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オデュッセウス聞き手ムーサ授け手アルキノオス王トロイアの木馬歌の題アレス歌の中アプロディテ歌の中ヘパイストス歌の中パイエケス人主人の民
アルキノオスの宮廷で、盲目の楽人がトロイアのオデュッセウスとアキレウスを歌い、それを聞いたオデュッセウスが涙を流す場面。フランチェスコ・アイエツの作。

デモドコス

Δημόδοκος人間

アルキノオスの宮廷で、盲目の楽人がトロイアのオデュッセウスとアキレウスを歌い、それを聞いたオデュッセウスが涙を流す場面。フランチェスコ・アイエツの作。 『アルキノオスの宮廷のオデュッセウス』 フランチェスコ・アイエツ 1814〜1815年Public domain

王の宴で、盲目の楽人が竪琴を手にトロイア戦争の歌を歌う。聞いていた名もない客人が、紫の衣を頭からかぶって、声を殺して泣いていた。客人は、その歌の主人公本人だった。

『オデュッセイア』に登場する楽人デモドコス。何度も英雄を泣かせたこの楽人の歌を、順に聞いてみよう。

デモドコスは、海の向こうの島に住む、船乗りの民の宮廷に仕えていた。芸術の女神ムーサは、誰よりもこの楽人を愛し、良いものと悪いものの両方を与えた。目の光を奪い、その代わりに甘い歌を授けたのである。宴になると、伝令が彼の手を引いて広間の中央の銀の鋲の椅子に座らせ、竪琴を頭のすぐ上の釘に掛けて、手探りで取れるように手を添えてやった。

漂流の末にこの島へたどり着いたオデュッセウスは、まだ名を明かさないまま、王の宴に招かれていた。デモドコスが最初に歌ったのは、トロイアの戦のさなか、神々の宴の席でオデュッセウスとアキレウスが激しく言い争った話だった。オデュッセウスは紫の衣で顔を隠し、人に見られないように涙を流した。歌がやむたびに涙をぬぐって神々に酒を注ぎ、歌が始まるとまた顔を覆った。気づいたのは、隣に座っていた島の王だけだった。王は歌をやめさせ、若者たちの競技に皆を誘い出した。

競技のあと、デモドコスは二つ目の歌を歌った。こんどは神々の笑い話である。軍神アレスと愛の女神アプロディテが、夫である鍛冶の神ヘパイストスの留守に密会し、ヘパイストスの仕掛けた目に見えない網に寝床ごと捕らえられ、集まった神々の大笑いの的になった、という話だ。オデュッセウスも島の人々も、楽しんで聞いた。

その夜の宴で、オデュッセウスは脂ののった猪の背肉を切り分け、伝令に命じてデモドコスに届けさせた。楽人は地上のどこでも尊ばれ敬われる、ムーサが歌の道を教え、楽人の一族を愛しているのだから、と。そして自分から頼んだ。あなたはまるでその場にいたかのように、ギリシャ勢の運命を歌う。では、木馬の話を歌ってくれ。職人が女神アテナの助けで作り、オデュッセウスが策略として丘の上の城へ運び込ませた、あの木馬を。

デモドコスは歌った。陣に火を放って船で去ったふりをしたギリシャ軍。木馬を丘の上の城へ引き上げ、割るか、落とすか、神への捧げ物にするかで言い争うトロイア人。夜に木馬から躍り出て町を荒らす兵たち。そして、アテナの助けで最も激しい戦いに勝ったオデュッセウス。

歌を聞くオデュッセウスは、倒れた夫にすがって泣き叫びながら、敵に槍で打たれて連れ去られる女のように、涙を流した。またしても気づいたのは王だった。王は歌をやめさせ、客人に尋ねた。あなたは誰なのか。なぜトロイアの歌を聞いて泣くのか。

オデュッセウスが名を明かし、自分の長い帰り道を語りはじめるのは、ここからである。

この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』

この物語の人々

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ムーサはこの詩人を誰よりも愛し、良いものと悪いものを両方与えた。目を奪い、甘い歌を授けたのである。伝令が竪琴を手の届く釘に掛け、手探りで取れるように導いてやる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

最初の歌は、神々の宴でオデュッセウスとアキレウスが激しく言い争った話。自分の話を歌われたオデュッセウスは、衣で顔を隠して泣く。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

二つめの歌は、アレスとアプロディテがヘパイストスの留守に密会し、見えない網にかかって神々の笑いものになる話。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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最後に、オデュッセウスは自分から「木馬の話を歌ってくれ」と頼む。デモドコスが歌い終えると、オデュッセウスはまた泣き、それに気づいたアルキノオスが名を尋ね、9歌からの長い回想が始まる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

オデュッセウスは猪の背肉を切り分けてデモドコスに贈らせ、楽人はムーサに歌の道を教えられて地上のどこでも敬われると言い、まるでその場にいたかのようにアカイア勢の運命を歌うと称えたうえで、木馬の歌を頼んだ。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

木馬の歌を聞いたオデュッセウスは、倒れた夫にすがって泣き、敵に槍で打たれて連れ去られる女のように涙を流した。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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このページの出典(1件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』