ギリシャ神話の地図
ナウシカア娘アルキノオス夫オデュッセウス嘆願した客アテナ助言した女神メデイア結婚させた魔女イアソン結婚させた英雄スケリエ(パイエケス人の国)治めた国パイエケス人治めた民

アレテ

Ἀρήτη人間

宮崎駿の『風の谷のナウシカ』の主人公の名は、ギリシャ神話の王女ナウシカアから取られている。そのナウシカアの母が、王妃アレテである。娘は浜辺で出会った漂流者に、こう助言した。館に着いたら、父である王の前は素通りして、まず母の膝にすがりなさい。

では、なぜ王ではなく王妃だったのか。『オデュッセイア』に描かれたアレテの姿を見ていこう。

アレテは、海の民が暮らす島の国の王妃だった。夫の王は、自分の兄の娘であった彼女を妻に迎え、地上で夫を持つどの女よりも深く敬った。民は、町を行く彼女を神を見るように仰ぎ、言葉をかけて迎えた。賢い心を持ち、男たちのもめごとさえ、彼女が裁いてやったという。

女神アテナも、娘と同じことをオデュッセウスに教えた。王妃の心をつかめれば、故郷へ帰れる望みが出てくる。

漂流の末にたどり着いたオデュッセウスは、館に入ると、言われたとおり王の前を通り過ぎ、王妃の膝を両腕で抱いて、帰国の助けを願った。宴の席は静まり返った。

客人が何者なのかを最初に問いただしたのも、アレテだった。彼女は、客の着ている衣に見覚えがあった。自分と侍女たちが織った布だったのだ。あなたは誰で、どこから来たのか。その衣は誰にもらったのか。こうしてオデュッセウスは、女神の島からの漂流と、王女に助けられたいきさつを語ることになる。

宴の席で、オデュッセウスは自分の冒険を語って聞かせた。冥界で出会った女たちの話まで来たところで、彼は語るのを止める。静まり返った席で、真っ先に口を開いたのはアレテだった。この方は私の客人。慌てて送り出してはならない。困っている人に、贈り物を惜しんではならない。この国の人々が彼に持たせた宝は、トロイアから無事に戦利品を持ち帰った場合よりも多かったという。

海の民の王の館で開かれた宴。赤い衣で立っているのがオデュッセウス。
海の民の王の館で開かれた宴。赤い衣で立っているのがオデュッセウス。『アルキノオスの宮廷のオデュッセウス』 フランチェスコ・アイエツ 1814〜1815年Public domain

出航の日、オデュッセウスは王妃の手に杯を渡して別れを告げた。いつまでもお元気で。この館で、子どもたちと民と王とともに喜びのうちに暮らされますように。アレテは侍女たちに、洗いたての衣と、頑丈な櫃と、パンと赤い葡萄酒を船まで運ばせた。

アレテの賢さは、別の英雄たちの物語にも出てくる。後の時代の神話集によれば、金の羊毛を手に入れたイアソンの一行がこの国に逃げ込み、魔女メデイアを引き渡せと追っ手に迫られたとき、アレテは夫が裁きを下す前に、先回りしてメデイアとイアソンを結婚させた。二人がすでに夫婦なら、娘を父親のもとへ返さなくてよいからだ。

この物語の出典: ホメロス『オデュッセイア』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、宮崎駿『風の谷のナウシカ 第1巻(後書き)』

この物語の人々

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「地上で夫に治められている女のうち、これほど敬われた者はない」と語られ、民は彼女を見るとき神を見るようにし、男たちの争いごとをも彼女が裁くとされる。ホメロスの女性像としては例外的に強い。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

アテナとナウシカアはともに、王ではなくまず王妃の膝に取りすがれとオデュッセウスに助言する。実際、彼は館に入るとアルキノオスを素通りしてアレテの膝を抱く。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

客が着ている衣が自分と侍女たちの手仕事であることに気づき、「その衣はどこで手に入れたのか」と最初に問い詰める。夫より先に核心を突く。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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冥界の物語が中断されたとき、真っ先に口を開いて「この客をあわてて送り出すな、贈り物を惜しむな」と貴族たちに促す。パイエケス人が持たせた宝はイタケの富を上回るとされる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

出航のとき、衣と黄金と食糧を持たせ、侍女に酒と衣の櫃を運ばせる。彼女の言葉がオデュッセウスへの最後のもてなしとなる。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

アレテは、客の衣が自分と侍女たちの作ったものだと気づき、「あなたは誰で、どこから来たのか。その衣は誰にもらったのか」と尋ねた。オデュッセウスはカリュプソの島からの漂流とナウシカアに助けられた経緯を語った。

ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

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このページの出典(2件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  2. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』