ギリシャ神話の地図
ムーサ姉妹たちゼウス父ムネモシュネ母カリオペ姉妹ディオメデス息子の仇
笛を吹くエウテルペ(教訓用の版画札の一枚)。「Eシリーズのタロッキの画家」と呼ばれる版画家の作。

エウテルペ

Εὐτέρπη神

笛を吹くエウテルペ(教訓用の版画札の一枚)。「Eシリーズのタロッキの画家」と呼ばれる版画家の作。 『エウテルペ(エウテルペ 18)』 「Eシリーズのタロッキの画家」と呼ばれる版画家 1465〜1467年ごろ メトロポリタン美術館Public Domain (The Met Open Access, CC0)

芸術の女神ムーサは9人いる。そのうちの一人、エウテルペの名は、「よく喜ばせる者」と説明されてきた。学びのもたらす良いもので、聞く者の心を喜ばせるからだ、と歴史家ディオドロスは書いている。

では、喜びの名を持つムーサ、エウテルペが、どう語られてきたのか、見ていこう。

ヘシオドスの『神統記』によれば、ムーサたちは神々の王ゼウスと、記憶の女神の娘たちである。エウテルペは、9人の名の2番目に挙げられている。ただし『神統記』は、ムーサたちがそれぞれ何を受け持っているのかを語らない。『イリアス』や『オデュッセイア』には、エウテルペの名前そのものが出てこない。

やがてムーサたちには、一人ひとり受け持ちが割り振られていく。エウテルペが結びつけられたのは笛だった。紀元前1世紀のローマの詩人ホラティウスは、詩集の最初の一編でこう書いている。エウテルペが笛を吹くのをやめず、別のムーサが竪琴を張ることを拒まないなら、私も抒情詩人の列に加われるだろう。

エウテルペには、悲しい息子の話もある。アポロドーロスによれば、エウテルペはある川の神とのあいだに、息子レソスを産んだ。レソスはトラキアの王となり、トロイア戦争のさなか、トロイアの援軍としてやって来た。『イリアス』は、雪より白く風のように速い馬と、神々にこそふさわしい黄金の鎧を持つ王として彼を描く。ところがレソスは、到着したその夜、陣営に忍び込んだギリシャの英雄ディオメデスに、眠っているところを討たれてしまう。

ただし『イリアス』では、レソスの母がムーサだという話は出てこない。アポロドーロス自身も、母は別のムーサだとする説があると書き添えている。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、ヘシオドス『神統記』、ディオドロス(シケリアの)『歴史叢書』、ホラティウス『歌集(カルミナ)』、アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』

この物語の人々

こういう風にも語られている

アポロドロスによれば、エウテルペは河神ストリュモンとのあいだにレソスを産んだ。レソスはトロイアに援軍として来て、ディオメデスに殺される。ただし母をカリオペとする説もあるという。

アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』 1〜2世紀頃

『イリアス』では、トラキア王レソスは「エイオネウスの子」と呼ばれ、母がムーサだという話は出てこない。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

ローマ以後の語り

ホラティウスは『歌章』の最初の詩で、「エウテルペが笛を止めず、ポリュヒュムニアがレスボスの竪琴を張るのを拒まなければ」自分は抒情詩人の列に加われる、と書く。前1世紀のローマで、エウテルペは笛と結びつけられている。

ホラティウス『歌集(カルミナ)』 前23年・前13年

古代末期のラテン語の詩「ムーサたちの名」でも、エウテルペは甘い音の笛を吹く者とされる。

作者不詳(アウソニウス作と伝わる)『ムーサたちの名(ラテン詞華集664)』 古代末期(成立年未確定)

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『神統記』では九柱の二番目に名が挙がる。ヘシオドスは担当分野を語らない。

ヘシオドス『神統記』 前700年頃

ホメロスの二つの叙事詩にエウテルペの名は出てこない。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃、ホメロス『オデュッセイア』 前8世紀頃

ディオドロスは、エウテルペの名を、教養のもたらす良いもので聞き手を「喜ばせる(テルペイン)」ことから来ると説明する。

ディオドロス(シケリアの)『歴史叢書』 前1世紀後半

『イリアス』のレソスは、雪より白く風のように速い馬と黄金の鎧を持つトラキアの王で、トロイアに着いた夜、陣に忍び込んだディオメデスに眠ったまま討たれ、馬はオデュッセウスに連れ去られる。

ホメロス『イリアス』 前8世紀頃

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家族・恋愛

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このページの出典(7件)
  1. 前8世紀頃ホメロス『イリアス』
  2. 前8世紀頃ホメロス『オデュッセイア』
  3. 前700年頃ヘシオドス『神統記』
  4. 前1世紀後半ディオドロス(シケリアの)『歴史叢書』
  5. 前23年・前13年ホラティウス『歌集(カルミナ)』
  6. 1〜2世紀頃アポロドーロス(偽アポロドーロス)『ビブリオテーケー(ギリシア神話)』
  7. 古代末期(成立年未確定)作者不詳(アウソニウス作と伝わる)『ムーサたちの名(ラテン詞華集664)』