出典 · 古典期(悲劇・歴史)
ヘラクレス(狂えるヘラクレス)
エウリピデス · 前420〜前414年頃 · Heracles
功業を終えて冥界から戻ったヘラクレスが、ヘラの差し向けた狂気で妻子を殺す。狂気を功業の「後」に置く点でアポロドーロス(功業の原因とする)と順序が逆。上演年は確定していない。
日本語訳: 松平千秋・久保正彰・岡道男編『ギリシア悲劇全集』岩波書店、1990-93 / 丹下和彦訳『エウリピデス 悲劇全集』京都大学学術出版会(西洋古典叢書)、2012-16 · 原文・参考リンク ↗
この出典が語っていること
ケルベロス
- 悲劇やアポロドーロス以降は3つの頭が普通になる。アポロドーロスは「犬の頭が3つ、竜の尾、背中には様々な蛇の頭」と描く。オウィディウスも「三つの吠え声」と書く。 (エウリピデス『ヘラクレス』24(三つの体)、611(三つの頭)、アポロドーロス 2.5.12、オウィディウス『変身物語』7.414)
ギガース
- 関係: enemy → herakles (アポロドロス 1.6.1-2、ピンダロス『ネメア祝勝歌』1.67-69、エウリピデス『ヘラクレス』1190-1194)
ギガントマキア
- 関係: participant → herakles (アポロドロス 1.6.1-2、『ネメア祝勝歌』1.67-69、エウリピデス『ヘラクレス』1190-1194)
ヘラクレス
- エウリピデスの悲劇では、最後の難業を終えて冥界から帰ったヘラクレスが狂気に襲われ、妻と子らを殺す。狂気が難業の「後」に来る逆の順序で、功業の頂点から転落する劇として組まれている。 (22-25(最後の難業として冥界へ)、610-613(三つ首の獣を地上に連れ帰る)、1000-1001(妻子を殺す))
- 関係: visited → hesperides (アポロドーロス 2.5.11 黄金の林檎を取りに行く、エウリピデス『ヘラクレス』394-399)
ヘスペリデス
- 関係: visited_by → herakles (アポロドーロス 2.5.11、エウリピデス『ヘラクレス』394-399「歌う乙女たちの夕べの庭」)
ヒッポリュテ
- エウリピデスの『ヘラクレス』の合唱は、ヘラクレスがマイオティス湖のほとりのアマゾンの騎馬の軍へ出かけ、金で飾った帯を持ち帰ってミュケナイに納めたと語るが、女王の名は出さない。 (408-418)
ヒュドラ
- エウリピデスの合唱歌は「無数の頭をもつ」ヒュドラと歌う。首の数は資料で揺れ、決まった数は無い。 (419-421(μυριόκρανον))
メガラ
- エウリピデス『ヘラクレス』では、狂気は難業を終えて冥界から帰った後に来る。ヘラクレスは子どもたちをエウリュステウスの子と思いこみ、一人を射殺し、一人を棍棒で打ち殺し、三人目を抱いて部屋に逃げこんだメガラを、扉を破って一本の矢で子とともに射倒した。 (922-1000)
- エウリピデスでは、ヘラクレスの留守中、エウボイア出身のリュコスがクレオンを殺してテバイを奪い、ヘラクレスの子らと妻、父アンピトリュオンを殺そうとする。一家はゼウス救い主の祭壇に食も衣もなくすがる。 (26-59)
- 逃げ道を失ったメガラは子らに死出の装いをさせ、父が約束した国々(アルゴス、テバイ、オイカリア)と、自分がアテナイ・テバイ・スパルタから選ぼうとしていた花嫁の代わりに、死が花嫁になったと嘆き、冥界の夫に、幻でも夢でもいいから来てほしいと呼びかける。直後にヘラクレスが帰還する。 (451-496、514-531)
- イリスは、難業を終えるまではゼウスが守っていたが、いまヘラはヘラクレスに子殺しの穢れを負わせたいと告げ、夜の娘「狂気(リュッサ)」をけしかける。狂気は乗り気でなく、ヘラクレスは神々の栄誉を回復した者だと諫め、太陽神にかけて自分の意に反して行うのだと言う。 (822-873)
- エウリピデスでは、父アンピトリュオンにまで向かったヘラクレスに、兜をかぶったアテナの幻が石を投げつけて眠らせ、人々が柱に縛りつけた。パウサニアスは、テバイの人々がこの石を「ソプロニステル(正気に戻す石)」と呼び、ヘラクレスとメガラの子らの墓も見せていたと記す。子らの死の話は、パニュアッシスやステシコロスの詩と変わらないという。 (『ヘラクレス』1001-1015、パウサニアス9.11.2)
- 関係: spouse → herakles (『オデュッセイア』11.269-270、アポロドーロス2.4.11、『ヘラクレス』9-14)
- 関係: child → creon (『オデュッセイア』11.269、アポロドーロス2.4.11、『ヘラクレス』8-10(メノイケウスの子クレオン))
- 関係: killed_by → herakles (『ヘラクレス』999-1000 一本の矢で妻と子を射倒す。ヒュギヌス32。アポロドーロス2.4.12・2.6.1 では殺されず、のちにイオラオスに嫁ぐ)
ネメアの獅子
- ヘラクレスが頭からかぶる獅子の皮はネメアの獅子のもの、とするのがエウリピデスの合唱歌。ケルベロスを捕らえる場面でも獅子の皮を身にまとっている。 (エウリピデス『ヘラクレス』359-363(ゼウスの森=ネメアの獅子の皮をかぶる)、アポロドーロス 2.5.12)
ヘラクレスの十二の功業
- エウリピデス『ヘラクレス』の合唱歌もヘラクレスの偉業を12並べるが、中身が違う。ケンタウロス退治、キュクノス退治、海の平定、天空を支えたことが入り、猪・家畜小屋・鳥・牡牛は入っていない。アポロドーロスの一覧とは選び方が別物である。 (359-429(獅子 359-363、ケンタウロス 364-374、鹿 375-379、馬 380-386、キュクノス 389-393、ヘスペリデス 394-399、海 400-402、天空 403-407、アマゾン 408-418、ヒュドラ 419-422、ゲリュオン 423-424、冥界 425-429))
- 関係: participant → cerberus (アポロドーロス 2.5.12 第十二の功業。エウリピデス『ヘラクレス』22-25 でも「最後の難業」)