ギリシャ神話の地図
アテナ見守った女神オデュッセウス討った主人イタケ居座った島ペネロペイア求婚の相手テレマコス命を狙われた息子エウマイオス戦った豚飼いアンティノオス頭目エウリュマコスもう一人の頭目

ペネロペイアの求婚者たち

μνηστῆρες出来事

108人。英雄オデュッセウスが留守にしていたイタケの館に居座り、その妻ペネロペイアに結婚を迫っていた男たちの数である。息子のテレマコスが指を折って数えている。近くの三つの島から52人、24人、20人、そして地元イタケから12人。ほかに伝令や歌い手、給仕までついていた。

主のいない家に、なぜこれほどの男たちが押しかけたのか。そして、どんな結末を迎えたのか。『オデュッセイア』に沿って見ていこう。

トロイア戦争が終わっても、オデュッセウスは帰ってこなかった。もう死んだのだろう、と近隣の島々の貴族たちは考えた。残された妻ペネロペイアを妻にすれば、その財産も手に入る。彼らは毎日のように館に集まり、主人の家畜を屠っては宴を開き、酒を飲み、侍女たちに手を出した。客としてもてなしを受けるどころか、客のほうが主の家を食い潰していく。

ペネロペイアは、一つの口実でかわし続けた。義父のための死に装束を織り上げるまで、返事は待ってほしい。そして昼に織った布を、夜になるとこっそりほどく。この手で3年を稼いだが、4年目、侍女の告げ口で見破られ、織り上げざるをえなくなった。

機を織るペネロペイアのもとへ、求婚者たちが押しかけてくる。
機を織るペネロペイアのもとへ、求婚者たちが押しかけてくる。『ペネロペイアと求婚者たち』 ピントゥリッキオ 1509年ごろ ロンドン・ナショナル・ギャラリーPublic domain

求婚者の頭目は二人。一人は傲慢なアンティノオス、もう一人は口のうまい男だった。息子テレマコスが父の消息を探しに旅に出ると、アンティノオスは船を出して海峡で待ち伏せし、帰ってくるところを殺そうと企んだ。求婚が、殺意に変わった瞬間である。

待ち伏せは失敗し、テレマコスは無事に帰る。そして同じころ、オデュッセウスも乞食の姿で館に戻ってきていた。

求婚者の中にも、少しは心ある者がいる。乞食に身をやつしたオデュッセウスは、その一人に、主人はもうすぐ帰ってくる、その前に家へ帰れ、と遠回しに忠告する。男は胸騒ぎを覚えながらも、館を去らない。

破滅の前日、女神アテナは求婚者たちに、止まらない笑いを起こさせた。彼らは自分のものではないような顔で笑い、血のしたたる肉を食べ、目には涙があふれた。居合わせた予言者が叫ぶ。哀れな者たちよ、お前たちの頭も顔も夜の闇に包まれている。壁は血にまみれ、戸口も庭も冥界へ下る亡霊で満ちている、と。求婚者たちは、それを聞いて大笑いした。

翌日、ペネロペイアは夫の弓を持ち出して言った。この弓に弦を張り、並べた12本の斧の穴を射抜いた者に嫁ごう、と。求婚者たちは誰一人、弦を張ることさえできない。最後に弓を手にした乞食が、やすやすと弦を張り、一矢で斧の穴を射抜いた。

乞食は敷居の上に跳び上がると、杯を口に運ぼうとしていたアンティノオスの喉を射抜いた。そして名乗る。お前たちは、私がトロイアから帰らないと思い込み、私の家を食い潰し、侍女を辱め、私が生きているうちに妻に言い寄った。神々も人の憤りも恐れずに、と。

オデュッセウスと息子、それに忠実な豚飼いと牛飼いの4人が広間の出口を押さえ、求婚者たちを一人残らず討ち果たす。命を助けられたのは、無理に歌わされていた歌い手と、幼いテレマコスの世話をしてくれた伝令の二人だけ。求婚者と通じていた12人の侍女も、縛り首にされた。

広間で始まった主人の反撃。求婚者たちは、盾や器を手に逃げまどう。
広間で始まった主人の反撃。求婚者たちは、盾や器を手に逃げまどう。『ペネロペイアの求婚者たちへのオデュッセウスの復讐』 クリストファー・ヴィルヘルム・エッカースベア 1814年Public domain

殺された男たちの親族は、復讐のために武器を取る。ところが戦いが始まったところで女神アテナが割って入り、双方に和解の誓いを結ばせた。『オデュッセイア』は、この和解で幕を閉じる。

この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』

この物語の人々

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総勢108人。内訳はドゥリキオンから52人、サメから24人、ザキュントスから20人、イタケから12人で、ほかに伝令メドン、歌い手、給仕が2人いたとテレマコスが数え上げる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

毎日のように館で家畜を屠って宴を開き、酒を飲み、侍女たちに手を出した。主人不在の家の財を客が食い潰すという、歓待の掟の裏返しとして描かれる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

ペネロペイアは舅の経帷子を織り終えるまで返事を待てと告げ、昼に織って夜にほどくことで3年引き延ばした。侍女の密告で露見し、4年目に織り上げを強いられる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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アンティノオスの発案で、旅から戻るテレマコスをイタケとサメの間の海峡で待ち伏せて殺す計画が立てられ、実行されるが失敗する。求婚が殺意に変わる転換点。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

第22歌で、オデュッセウス、テレマコス、エウマイオス、牛飼いピロイティオスの4人が広間の入口を押さえて全員を討つ。命を助けられたのは歌い手ペミオスと伝令メドンの2人だけ。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

求婚者と通じた侍女12人は、死体を運び広間を掃除させられた後、テレマコスの手で縛り首にされる。ホメロスは彼女らの最期を鳥が罠にかかる比喩で短く描く。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

殺された者の縁者がエウペイテスを先頭に復讐に立ち上がるが、ラエルテスがエウペイテスを討ったところでアテナが戦いを止め、双方に誓いを結ばせる。『オデュッセイア』はこの和解で終わる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

オデュッセウスは殺害の理由として、神々を恐れず家の財を食い潰し、侍女を辱め、主人の妻に求婚したことを挙げる。私的な復讐ではなく掟の回復として語られている。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

オデュッセウスの復讐の前日、アテナは求婚者たちに消えない笑いを起こさせ、心を惑わせた。彼らは他人の顎で笑うように笑い、血にまみれた肉を食べ、目に涙があふれた。予言者テオクリュメノスが、お前たちの頭は夜に包まれ、壁は血にまみれ、戸口と庭は冥界へ向かう亡霊で満ちていると叫ぶと、求婚者たちは大笑いした。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

乞食姿のオデュッセウスは、求婚者の中で分別のあるアンピノモスに、主人はもうすぐ帰る、その前に家へ帰れと忠告する。アンピノモスは胸騒ぎを覚えつつ館を去らず、のちにテレマコスの槍で討たれる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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このページの出典(1件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』