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息子の命の薪を火に投じるアルタイア。『変身物語』の挿絵。

アルタイア

Ἀλθαία人間

息子の命の薪を火に投じるアルタイア。『変身物語』の挿絵。 『アルタイア』 ヨハン・ヴィルヘルム・バウアー 1659年(刊)Public domain

カリュドンの猪狩り4 / 4

赤ん坊が生まれて間もなく、炉ばたに三人の運命の女神が現れた。女神たちは燃えている一本の薪を指して言った。この薪と、この子の命は、同じ長さだけ続く。女神たちが去ると、母は燃える薪を火から引き出し、水をかけて火を消し、館の奥深くにしまい込んだ。息子の命は、母の手の中にあった。

その母がアルタイアである。

では、自分の手で息子の命の火を消すことになった母の物語を見ていこう。

アルタイアは、カリュドンの王の妃である。息子はメレアグロス。娘には、のちに英雄ヘラクレスの妻となるデイアネイラがいた。

息子が成長したころ、国に巨大な猪が現れた。女神アルテミスが送り込んだ獣で、ギリシャ中の英雄が集まって狩りが行われた。猪を仕留めたのは息子のメレアグロスだった。アルタイアが、勝利を感謝する供え物を神殿へ運んでいたときのことだ。死んだ兄弟たちの亡骸が運ばれてくるのが見えた。

猟犬とともに、巨大な猪を囲む狩人たち。この猪の皮が、母と息子を引き裂く。
猟犬とともに、巨大な猪を囲む狩人たち。この猪の皮が、母と息子を引き裂く。『カリュドンの猪狩り』 ピントゥリッキオ 1509年ごろ メトロポリタン美術館Public Domain (The Met Open Access, CC0)

アルタイアは嘆きの叫びで町を満たし、金の衣を喪の黒い衣に着替えた。ところが、兄弟を殺したのが自分の息子だと聞かされると、涙は消え、悲しみは復讐への思いに変わった。猪の皮をめぐる争いで、息子が叔父たちを討ち取ったのである。

ローマの詩人オウィディウスは、ここからのアルタイアの迷いを長く描いている。しまっておいた薪を取り出し、火を起こさせる。4度、薪を炎に投げ入れようとして、4度、手を止めた。母としての思いと、姉としての思いが、一つの胸を引き裂く。顔は、これから犯す罪への恐れで青ざめ、怒りで赤くなった。

アルタイアは叫んだ。夫は勝った息子を得て喜び、私の父は息子たちを失って嘆くのか。いっそ二人とも嘆くがいい。けれども次の瞬間には、手が動かなくなる。あの子を産んだのは私なのに。私があのとき薪を火から救ったから、あの子は生きてこられたのに。

最後に、姉が母に勝った。アルタイアは顔を背け、震える手で薪を炎の真ん中に投げ入れた。薪は燃えながら、うめき声を上げたようにも見えた。遠く離れた場所で、何も知らないメレアグロスは、体の内側を見えない炎に焼かれるのを感じた。炎が大きくなると痛みも増し、火が消えるのと同時に、彼の息も絶えた。

我に返ったアルタイアは、自分のしたことを悔いて、剣で自らの腹を刺した。アポロドーロスの伝えでは、息子の妻とともに首を吊ったという。

ところが『イリアス』の語る話には、薪が出てこない。そこでのアルタイアは、兄弟を殺された悲しみから、ひざまずいて胸を涙で濡らし、手で大地を叩いて、冥界の王と女王に息子の死を祈る。その呪いを、闇を歩く復讐の女神が聞いていた。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、バッキュリデス『祝勝歌・ディテュランボス』、オウィディウス『変身物語』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』、パウサニアス『ギリシア案内記』

この物語の人々

こういう風にも語られている

ホメロスの形: 兄弟を殺された悲しみから、アルタイアは神々に祈り、ひざまずいて胸を涙で濡らしながら手で大地を打ち、ハデスとペルセポネに息子の死を願った。闇を歩くエリニュスがそれを聞いた。薪は出てこない。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

薪の形: メレアグロスが生まれたとき(アポロドーロスでは生後7日目)、運命の女神たちが「炉の薪が燃え尽きるとき、この子も死ぬ」と告げた。アルタイアは薪を火から取り出して水をかけ、奥にしまっておいたが、兄弟の死を知ると取り出して火に投じた。バッキュリデス(前476年)では「飾りのある箱から」取り出したとされる。

バッキュリデス『祝勝歌・ディテュランボス』 前5世紀前半(第5歌は前476年)、オウィディウス『変身物語』 8年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

最期: アポロドーロスでは、息子の死の後、アルタイアはメレアグロスの妻クレオパトラと共に首を吊る。オウィディウスでは、自らの行いを悔いて剣で腹を刺す。

オウィディウス『変身物語』 8年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

アルタイアの兄弟たち(テスティオスの息子たち)は、猪狩りの参加者としてどの名簿にも入っている。名前は出典で違い、バッキュリデスではイピクロスとアパレス、オウィディウスではプレクシッポスとトクセウス、テゲアの破風(パウサニアス)ではプロトオスとコメテス。

バッキュリデス『祝勝歌・ディテュランボス』 前5世紀前半(第5歌は前476年)、オウィディウス『変身物語』 8年頃、パウサニアス『ギリシア案内記』 2世紀

ローマ以後の語り

オウィディウスは、薪を火に投じるまでのアルタイアの迷いを長い独白で描く。姉としての思いと母としての思いのあいだで何度も手を止め、ついに顔を背けて震える手で薪を投げ入れる。薪は燃えながら呻いたとも、そう見えただけともいう。

オウィディウス『変身物語』 8年頃

薪の話を初めて劇にしたのは、前5世紀初めの悲劇詩人プリュニコスの『プレウロンの女たち』だとパウサニアスは伝え、「恐ろしい母が薪を焼き尽くした」という趣旨の詩句を引いている。ただし彼の書き方から、話はすでにギリシャ中で知られていたと見ている。

パウサニアス『ギリシア案内記』 2世紀

オウィディウスでは、兄弟の亡骸を見たアルタイアが金の衣を黒に替え、殺したのが息子だと知ると悲しみが復讐心に変わる。薪を4度火に投じかけては4度手を止め、「母と姉が争う」。最後は顔を背けて投げ入れ、メレアグロスは遠くで見えない炎に焼かれ、火が消えると同時に死ぬ。アルタイアはのちに剣で自害する。

オウィディウス『変身物語』 8年頃

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このページの出典(6件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前5世紀前半(第5歌は前476年)バッキュリデス『祝勝歌・ディテュランボス』
  3. 8年頃オウィディウス『変身物語』
  4. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  5. 1〜2世紀頃ヒュギヌス『神話集(ファブラエ)』
  6. 2世紀パウサニアス『ギリシア案内記』