オウィディウスでは、双子を抱いて放浪するレトがリュキアの池で水を飲もうとすると、農夫たちが拒んで池を泥でかき回したため、レトの呪いで蛙に変えられた。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
Λυκία場所
戦場で倒れたゼウスの息子の亡骸を、眠りの神と死の神の双子の兄弟が抱えて運んでいく。ホメロスの『イリアス』の中でも、とりわけ静かで美しい場面だ。行き先は、遠い故郷リュキアだった。
リュキアは、小アジアの南西の海沿いにあった国。『イリアス』では、川の流れる、広いリュキアと呼ばれる。
トロイア戦争で、リュキア勢はトロイアの味方として遠くから駆けつけた。率いたのは、ゼウスの子サルペドンと、その親族の将である。サルペドンがギリシャの英雄パトロクロスに討たれると、ゼウスは光の神アポロンに命じた。亡骸を矢の届かないところへ運び、川の水で洗って神々の香油を塗り、不死の衣を着せて、眠りと死の兄弟に渡せ。二人は亡骸を広いリュキアの豊かな地へ運び、身内の者たちが塚と墓標を立てて葬ったという。

サルペドンの祖父にあたるのが、天馬の乗り手ベレロポンである。その親族の将が戦場で語るところでは、ベレロポンは、ある王の妃の偽りの訴えのせいで、命を奪う合図を書いた板を持たされ、妃の父であるリュキアの王のもとへ送られた。王は九日間もてなしたあと板を見て、まず恐ろしい怪物キマイラを倒せと命じる。前は獅子、後ろは蛇、真ん中は山羊で、火を吐く怪物だった。ベレロポンはそれを倒し、さらに勇猛な民とも、男に劣らぬ女戦士の一族とも戦い、待ち伏せた兵たちも皆殺しにした。王はついに、この若者が神の血筋だと悟り、娘を妻に与えて、王の位の半分を分けた。

ローマの詩人オウィディウスは、この国の農夫たちの話も伝えている。生まれたばかりの双子を抱いてさまよう女神レトが、リュキアの池で水を飲もうとすると、農夫たちはそれを許さず、池の底をかき回して泥水にしてしまった。怒った女神の呪いで、農夫たちは池に住む蛙に変えられたという。

この物語の出典: ホメロス『イリアス』、オウィディウス『変身物語』
オウィディウスでは、双子を抱いて放浪するレトがリュキアの池で水を飲もうとすると、農夫たちが拒んで池を泥でかき回したため、レトの呪いで蛙に変えられた。
オウィディウス『変身物語』 8年頃
トロイア方の目録で、サルペドンと並びないグラウコスが、遠いリュキアの渦巻くクサントス川のほとりからリュキア人を率いた。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
ゼウスはアポロンに、サルペドンの亡骸を運び出して川の水で洗い、アンブロシアを塗って不死の衣を着せ、双子の兄弟である眠りと死に渡すよう命じた。二人はそれを広いリュキアの豊かな地に置き、身内の者が塚と墓標で葬った。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃
グラウコスによれば、ベレロポンはプロイトスの妃の偽りの訴えで、殺せという合図を書いた板を持たされてリュキアへ送られた。リュキアの王は九日もてなしたあと板を見て、キマイラ退治、ソリュモイ人との戦い、アマゾンとの戦いを命じ、帰りには待ち伏せさせたが、ベレロポンはすべて退けた。王は彼を神の子と悟って娘を与え、王の位の半分を分け、リュキア人は彼に領地を与えた。孫娘ラオダメイアがゼウスとのあいだに産んだのがサルペドンである。
ホメロス『イリアス』 前8世紀頃