出典 · ローマ期
祭暦
オウィディウス · 8年頃(未完) · Fasti
ローマの暦を1月から6月まで追い、祭日と星の出入りに合わせて神話を語る詩。オリオン誕生(5.493-544)、プレイアデスが6つしか見えない理由(4.169-178)、ミネルウァが笛を捨てた話(6.697-710)など、星座譚が多い。
この出典が語っていること
アマルテイア
- オウィディウス『祭暦』では、アマルテイアはクレタのイデ山で赤子のユピテルを隠したナイアス(水のニンフ)で、双子の子山羊の母である美しい雌山羊を飼っていた。その山羊が神に乳を与えた。 (5.111-121)
- 『祭暦』では、山羊が木に角をぶつけて折り、ニンフが角を新しい草で巻いて果物で満たし、ユピテルの口もとへ運んだ。王となったユピテルは乳母と「実りの角」を星にし、角は今もその主の名で呼ばれるという。 (5.121-128)
- オウィディウスは、5月1日の夜に昇る「オレノスの山羊(カペラ)」の星を、ゼウスに乳を与えた褒美として天を得た山羊だとする。 (5.111-114)
- 関係: foster_parent → zeus (『ゼウス讃歌』48-49、アポロドーロス1.1.7、『祭暦』5.115-121、ヒュギヌス『天文譜』2.13.5-6)
バウキスとピレモン
- オウィディウスは『祭暦』で、よく似た話をもう一つ書いている。ユピテルとネプトゥヌスとメルクリウスが旅の途中、ボイオティアの貧しい老人ヒュリエウスの小屋でもてなされる。酒を注ぐ順番のやりとりで客の一人がユピテルだと知った老人は、青ざめ、畑を耕す牛を犠牲にしてもてなし直す。願いを聞かれた老人は、亡き妻との誓いを守ったまま父になりたいと答え、神々の不思議な計らいで生まれた子がオリオンだった。貧しい老人が神々を知らずにもてなし、望みをかなえられるという同じ型が、片方は変身、片方は星座の由来になっている。 (『祭暦』5.493-544(もてなし 5.499-522、正体が知れる 5.511-516、願い 5.523-530))
マイア
- オウィディウス『祭暦』5巻は、5月の名の由来を三人のムーサに語らせる。ポリュムニアは「威厳(マイエスタス)」、ウラニアは「年長者(マイオレス)」、カリオペは、姉妹の中で最も美しくゼウス(ユピテル)と結ばれたマイアから、と説く。カリオペの話では、エウアンドロスとともにイタリアに来たメルクリウスが、母の名を月に与えた。詩人はどれか一つを選ばない。 (5.1-110(ポリュムニア9-52、ウラニア55-78、カリオペ79-106、結び107-110))
- 関係: child → atlas (『神統記』938、アポロドーロス3.10.1、『祭暦』5.83-84(母はプレイオネ))
マルシュアス
- オウィディウス『祭暦』では、ミネルウァ(アテナ)自身が語る。ツゲの木に穴をあけて最初の笛を作ったが、吹いている姿を水に映すと、処女の頬がふくらんでいた。「芸はそれほど大事ではない」と笛を捨て、岸に落ちた笛をサテュロスが拾い、吹き方を覚えてニンフたちの間で得意になり、ポイボスに挑んで負けた。 (6.697-710)
- 関係: enemy → apollo (アポロドーロス 1.4.2 音楽の勝負を挑む /『祭暦』6.707「ポイボスに挑み、負けて吊るされた」)
オリオン
- 死に方(3)サソリ: アラトスは「昔の人の話」として、オリオンがキオス島でオイノピオンのために獣を狩っていたとき、アルテミスの衣に手をかけようとしたので、女神が島の丘を割ってサソリを出し、刺し殺させたと歌う。だからサソリ座が昇るとオリオン座は地の果てへ逃げる、という星の動きの説明になっている。オウィディウス『祭暦』では、どんな獣にも負けないと豪語したオリオンに大地がサソリを差し向け、サソリが双子の母ラトナ(レト)を刺そうとしたところにオリオンが立ちはだかった。ラトナはその功に報いて、彼を星々に加えた。 (アラトス『星辰譜』634-646 /『祭暦』5.537-544)
- オウィディウス『祭暦』の誕生譚: ユピテル、ネプトゥヌス、メルクリウスが、ボイオティアの貧しい老人ヒュリエウスにもてなされ、亡き妻との誓いを守ったまま父になりたいという願いを聞く。三神は犠牲にした牛の皮を使い、語り手自身が「これ以上言うのは恥ずかしい」とぼかすやり方で子を授けた。10か月後に生まれた子を、老人はその生まれ方にちなんでウリオンと呼び、頭の文字が変わってオリオンになった、と言葉遊びで結ぶ。旅の神々をもてなした老人が報われる型は、同じオウィディウスの『変身物語』のバウキスとピレモンと同じ。 (5.493-536(名の由来 5.535-536))
- 関係: companion → artemis (『祭暦』5.537-538 デリア(アルテミス)が彼を仲間に選び、女神の護衛・従者になった)
プレイアデス
- オウィディウス『祭暦』は理由を二つ挙げる。一つは、6人は神々と交わったが、メロペだけは人間のシシュポスに嫁いだのを恥じて隠れているから。もう一つは、エレクトラがトロイアの滅びるのを見ていられず、手で目を覆ったから。エレクトラはトロイア王家の祖ダルダノスの母なので、子孫の国の滅亡を嘆いたことになる。 (4.169-178)
- 関係: child → atlas (アポロドーロス 3.10.1(アトラスとプレイオネの7人の娘、アルカディアのキュレネで生まれる)/『仕事と日』383 /『祭暦』5.83-84)
- 関係: lover → zeus (マイア、エレクトラ、タユゲテ。アポロドーロス 3.10.1「ゼウスはほかの娘たちとも交わった」/『祭暦』4.174)
- 関係: lover → poseidon (ケライノとアルキュオネ。アポロドーロス 3.10.1 /『祭暦』4.173)
- 関係: lover → ares (『祭暦』4.172 ステロペはマルス(アレス)と交わったという。アポロドーロス 3.10.1 ではステロペはオイノマオスの妻)
- 関係: spouse → sisyphus (メロペがシシュポスの妻。アポロドーロス 3.10.1、1.9.3 /『祭暦』4.175)
プリアポス
- オウィディウス『祭暦』では、ギリシャのディオニュソスの祭りに集まったニンフのうち、プリアポスはロティスに恋をするが相手にされない。夜、眠るロティスに忍び寄ったところ、シレノスを乗せてきたロバが鳴き、ロティスは彼を突きのけて逃げ、プリアポスは月明かりの下で皆の笑いものになった。ロバが田野の番人プリアポスへの生贄とされるのはこのためだという。 (1.391-440)
- 『祭暦』6巻では、神々の母キュベレがイダ山で開いた宴で、眠っていたウェスタ(ヘスティア)にプリアポスが忍び寄るが、シレノスのロバが鳴いて女神が目を覚まし、プリアポスは逃げ去る。詩人は、相手をニンフと思ったのかウェスタと知っていたのかは分からない(本人は知らなかったと言う)とする。ランプサコスではロバをプリアポスに捧げ、ローマのウェスタの祭りではロバにパンの首飾りをかける、と由来を説く。 (6.309-348)
ゼピュロス
- オウィディウス『祭暦』では、花の女神フローラが、もとはギリシャのニンフ、クロリスだったと語る。春に歩いていたところをゼピュロスに見つかって追われ、力ずくで奪われた(兄ボレアスもエレクテウスの家から花嫁を奪っていた)。ゼピュロスは彼女を妻として償い、彼女の庭を花で満たして、花をつかさどる女神にした。ラテン語のフローラは、ギリシャ語の名クロリスの音が崩れたもの、とフローラ自身が言う。 (5.195-212)
- 関係: sibling → boreas (『神統記』378-380、『祭暦』5.203 「兄弟ボレアス」)