出典 · 古拙期(ヘシオドス・叙事詩圏)
帰国物語(ノストイ)
アギアス(伝) · 前7世紀頃 · Nostoi (Returns)
叙事詩環。ギリシャ軍諸将の帰還とアガメムノンの死を扱う。要約と断片のみ現存。
日本語訳: 中務哲郎訳『ホメロス外典/叙事詩逸文集』京都大学学術出版会(西洋古典叢書 G113)、2020。プロクロス梗概と断片の訳を収める
この出典が語っていること
ギリシャ勢の帰国(ノストイ)
- アポロドロスでは、テノス沖の嵐でアテナが小アイアスの船に雷を投げつけ、岩に逃れたアイアスが「アテナの意に反して助かった」と言うと、ポセイドンが岩を割った。遺体は流れ着いてテティスがミュコノスに葬ったという。叙事詩環『ノストイ』の要約は、カペレウスの岩での嵐とアイアスの最期を語ったとだけ伝える。 (アポロドロス『摘要』6.5-6。『ノストイ』プロクロス要約)
- 叙事詩環の『ノストイ(帰国物語)』は5巻の叙事詩で、内容はプロクロスの要約で伝わる。アテナのせいでアガメムノンとメネラオスが争う。ディオメデスとネストルが先に無事帰る。予言者カルカスらは船を捨てて陸路でコロポンへ行き、そこで死んだテイレシアスを葬る。出航するアガメムノンの前にアキレウスの亡霊が現れて災いを予言する。ネオプトレモスはテティスの警告で陸路を取り、トラキアのマロネイアでオデュッセウスに会う。最後にアガメムノンが殺され、オレステスが仇を討ち、メネラオスが帰り着く。 (プロクロス『文学便覧』要約(エヴリン=ホワイト英訳))
- 関係: participant → agamemnon (『オデュッセイア』3.141-156(出航を遅らせる)、4.512-537(帰国の日に殺される)、11.405-411。『ノストイ』プロクロス要約)
- 関係: participant → menelaus (『オデュッセイア』3.276-312、4.81-85、4.351-570 8年さまよってエジプトから帰る)
- 関係: participant → nestor (『オデュッセイア』3.165-184 語り手。4日目にピュロスへ無事に着く)
- 関係: participant → diomedes (『オデュッセイア』3.167、3.180-182 無事にアルゴスへ。『アエネイス』11.243-270 ではイタリアのアルギュリパに住む)
- 関係: participant → ajax-the-lesser (『オデュッセイア』4.499-511 ギュライの岩で死ぬ。『ノストイ』プロクロス要約(カペレウスの岩での嵐)。アポロドロス『摘要』6.6)
- 関係: participant → neoptolemus (『ノストイ』プロクロス要約 陸路でトラキアを通る。『オデュッセイア』3.188-189 ミュルミドン勢は無事に帰った。アポロドロス『摘要』6.12-13)
- 関係: participant → calchas (『ノストイ』プロクロス要約 陸路でコロポンへ。アポロドロス『摘要』6.2-4 予言者モプソスとの予言比べに負けて死ぬ)
- 関係: participant → tiresias (プロクロス要約 陸路の一行がコロポンで、そこで死んだテイレシアスを葬る)
- 関係: participant → odysseus (『オデュッセイア』3.162-164 いったんテネドスまで出てからアガメムノンのもとへ引き返す。4.555-560 プロテウスがカリュプソの島に囚われていると告げる。『ノストイ』プロクロス要約 マロネイアでネオプトレモスと会う)
- 関係: participant → achilles (プロクロス要約 出航するアガメムノンたちの前にアキレウスの亡霊が現れ、この先の災いを予言して止めようとする)
- 関係: participant → thetis (『ノストイ』プロクロス要約 ネオプトレモスに警告し、陸路を取らせる。アポロドロス『摘要』6.5、6.12)
- 関係: participant → athena (『オデュッセイア』3.135-136 アテナの怒りがアトレウスの二人の子を争わせる。『ノストイ』プロクロス要約。アポロドロス『摘要』6.5-6)
- 関係: participant → clytemnestra (『オデュッセイア』11.409-411。『ノストイ』プロクロス要約。アポロドロス『摘要』6.23)
- 関係: participant → orestes (『オデュッセイア』3.303-310 8年目にアテナイから戻りアイギストスを討つ。『ノストイ』プロクロス要約)
トロイア落城
- 落城は勝者にとっても破滅の始まりになる。小アイアスがアテナの神像にすがるカッサンドラを引き剥がしたことで女神が怒り、ギリシャ勢の帰路(ノストイ)は難破と殺害の連続になる。 (『イリオスの陥落』要約、アポロドーロス摘要 5.22-6.6、『ノストイ』要約)
トロイア戦争
- 発端から帰還までは「叙事詩環(エピック・キュクロス)」と呼ばれる一群の詩が埋めていた。『キュプリア』(発端〜開戦)、『アイティオピス』(アキレウスの死)、『小イリアス』(武具争い〜木馬)、『イリオスの陥落』(落城)、『帰還』(諸将の帰路)、『テレゴネイア』(オデュッセウスの後日談)。いずれも散逸し、プロクロスの要約と断片からしか内容が分からない。「よく知られた話」の多くが、実はこの失われた詩の要約に由来する。 (プロクロス『文学便覧』の要約)