出典 · 古拙期(ヘシオドス・叙事詩圏)
アイティオピス
アルクティノス(伝) · 前7世紀頃 · Aethiopis
叙事詩環。ペンテシレイア、メムノン、アキレウスの死を扱う。要約と断片のみ現存。
日本語訳: 中務哲郎訳『ホメロス外典/叙事詩逸文集』京都大学学術出版会(西洋古典叢書 G113)、2020。プロクロス梗概と断片の訳を収める
この出典が語っていること
アキレウス
- アキレウスの死は『イリアス』の外側にある。『アイティオピス』要約ではトロイア勢を追って市中に攻め入り、パリスとアポロンに討たれる。アポロドーロス摘要 5.3 は「スカイア門でアレクサンドロス(パリス)とアポロンに踝(くるぶし)を射られた」とする。オウィディウス『変身物語』ではアポロンがパリスの矢を導くが、踵とは書かれない。 (『アイティオピス』要約(プロクロス)、アポロドーロス摘要 5.3、『変身物語』12.580-628)
- 関係: killed_by → paris (『アイティオピス』要約(プロクロス)、アポロドーロス摘要 5.3)
- 関係: killed_by → apollo (パリスと共に。摘要 5.3 は「スカイア門でアレクサンドロスとアポロンに射られた」とする)
- 関係: killed → memnon (『アイティオピス』要約。アンティロコスの仇討ち)
- 関係: killed → penthesilea (『アイティオピス』要約)
アマゾン族
- トロイア戦争では、アレスの娘である女王ペンテシレイアがトロイア側に加わり、アキレウスに討たれる。この話は叙事詩圏の『アイティオピス』で語られ、アポロドーロスが要約している。 (アポロドーロス摘要 5.1)
- 関係: ruled_by → penthesilea (トロイア側に来た女王。アポロドーロス摘要 5.1)
アンティロコス
- 死は『イリアス』の外にある。『アイティオピス』の要約ではメムノンに討たれ、アキレウスがその仇としてメムノンを殺す。父ネストルを庇って死んだとする形はピンダロスが詳しく語る。パリスの矢で馬を射られてネストルの車が動かなくなり、メムノンが槍を構えたとき、老父に呼ばれた息子が身代わりに立って死ぬ。 (『アイティオピス』要約(プロクロス)/ ピンダロス『ピュティア祝勝歌』6.28-43)
- 関係: killed_by → memnon (『アイティオピス』要約 / 『オデュッセイア』4.187-188「輝かしい曙の子に殺された」)
アポロン
- アキレウスの死は『イリアス』には描かれない。死に際のヘクトルが「パリスとポイボス・アポロンがお前をスカイア門で殺すだろう」と予言するのみで、実際の場面は失われた叙事詩『アイティオピス』や後代の作品で語られる。 (『イリアス』22.358-360(予言)。『アイティオピス』はプロクロスの梗概でアポロンとパリスによる殺害を伝える。クイントゥス 3.30-185)
エオス
- 叙事詩『アイティオピス』の梗概では、メムノンがアキレウスに討たれたあと、エオスがゼウスに願って息子に不死を与える。 (プロクロス『文学便覧』による梗概)
- 関係: parent → memnon (『神統記』984-985。『アイティオピス』(プロクロスの梗概))
メムノン
- 『アイティオピス』では、アキレウスとの一騎討ちで討たれ、母エオスの願いによってゼウスから不死を与えられる。トロイアで死ぬ英雄の中で例外的な扱い。 (プロクロス要約)
- アキレウスとの対決の前に、ゼウスが二人の魂を秤にかける場面(プシュコスタシア)が語られ、壺絵にも描かれた。『イリアス』にもゼウスが黄金の秤で二人の運命を量る場面があり(アカイア勢とトロイア勢、のちにアキレウスとヘクトル)、その型をメムノンとアキレウスに当てはめたものと考えられる。アイスキュロスには『プシュコスタシア(魂の秤量)』と題する失われた悲劇がある。 (『イリアス』8.69-74、22.209-213(黄金の秤で運命を量る場面)を本文で確認。メムノンとの秤量は『アイティオピス』系の伝承で、壺絵と断片の整理はガンツのメムノンの項による。アイスキュロスの同題悲劇はプルタルコスとポリュデウケス『オノマスティコン』4.130 の言及で知られるが、証言本文は未確認)
- 『アイティオピス』の要約では、メムノンはヘパイストスの作った鎧を着てトロイアの救援に来て、テティスが息子にメムノンのことを告げる。メムノンはアンティロコスを討ち、アキレウスに討たれた。 (プロクロス要約)
- 関係: killed → antilochus (『オデュッセイア』4.187-189、『アイティオピス』要約)
- 関係: killed_by → achilles (『アイティオピス』要約、クイントゥス『ホメロス後日譚』2)
- 関係: participated_in → trojan-war (トロイア側の援軍として)
- 関係: participated_in → troy
パリス
- アキレウスを射殺す。『イリアス』の外の伝承で、多くはアポロンが矢を導いたとされる。踵に当たったという形は後代に定着した。 (『アイティオピス』要約、アポロドーロス摘要 5.3(踝を射る)、『変身物語』12.597-611)
- 関係: killed → achilles (『アイティオピス』要約、アポロドーロス摘要 5.3、『変身物語』12.597-611。いずれもアポロンの助けを伴う)
ペンテシレイア
- 『イリアス』には登場しない。叙事詩環の『アイティオピス』(『イリアス』の続きにあたる)の冒頭で、アマゾンの女王としてトロイアに到着するところから語られる。 (プロクロス要約)
- 戦場で奮戦するがアキレウスに討たれる。トロイア勢は遺体を丁重に葬ったと要約は伝える。 (『アイティオピス』要約、アポロドーロス摘要 5.1)
- アキレウスがその死を悼んだのを見て、テルシテスが嘲ったため、アキレウスは彼を殴り殺す。その血の穢れを清めるためレスボス島へ渡ったとされ、この一件が後の「アキレウスが恋に落ちた」という読みの起点になっている。 (プロクロス要約)
- 関係: killed_by → achilles (『アイティオピス』要約、クイントゥス『ホメロス後日譚』1)
- 関係: participated_in → trojan-war (ヘクトルの死後、トロイア側の援軍として参戦)
- 関係: participated_in → troy
テティス
- 『アイティオピス』の要約では、アキレウスの死後、テティスがムーサたちや姉妹とともに来て息子を嘆き、火葬の薪から亡骸をさらって「白い島」(レウケ)へ運んだ。 (プロクロス要約)
トロイア戦争
- 発端から帰還までは「叙事詩環(エピック・キュクロス)」と呼ばれる一群の詩が埋めていた。『キュプリア』(発端〜開戦)、『アイティオピス』(アキレウスの死)、『小イリアス』(武具争い〜木馬)、『イリオスの陥落』(落城)、『帰還』(諸将の帰路)、『テレゴネイア』(オデュッセウスの後日談)。いずれも散逸し、プロクロスの要約と断片からしか内容が分からない。「よく知られた話」の多くが、実はこの失われた詩の要約に由来する。 (プロクロス『文学便覧』の要約)