英語 trident(15世紀半ば)は、ラテン語 tridens「三本の歯の」から。dens「歯」は dentist と同じ語根。1972年以降はアメリカの原子力潜水艦の艦級名にも使われた。
ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)
τρίαινα物品
英語で三叉の槍をトライデントという。ラテン語で「三本の歯」という意味で、歯医者を指す dentist と同じ「歯」の言葉が入っている。三本の歯を持つ槍は、昔から海の神ポセイドン、ローマでいうネプトゥヌスの持ち物として知られてきた。
この槍は、神々の世代交代の戦いのさなかに海の神の手に渡った。アポロドーロスによれば、ゼウスたちがティタンの神々と戦っていたとき、地の底から解き放たれた一つ目の巨人キュクロプスたちが、お礼に武器を贈った。ゼウスには雷と稲妻、冥界の神ハデスには姿を隠す兜、そしてポセイドンには三叉の槍を。勝ったあと三兄弟がくじを引いて世界を分けると、海はポセイドンのものになった。ローマの詩人ウェルギリウスの『アエネイス』でも、ネプトゥヌスは勝手に嵐を起こした風たちを叱りつける。海の支配と、この恐ろしい三叉の槍をくじで得たのは、お前たちの王ではない、私なのだ、と。
ホメロスの詩で、槍は海と大地を揺さぶる道具として描かれる。トロイア戦争が終わったあと、ポセイドンは槍を手に川の水を率い、ギリシャ軍が浜に築いた防壁を、土台の木や石ごと海へ押し流した。『オデュッセイア』では、嵐から助かった英雄の一人が、神々に逆らっても自分は助かったと大口をたたく。それを聞いたポセイドンは槍をつかみ、男が座っていた岩を打ち割った。割れた岩もろとも、男は海に沈んだ。筏で海を渡るオデュッセウスを見つけたときも、ポセイドンは雲を集め、槍で海をかき回して、あらゆる風を吹き起こした。
槍は、陸にもしるしを残した。女神アテナとアテナイの町を争ったとき、ポセイドンはアクロポリスの岩山の真ん中を槍で打ち、海の水を湧き出させた。けれど町はオリーブを植えたアテナのものと決まる。怒ったポセイドンは、あたりの平野を海水に沈めた。2世紀の旅行家パウサニアスは、アクロポリスの神殿の中に海水をたたえた水槽があり、南風が吹くと波の音がすること、そして岩に三叉の槍の跡が残っていることを書き留めている。

ローマの詩人ウェルギリウスは、ネプトゥヌスが大きな三叉の槍で大地を打ったとき、いななく最初の馬が飛び出した、と書いた。ローマの神話集によれば、父の言いつけで水を探しに出た王女が、サテュロスに襲われかけて海の神に救われたとき、神の投げた槍が岩に突き刺さった。王女が槍を引き抜くと、そこから三筋の水が湧き出したという。
大洪水にも、この槍は一役買っている。オウィディウスの『変身物語』で、人類を滅ぼすと決めたゼウスに加勢した海の神は、槍で大地を打った。大地は震え、水の通り道を開いた。水が引くときには、神は三叉の槍を置いて波をなだめた。
そして、トロイアが落ちる夜。『アエネイス』で、燃える町を見せられた英雄は、ネプトゥヌスが大きな三叉の槍で城壁と土台を揺さぶり、町を根こそぎ崩しているのを目にする。その城壁は、『イリアス』によれば、かつてポセイドン自身が築いたものだった。
この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ホメロス『オデュッセイア』、ウェルギリウス『農耕詩』、ウェルギリウス『アエネイス』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』、パウサニアス『ギリシア案内記』、ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』
英語 trident(15世紀半ば)は、ラテン語 tridens「三本の歯の」から。dens「歯」は dentist と同じ語根。1972年以降はアメリカの原子力潜水艦の艦級名にも使われた。
ダグラス・ハーパー『オンライン語源辞典』 2001年〜(2026年9月閲覧)
アポロドーロスでは、ティタンとの戦いの10年目、ゼウスがタルタロスの番人カンペを殺してキュクロプスたちを解き放つと、彼らはゼウスに雷と稲妻、プルトン(ハデス)に兜、ポセイドンに三叉の槍を与えた。勝ったあと三兄弟はくじで支配を分け、ポセイドンは海を得た。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『アエネイス』でネプトゥヌスは、勝手に嵐を起こした風たちに「海の支配と恐ろしい三叉の槍は、アイオロスではなく、くじで私に与えられたのだ」と言い、三叉の槍で座礁した船を持ち上げる。
ウェルギリウス『アエネイス』 前19年頃
ウェルギリウス『農耕詩』は、ネプトゥヌスの大きな三叉の槍に打たれた大地が、いななく最初の馬を生み出したと語る。
ウェルギリウス『農耕詩』 前29年頃
ヒュギヌスでは、水を探しに出たダナオスの娘アミュモネがサテュロスに襲われ、ネプトゥヌスに救われる。神が投げた三叉の槍が岩に刺さり、アミュモネが引き抜くと三筋の水が湧いて、アミュモネの泉(レルネの泉)となった。アポロドーロスは、ポセイドンがアミュモネにレルネの泉を教えたとだけ書く。
ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』 1〜2世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
オウィディウスの洪水では、ネプトゥヌスが三叉の槍で大地を打つと、大地は震えて水の通り道を開いた。水を引かせるときには、三つ先の武器を置いて波をなだめる。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
『イリアス』では、トロイア落城後、ポセイドンが三叉の槍を手に、アポロンが向けた川の流れを率いて、アカイア勢の防壁の土台を海へ押し流す。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
『オデュッセイア』では、神々に逆らって助かったと豪語した小アイアスを、ポセイドンが三叉の槍でギュライの岩を割って海に沈める。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
ポセイドンは筏のオデュッセウスを見つけると、雲を集め、三叉の槍で海をかき乱してあらゆる風を起こす。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
アポロドーロスでは、ポセイドンはアクロポリスの真ん中を三叉の槍で打って「エレクテイスの海」を湧かせたが、ケクロプスの証言によりオリーブを植えたアテナに土地が与えられ、怒ってトリアシオン平野を水浸しにした。パウサニアスは、エレクテイオンの中に南風で波音を立てる海水の水槽があり、岩に三叉の槍の跡があると記す。ヘロドトスも、アテナとポセイドンの争いのしるしとしてオリーブの木と塩水の池を挙げる。
ヘロドトス『歴史』 前430年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃、パウサニアス『ギリシア案内記』 2世紀
『アエネイス』で、ウェヌスに目を開かれたアイネイアスは、ネプトゥヌスが大きな三叉の槍でトロイアの城壁と土台を揺さぶり、町を根こそぎ崩す姿を見る。『イリアス』では、この城壁はポセイドンとアポロンがラオメドンのために築いたものだった。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ウェルギリウス『アエネイス』 前19年頃
1.2.1 この武器を得た神々がティタンを破る