ギリシャ神話の地図
ムーサ姉妹ゼウス父ムネモシュネ母エウテルペ姉妹タレイア姉妹カリオペ姉妹
三人のムーサ、メルポメネ、エラト、ポリュムニア。ウスタシュ・ル・シュウールの作。

ポリュムニア

Πολύμνια神

三人のムーサ、メルポメネ、エラト、ポリュムニア。ウスタシュ・ル・シュウールの作。 『メルポメネ、エラト、ポリュムニア』 ウスタシュ・ル・シュウール 1652〜1655年 ルーヴル美術館Public domain

芸術の女神ムーサは九人いる。けれど、どの女神が何をつかさどるのかは、最初から決まっていたわけではなかった。その移り変わりがよく見える一人が、ポリュムニアである。名前は「たくさんの賛歌」という意味だと説明されてきた。

では、この女神がどのように語られてきたのか、古い順に見ていこう。

『神統記』によれば、ムーサたちはゼウスと記憶の女神の九人の娘だった。ポリュムニアの名は、その七番目に挙がる。けれど『神統記』は、九人の名前を並べるだけで、それぞれが何を受け持つのかは語らない。

『イリアス』にも『オデュッセイア』にも、ポリュムニアの名は出てこない。

前1世紀の歴史家ディオドロスは、名前の意味を説明している。詩に歌われて不滅の名声を得た人々を、たくさんの賛歌で輝かせる。そこからポリュムニアという名が来たのだという。

姉妹の並び順も、書き手によって違う。後の時代の神話集は、九人を『神統記』とは別の順に並べた。『神統記』で七番目だったポリュムニアが、そこでは最後に来ている。

ローマの詩人ホラティウスは、自分の詩集の最初の詩で、この女神の名を呼んでいる。笛の女神エウテルペが笛を吹きやめず、ポリュムニアが竪琴を張ることを拒まないでくれるなら、自分も竪琴に合わせて歌う詩人たちの列に加わることができる、と。ここでのポリュムニアは、竪琴の女神として呼ばれていた。

後の時代には、ポリュムニアは、言葉を使わずに身振りで語る技の女神とされることもあった。「たくさんの賛歌」という名前とは、ずいぶん離れた役目である。

この物語の出典: ヘシオドス『神統記』、ディオドロス(シケリアの)『歴史叢書』、ホラティウス『歌集(カルミナ)』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

こういう風にも語られている

ホラティウスは『歌章』の最初の詩で、「エウテルペが笛を止めず、ポリュヒュムニアがレスボスの竪琴を張るのを拒まなければ」自分は抒情詩人の列に入れる、と書く。ここでのポリュヒュムニアは、抒情詩を支える竪琴のムーサとして呼ばれている。

ホラティウス『歌集(カルミナ)』 前23年・前13年

古代末期のラテン語の詩「ムーサたちの名」では、ポリュヒュムニアはすべてを手で示し、身振りで語る者とされる。のちの「パントマイムのムーサ」という割り振りはここにつながる。

作者不詳(アウソニウス作と伝わる)『ムーサたちの名(ラテン詞華集664)』 古代末期(成立年未確定)

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『神統記』では九柱の七番目に「ポリュムニア」の綴りで名が挙がる。ヘシオドスは担当分野を語らない。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

ホメロスの二つの叙事詩にポリュムニアの名は出てこない。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

ディオドロスは、ポリュムニアの名を、詩によって不滅の名声を得た人たちを「多くの賛歌(ポリュス・ヒュムネーシス)」で輝かせることから来ると説明する。

ディオドロス(シケリアの)『歴史叢書』 前1世紀後半

アポロドロスは九柱を「まずカリオペ、次にクレイオ、メルポメネ、エウテルペ、エラト、テルプシコレ、ウラニア、タレイア、ポリュムニア」の順に並べる。ヘシオドスでは七番目だったポリュムニアが最後に来るなど、順番は出典によって違う。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

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このページの出典(7件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  3. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  4. 前1世紀後半ディオドロス(シケリアの)『歴史叢書』
  5. 前23年・前13年ホラティウス『歌集(カルミナ)』
  6. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  7. 古代末期(成立年未確定)作者不詳(アウソニウス作と伝わる)『ムーサたちの名(ラテン詞華集664)』