ギリシャ神話の地図
プリアモス息子ポセイドン被害者アポロン被害者ヘラクレス被害者ガニュメデス美少年ティトノス息子トロイア治めた都

ラオメドン

Λαομέδων人間

トロイアは、トロイア戦争の前に一度、落とされている。攻めたのは英雄ヘラクレス。原因をつくったのは、当時のトロイアの王ラオメドンだった。この王は、神にも英雄にも、約束した報酬を払わなかったのである。

では、二度も約束を破った王ラオメドンの物語を見ていこう。

ラオメドンは、トロイア戦争のときの老王プリアモスの父である。あるとき、ゼウスの命令で、海の神ポセイドンと弓の神アポロンが、一年のあいだ決まった報酬で、この人間の王に仕えることになった。ポセイドンはトロイアの町のまわりに、広く美しい城壁を築いた。決して破られないようにと。アポロンは、山のふもとで王の牛を飼った。

ところが年季が明けると、ラオメドンは報酬をまるごと踏み倒した。それどころか、二人を脅して追い返した。手足を縛って遠い島へ奴隷として売り飛ばしてやる。青銅の刃で二人の耳をそぎ落としてやる。

この話は、『イリアス』の中でポセイドン自身が語っている。トロイア戦争のさなか、ポセイドンはアポロンに言う。あのとき二人でどんな目にあったか、忘れたのか。それなのにお前は、あの王の民に味方するのか。ポセイドンがギリシャ軍の側に立ち続けるのは、この恨みがあるからだった。

神々の怒りは、トロイアに災いとなって降りかかった。アポロドーロスの伝えでは、アポロンが疫病を送り、ポセイドンは海の怪物を送り込んで人々をさらわせた。神託は告げた。王の娘を怪物の餌として差し出せば、災いは止む。ラオメドンは娘を海辺の岩に縛りつけた。

そこへ通りかかったのが、ヘラクレスだった。娘を救うかわりに、名馬をもらいたい。ゼウスがかつて、ひとりの美少年を天へさらった代償に、この王家に与えた馬である。ラオメドンは承知した。ヘラクレスは怪物を倒して娘を救ったが、王はまたしても約束を破った。ヘラクレスは、いずれトロイアを攻めると言い残して去った。

やがてヘラクレスは、18隻の船に勇士たちを乗せて戻ってきた。城壁を最初に破ったのは、仲間の英雄のひとりだった。ヘラクレスはトロイアを落とし、ラオメドンと息子たちを射殺した。

ただひとり、末の息子だけが生き残った。捕虜の中から誰でも一人連れて行ってよいと言われた王の娘は、この弟を選んだ。ヘラクレスは言った。まず奴隷となり、それからお前が買い戻さなければならない。娘は頭のヴェールを外して身代金として差し出した。こうしてその子は「買われた者」という意味の名で呼ばれるようになる。それが、のちのトロイア王プリアモスだという。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』

この物語の人々

ローマ以後の語り

神々の怒りで海獣が現れ、娘ヘシオネを生贄に差し出すことになる。通りかかったヘラクレスが、ゼウスがガニュメデスの代償に与えた名馬と引き換えに娘を救うが、ラオメドンはまたも約束を破った。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃、ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』 1〜2世紀頃

この時に唯一生き残った末子ポダルケスを、姉ヘシオネがヴェールと引き換えに買い戻した。そのため「買われた者」を意味するプリアモスと呼ばれるようになったとされる。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ラオメドンに報酬を踏み倒されたアポロンは疫病を、ポセイドンは海の怪物を送った。神託に従ってラオメドンは娘ヘシオネを海辺の岩に縛りつけ、ヘラクレスが名馬と引き換えに救った。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

ヘラクレスは18隻の船でトロイアを攻め、テラモンが最初に城壁を破って入った。ヘラクレスはラオメドンと息子たちを射殺し、ヘシオネをテラモンに与えた。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

もっと詳しく

ポセイドンとアポロンが一年の約束で仕え、ポセイドンは城壁を築き、アポロンは牛を飼った。期限が来たとき、ラオメドンは報酬を渡さないばかりか、耳を削ぎ手足を縛って奴隷に売ると脅した。『イリアス』でポセイドン自身が語る回想。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

怒ったヘラクレスは軍を率いて戻り、トロイアを陥落させてラオメドンと息子たちを殺した。『イリアス』でもトレポレモスが父ヘラクレスの手柄として語る。トロイア戦争より前にトロイアは一度落ちている。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

この約束破りは『イリアス』において、ポセイドンがトロイアを憎みギリシャ側に立つ理由として機能している。戦争の原因をパリスの審判だけに帰さない、もう一つの因果の筋。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

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このページの出典(3件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  3. 1〜2世紀頃ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』