乞食姿の主人が帰ってくる。妻は客をもてなすため、老いた乳母に足を洗わせた。エウリュクレイアは、この客がどこか主人に似ていると感じていた。盥の湯で足を洗ううち、膝の上の古い傷跡に手が触れた。少年のころ、祖父の家のある山で猪狩りをして、牙で裂かれた傷である。乳母は足を取り落とした。盥がひっくり返り、湯が床にこぼれた。喜びと悲しみが一度に押し寄せ、目に涙があふれた。あなたはオデュッセウス様。体に触れるまで、気づきませんでした。

乳母は妻のほうへ目をやろうとした。オデュッセウスはとっさに彼女の喉をつかんで引き寄せた。ばあや、私を破滅させる気か。誰にも言うな。乳母は、石か鉄のように口を固く閉ざしておきます、と答えた。すぐそばにいた妻は、女神アテナに心をそらされていて、何も気づかなかった。

求婚者たちが討ち果たされたあと、広間に転がる死体と血の海を見て、エウリュクレイアは勝ち誇った叫び声を上げかけた。オデュッセウスはそれを止めた。心の中で喜ぶのはいい。だが、殺された者の上で誇るのは、神々を恐れぬふるまいだ。

エウリュクレイアは、主人を裏切っていた召し使いの女たちを教えたあと、上の階の寝室へ駆け上がった。膝は軽く、足は小走りに、声を上げて笑いながら。起きてください、奥様。オデュッセウス様が帰ってきました。けれども妻は、ばあや、神々があなたの頭をおかしくしたのね、と取り合わなかった。

この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』

この物語の人々

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ラエルテスが若い頃に牛20頭の値で買い、妻と同じだけ大切に扱ったが、妻の怒りを恐れて床は共にしなかった、と紹介される。『オデュッセイア』で奴隷の値段が具体的に示される数少ない箇所。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

乞食姿の客の足を洗っていて、膝の上の猪の牙の傷跡に触れて主人と気づき、盥を取り落とす。物語はここで数十行にわたり、パルナソスでの猪狩りの回想へ遡る。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

気づいた彼女をオデュッセウスは喉を掴んで黙らせ、誰にも言うなと命じる。同じ部屋にいたペネロペイアはアテナによって注意を逸らされていて気づかない。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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この傷跡の回想は、物語を途中で止めて過去に遡り、また現在に戻る叙述として古来注目されてきた。傷を負った猪狩りと、祖父アウトリュコスによる命名の由来が同じ回想の中で語られる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

求婚者の死骸の中で喜びの声を上げようとした彼女を、オデュッセウスは「死者に対して誇るのは不敬だ」と制する。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

オデュッセウスが生まれたとき、エウリュクレイアは赤子を祖父アウトリュコスの膝に置き、名を付けてほしいと頼んだ。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

テレマコスが旅立とうとすると、エウリュクレイアは泣いて止めたが、母には11日か12日たつまで黙っていてくれと頼まれて神々にかけて誓い、旅の葡萄酒と大麦粉を用意した。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

求婚者殺しのあと、エウリュクレイアは館の50人の女奴隷のうち12人が恥知らずなふるまいをしたと主人に告げた。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

エウリュクレイアは笑いながら小走りに寝室へ上がり、ペネロペイアを起こして夫の帰還を告げたが、「神々がおまえを狂わせた」と信じてもらえなかった。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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このページの出典(1件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』