もとはヒュペレイアという土地で、乱暴なキュクロプス族の隣に住み、たびたび略奪されていた。王ナウシトオスが民を連れてスケリエへ移り、町を囲む壁と家と神殿を建てた。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

Φαίηκες人間
浜辺でオデュッセウスと出会う、パイアケス人の王女と侍女たち。ラストマンの絵。 『オデュッセウスとナウシカア』 ピーテル・ラストマン 1619年Public domain
オデュッセウスの漂流13 / 14イノ・レウコテアへ戻るイタケへ進む
宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の主人公の名は、ギリシャ神話の王女ナウシカアから取られている。その王女が暮らしていたのが、海の上の島に住む航海の民、パイエケス人の国である。
では、この不思議な民がどんな人々で、英雄オデュッセウスに何をしてくれたのか、『オデュッセイア』を開いてみよう。
パイエケス人は、はじめから島に住んでいたわけではなかった。もとは別の土地で、乱暴な一つ目の巨人キュクロプスたちの隣に暮らし、たびたび略奪に苦しめられていた。そこで王が民を率いて、遠く離れた島へ移り住み、町を壁で囲み、家と神殿を建てた。
その王の息子が、いまの王である。王の館は青銅の壁と黄金の扉で輝き、女たちは女神アテナから機織りの技を授かっていた。庭の果樹園では、ナシもザクロもリンゴもイチジクもオリーブも、冬も夏も実が絶えない。西風が吹くたびに、ある実は芽吹き、ある実は熟していく。
20年の旅の最後に、嵐で筏を砕かれたオデュッセウスは、たった一人でこの島の浜に泳ぎ着いた。浜で彼を見つけたのが、王女ナウシカアだった。王女の案内で館にたどり着いたオデュッセウスは、王と王妃に手厚くもてなされる。

宴では、盲目の楽人がトロイア戦争の歌をうたい、若者たちは競技で腕を競った。その席で、オデュッセウスはついに自分の名を明かし、これまでの冒険を語りはじめる。一つ目の巨人、魔女キルケ、冥界、セイレン。名高い冒険談のほとんどは、実はこの人々の宴で、主人公自身が語ったものである。
パイエケス人の自慢は、船だった。王によれば、彼らの船には舵取りも舵もいらない。船そのものが乗る人の考えを知り、世界中の町と畑を知っていて、霧に包まれて誰よりも速く海を渡る。
その船が、眠り込んだオデュッセウスを乗せて、夜の海を走った。船は鷹も追いつけないほどの速さで進み、夜明けには故郷イタケの浜に着いた。船乗りたちは、眠ったままの英雄をそっと浜に下ろし、贈り物を添えて帰っていった。
けれども、この親切には代償があった。英雄を憎む海の神ポセイドンは、帰ってきた船が港の目の前まで来たとき、船ごと石に変えて海の底に根づかせた。王は、父から聞いていた古い予言を思い出した。客を送り続ければ、いつかポセイドンの怒りを買う。それ以来、パイエケス人は誰も送らないと決めた。
この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』、宮崎駿『風の谷のナウシカ 第1巻(後書き)』
もとはヒュペレイアという土地で、乱暴なキュクロプス族の隣に住み、たびたび略奪されていた。王ナウシトオスが民を連れてスケリエへ移り、町を囲む壁と家と神殿を建てた。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
パイエケス人の船には舵取りも舵もいらない。船そのものが乗る人の考えを分かっていて、世界中の町と畑を知り、霧に隠れて一番速く海を渡る、とアルキノオスは自慢する。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
オデュッセウスを送り届けて戻る船は、港の目の前でポセイドンに石に変えられた。アルキノオスは、客を送り続けるとポセイドンの怒りを買うという父の予言が当たったと気づき、これからは誰も送らないと決める。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
9〜12歌の冒険談は、すべてこの人々の宴で語られたもの。キュクロプスもセイレーンも、聞き手はパイエケス人である。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
アルキノオスの果樹園では、ナシ、ザクロ、リンゴ、イチジク、オリーブの実が冬も夏も絶えず、西風がある実を芽吹かせ、ある実を熟させる。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃
パイエケス人の船は、死に似た深い眠りに落ちたオデュッセウスを乗せ、鷹も追いつけない速さで走り、夜明けにイタケに着く。船乗りたちは眠ったままの彼を浜に下ろし、贈り物を添えて去る。
ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃