レムノスの女たちがアプロディテを敬わなかったため、女神は彼女たちに悪臭を与え、夫たちは隣のトラキアから女をさらってきて共に寝た。辱められた女たちは父と夫を殺したが、トアスの娘ヒュプシピュレだけは父を隠して救った。アルゴナウタイが来たとき島は女王ヒュプシピュレが治めていて、一行は女たちと交わり、ヒュプシピュレはイアソンとのあいだにエウネオスとネブロポノスを産んだ。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
Λῆμνος場所
神々の王ゼウスに足をつかまれ、天の敷居から放り投げられた神がいる。鍛冶の神ヘパイストスである。ホメロスの『イリアス』で、ヘパイストス自身が母ヘラにこう語っている。まる一日、まっさかさまに落ち続け、日が沈むころ、レムノスに落ちた。息も絶え絶えだったわたしを、島の人々がすぐに介抱してくれた、と。
レムノスは、エーゲ海の北に浮かぶ島である。
この島は、落ちてきた神にとって、いちばん大切な土地になった。『オデュッセイア』で、妻アプロディテの密会に気づいたヘパイストスは、寝台に見えない網を仕掛けると、レムノスへ出かけるふりをする。そこは、神の目にはあらゆる土地の中でいちばん愛しい、立派な城のある島だった。

神話集を書いたアポロドーロスによれば、この島にはかつて、女たちだけの時代があった。島の女たちが愛の女神アプロディテを敬わなかったので、女神は彼女たちにひどい臭いを与えた。夫たちは近くのトラキアから女たちをさらってきて、そちらと暮らすようになる。辱められた女たちは、父や夫を皆殺しにしてしまった。ただひとり、王女だけは、父を隠して命を救った。
そこへ、金の羊毛を求めるイアソンとアルゴ船の一行がやって来る。女たちだけの島で、英雄たちは女たちと暮らし、王女はイアソンとのあいだに息子たちを産んだ。『イリアス』では、その息子の一人が、トロイアを囲むギリシャ軍の陣へ、レムノスから船でぶどう酒を送り届けている。
トロイア戦争には、この島に置き去りにされた英雄もいた。弓の名手である。『イリアス』によれば、毒のある水蛇に噛まれた傷がひどく痛み、ギリシャの兵たちは、苦しむ彼を聖なるレムノスに残して船出した。けれどもギリシャ軍は、やがて彼を思い出すことになる、と詩は予告している。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ホメロス『オデュッセイア』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
レムノスの女たちがアプロディテを敬わなかったため、女神は彼女たちに悪臭を与え、夫たちは隣のトラキアから女をさらってきて共に寝た。辱められた女たちは父と夫を殺したが、トアスの娘ヒュプシピュレだけは父を隠して救った。アルゴナウタイが来たとき島は女王ヒュプシピュレが治めていて、一行は女たちと交わり、ヒュプシピュレはイアソンとのあいだにエウネオスとネブロポノスを産んだ。
アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃
『イリアス』でヘパイストスは、母を救おうとしたとき、ゼウスに足をつかまれて天の敷居から投げ落とされ、まる一日落ち続けて日没にレムノスに落ち、わずかに息のあるところをシンティエス人に介抱されたと語る。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
『オデュッセイア』でヘパイストスは寝台に網を仕掛けたあと、神にとってあらゆる土地の中で最も愛しい、よく築かれた城のあるレムノスへ行くふりをした。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
『イリアス』では、イアソンとヒュプシピュレの子エウネオスが、レムノスから多くの船でギリシャ軍にぶどう酒を送り、アガメムノンとメネラオスには別に千杯分を贈った。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
ピロクテテスは、恐ろしい水蛇に噛まれたひどい傷のために、ギリシャ兵によって聖なるレムノスの島に苦しむまま残された。詩は、やがてアルゴス勢が彼を思い出すことになると告げる。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃