エロスとキューピッド、同じ神?
弓矢を持った、翼のある男の子。キューピッドの姿でおなじみの恋の神は、ギリシャではエロスと呼ばれていた。
キューピッドはラテン語の「欲望」
キューピッドは、ローマの恋の神クピド(Cupido)の英語名です。クピドは、ラテン語でもともと「欲望」「恋心」を意味する普通の言葉。その言葉が、そのまま神の姿になった。ローマではこの神が、ギリシャのエロスと同じ神と見なされています。
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エロスも「恋い焦がれる」
エロスのほうも、ギリシャ語では神の名であると同時に、普通の言葉として「恋」「欲望」を指した。もとは「欲しがる」という動詞です。ギリシャ語とラテン語、それぞれの言葉で同じものを呼んだ結果、呼び名が二つになった。
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子どもになった恋の神
ただ、初めのエロスは、弓矢を持った男の子ではなかった。ヘシオドスの『神統記』では、世界の始まりにカオス(混沌)に続いて、大地とともに生まれた神々のひとり。不死の神々の中で最も美しい神、と歌われる。
古拙期神統記近現代改訂新版 世界大百科事典近現代ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
絵の中のエロスも、はじめは翼のない、あるいは翼のある青年として描かれていた。前5世紀ごろからは、翼のある少年の姿が普通になっていく。キューピッドの姿は、この変化の先にあります。
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キューピッドの弓
英語のCupid's bow(キューピッドの弓)は、形を言い表す言葉にもなった。とくに唇の形を言うのに、1858年から使われている。
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この話の項目
ほかの呼び名の話
- トロイ と トロイア同じ街を、トロイとも、トロイアとも呼ぶ。二つの呼び名は、どこで分かれたのか。
- ヴィーナス と アフロディテヴィーナスは、アフロディテの英語名。そう言い切ると、少し足りない。ヴィーナスには、ローマで別の女神として祀られていた時代がある。
- ゼウス と ジュピターギリシャのゼウスと、ローマのジュピター。まるで違う名前に見えるが、さかのぼると同じ言葉に行き着く。
- ヘラクレス と ハーキュリーズハーキュリーズは、ヘラクレスの英語名。ギリシャ語から英語へ渡るあいだに、名前はローマで一度、形を変えている。
- オデュッセウス と ユリシーズトロイとトロイアなら、まだ似ている。オデュッセウスとユリシーズは、同じ英雄の名とは思えないほど違う。
- メデューサ と メドゥサ見た者を石にする蛇の髪の怪物を、メデューサとも、メドゥサとも、メドゥーサとも書く。違いは、どの言葉の読み方を写したか。
- パンドラの箱 と パンドラの壺開けてはいけない「パンドラの箱」。ところが、いちばん古い話を開くと、箱はどこにも出てこない。
- アテナ と ミネルヴァ知恵の女神アテナは、ローマではミネルヴァと呼ばれる。ヴィーナスと同じく、こちらももとは別の女神だった。
- ポセイドン と ネプチューンギリシャのポセイドンは、ローマではネプチューンと呼ばれる。ところがローマの神は、もとは海の神ではなかった。
- アポロン と アポロヴィーナスやジュピターと違って、アポロンはローマに渡っても同じ神のままだった。変わったのは、名前の終わりの一音だけ。
- ヘラ と ジュノーゼウスの妻ヘラは、ローマではユノ、英語ではジュノー。6月のジューンにも、お金のマネーにも、この女神の名が隠れている。
- アルテミス と ダイアナ狩りの女神アルテミスは、ローマではディアナ、英語ではダイアナ。こちらも、もとはイタリアの森にいた別の女神だった。
- ヘルメス と マーキュリー伝令の神ヘルメスは、ローマではメルクリウス、英語ではマーキュリー。この名前は、ローマの商いの言葉から生まれた。
- アレス と マーズ戦の神アレスは、ローマではマルス、英語ではマーズ。ギリシャでは嫌われ者だった軍神が、ローマでは国を守る大神になった。
- クロノス と サターンわが子を呑み込んだ神クロノスは、ローマではサトゥルヌス、英語ではサターン。ローマでのこの神は、畑を耕すことを人間に教えた、黄金時代の王だった。
- ディオニュソス と バッカス酒の神バッカスを「ローマ神話の酒神」と書く辞典もある。けれども、もとはギリシャでのディオニュソスの別の呼び名だった。
- アキレウス と アキレス神話の英雄はアキレウス。けれど、かかとの腱も、亀と競走する話も「アキレス」だ。この一音の違いは、ラテン語から来ている。
- ハデス と プルート冥界の王ハデスは、ローマではプルート。この名前は、ローマ生まれではない。ギリシャ人が、恐ろしい本名を口にしないために使った呼び名だった。