出典 · ローマ期
農耕詩
ウェルギリウス · 前29年頃 · Georgics
全4巻。第4巻の養蜂の話の中で、アリスタイオスの蜂が死んだ理由として、オルペウスとエウリュディケの物語(4.453-527)が語られる。
この出典が語っていること
アラクネ
- アラクネの物語をまとまった形で伝える古代の資料は、ほぼオウィディウスに限られる。少し前のウェルギリウスも、戸口に網を張る「ミネルウァに憎まれたクモ」という言い方をしており、クモと女神の対立という発想自体はオウィディウス以前からあったことがうかがえる。 (『農耕詩』4.246-247。「ほぼオウィディウスに限られる」は他資料の網羅的な確認をしていない)
カロン
- 関係: enemy → orpheus (妻を再び失ったオルペウスの二度目の渡河を拒む。『農耕詩』4.502-503 / Met. 10.72-73)
コイオス
- ウェルギリウス『農耕詩』は、月の五日目を凶日とする理由として、この日に冥界の神とエウメニデスが生まれ、大地がおぞましいお産でコイオスとイアペトスと荒々しいテュポエウスを産み、兄弟が山を積み上げて天を引き裂こうとした、と歌う。ヘシオドスではウラノスの子として最初の世代に置かれたコイオスが、ここではテュポエウスと並んで、天を攻める兄弟の一人に数えられている。 (1.276-283)
エウリュディケ
- ウェルギリウスの形: 川辺でアリスタイオスから逃げる途中、草むらの水蛇に気づかず噛まれて死ぬ。アリスタイオスの蜂が全滅したのはこの死の報いだった、という枠で語られる。夫が振り返った瞬間に「なんという狂気が私とあなたを滅ぼしたのか」と嘆き、煙のように消える。冥界の渡し守は、二度目の渡河をオルペウスに許さなかった。 (4.453-459(死)、4.494-502(嘆きと消失)、4.502-503(渡し守))
- ウェルギリウスでは、振り返られたエウリュディケは「なんという狂気が私とあなたを滅ぼしたのか。またむごい運命が呼び戻す。眠りが目を閉じる。さようなら。もうあなたのものではない手をあなたに差し伸べながら、大いなる夜に包まれて運ばれていく」と語り、煙が風に混じるように消える。 (4.494-500)
- 関係: spouse → orpheus (『農耕詩』4.465、4.486 / Met. 10.1-10 / 1.3.2)
- 関係: visited → underworld (死後の冥界。『農耕詩』4.486-503 / Met. 10.48-63、11.61-66)
- 関係: advisee → persephone (4.487 帰還の条件(振り返らないこと)を定めたのはプロセルピナ)
イクシオン
- ピンダロスは車輪がどこにあるかを言わないが、ローマの詩人たちは冥界の罰の一つとして描く。ウェルギリウスとオウィディウスはどちらも、オルペウスの歌を聴いてイクシオンの車輪が止まった、と書く。 (『農耕詩』4.484 / Met. 10.42)
- 関係: visited → underworld (ローマの詩人は車輪の罰を冥界に置く。『農耕詩』4.484 / Met. 10.42)
オルペウス
- ウェルギリウスとオウィディウスの形: 冥界の王と妃は歌に動かされ、「地上に出るまで振り返らない」という条件で妻を返す。出口の手前でオルペウスは振り返り、エウリュディケは再び冥界へ引き戻される。この結末がまとまった物語として読める現存の文学作品は、この二人のローマの詩人のものが最初期とされる。 (『農耕詩』4.485-503(振り返るのは 4.490-491)/ Met. 10.50-63 / アポロドーロス 1.3.2 も同じ条件と失敗を記す)
- 最期は、女を寄せつけなくなったオルペウスに怒ったトラキア(キコネス人)の女たちに八つ裂きにされる。首と竪琴はヘブロス川を流れながらなお嘆きの声を上げ、海を渡ってレスボス島に着いた。オウィディウスでは、亡霊となったオルペウスは冥界の「敬虔な者たちの野」でエウリュディケと再会し、今度は安心して振り返る。 (『農耕詩』4.516-527 / Met. 11.1-66(首と竪琴 11.50-55、再会 11.61-66)/ 1.3.2(マイナデスに引き裂かれピエリアに葬られる))
- 関係: spouse → eurydice (『農耕詩』4.465、4.486 / Met. 10.1-10 / 1.3.2)
- 関係: visited → hades (『農耕詩』4.467-470 / Met. 10.11-48 / 1.3.2(プルトンを説き伏せる))
- 関係: visited → persephone (『農耕詩』4.487 振り返らない条件を課したのはプロセルピナ(ペルセポネ) / Met. 10.15-16, 10.46-48)
- 関係: visited → underworld (『農耕詩』4.467-484 / Met. 10.11-63)
プリアポス
- ディオドロスによれば、人々は町の神殿だけでなく田舎でもぶどう畑や庭にプリアポスの像を立てて番をさせ、よいものに呪いをかける者を罰する神とした。ディオニュソスをはじめ多くの神々の祭りで、笑いと戯れのうちに迎えられた。ウェルギリウスは、蜂の庭に、柳の鎌で泥棒と鳥を見張るヘレスポントスのプリアポスを置けと勧める。 (ディオドロス4.6.4、『農耕詩』4.109-111)
プロテウス
- ウェルギリウス『農耕詩』では、カルパトスの海に住む青い予言者プロテウスは、過去・現在・未来のすべてを知り、ポセイドンの海獣の群れとアザラシを飼っている。蜂を失ったアリスタイオスは彼を縛りつけ、火や獣や流れる水に変わるのを耐えて原因を聞き出す。ホメロスのメネラオスの場面とそっくりの型。 (4.387-452)
セレネ
- ウェルギリウスによれば、アルカディアの神パンが雪のように白い羊毛を贈り物にして月の女神をだまし、森の奥へ誘った。女神はその誘いを拒まなかった。 (3.391-393)
三叉の槍(トライデント)
- ウェルギリウス『農耕詩』は、ネプトゥヌスの大きな三叉の槍に打たれた大地が、いななく最初の馬を生み出したと語る。 (1.12-14)
冥界
- ローマの詩人たちは冥界の入口を具体的な地名に置いた。オルペウスはペロポネソス南端のタイナロン(テナロン)の洞穴から下り、アイネイアスはイタリアのクマエ近く、アウェルヌス湖のほとりの洞窟から下る。 (『農耕詩』4.467 / Met. 10.13 /『アエネイス』6.237-242)